2-6



*****



 馬車は順調に皇都へと向かっていた……と言いたいところだが、ダリアはイライラしていた。


(一日の大半を馬車で過ごすのってすっげえストレスだな!?)


 狭い車内でじっとしているのはしょうわず、かといってトレーニングしようにも、れがあって思うようにできない。何かストレス発散できることはないかと立ち上がった時、突然馬車が止まった。そのしょうげきで、ダリアの体は座面に打ち付けられる。


「ってえな! なんだよこの荒い運転は……」

「ひいっ! ぞ、ぞくが……」

(族!? この世界にも暴走族的な奴がいんのか?)


 ダリアがこうしんいっぱいに外に出ると、いかにもな男集団にナイフを突き付けられ、腰を抜かしているぎょしゃの姿があった。


「おっ、銀髪に赤い瞳のガキ……こいつで間違いねえ。見目がいいのにもったいねえな。高く売れそうなのに」

「おかしら、今回は殺しですよ。高いほうしゅうが待っているので絶対に成功させないと」

「当然だ。運が悪かったな、ガキ。お前には今から死んでもらう」


 男たちはダリアを見るなり、すぐさまナイフを向けた。どうせ継母が仕組んだことだろうと思いながらも、ダリアはこのじょうきょうに少しだけ感謝していた。


「ちょうど体がなまってたんだ。お前ら、いいタイミングで現れてくれて最高だな!」


 ダリアは馬車移動の苦痛を発散できる相手を見つけ、嬉しそうに笑った。剣を抜き、男たちに果敢に切りかかる。


せいがいいじゃねぇか。だがそのほそうででこの人数を相手にできるのかぁ?」


 男たちのた笑いに、ダリアの中の元不良の血が騒いだ。


「上等だ。お前ら全員覚悟しろよ」


 ようやく訓練の成果を見せる時が訪れ、ダリアは身軽な動きで相手をほんろうする。力だけがの男たちとの実力差は歴然で、あっという間に勝負がついた。


「はあ〜、やっぱ体を動かすって楽しいな。それで、誰の差し金だ?」

「す、すみません! あんたを殺せというらいだけがあって……」


 男たちは依頼主についてよくわかっておらず、誰の仕業なのかは結局わからずじまいだったが、ダリアはそんな彼らにダメ出しをする。


「お前らよく聞け。いいか? 族っていうのは、部外者の指示で動くもんじゃねえんだよ。いっぱんじんを巻き込むのも論外だ。族は族同士でやりあわねえと筋が通らねえだろ? ましてや人の命を奪おうとするなんて……かいぞくとかの賊じゃあるまいし」

「はい……もうしません」


 男たちは正直なところダリアの話を理解しているわけではなかったが、逆らわない方がいいと本能的に感じ取ったのかわかったフリをしていた。


「普通は負けたやつをさんに入れるけど、ウチはまだチームを作ってねぇからな……」


 ダリアはしんけんに男たちをどうするか悩んでハッとした。


(いや、何この世界でもチームを作ろうとしてんだよ!)


 騎士になるという本来の目的を忘れていたダリアはぶんぶんと首を振る。これ以上

男たちが悪さをしないようにと馬車に積まれていたきんきゅう用の縄で体を木に巻き付けた。


「これでよしっ、じゃあ……」

ずいぶんと派手にやったみたいだね」

「えっ……」


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