最弱スキルと言われた最強スキル

ニガムシ

僕の最弱スキル

これは俺が勇者パーティーに入れてもらった時の話

勇者のパーティーの試験に合格した俺は宿に呼び出された。

「みんな、新しい仲間を紹介する」

と喋りだしたのはリーダーであり勇者であるレインさんだ。おっと、俺の自己紹介の番だ。

「ヒライです。スキルは『守護者』ガーディアンです。スキル名の通りタンク職です。レインさんと一緒に前衛で頑張りたいと思います」

とこんな感じでいいだろう。さて、次は。

「よろしくね。私はモネ、スキルは『強化』プラスアップ魔法使いよ」

少し色気が出てる女性、スキル名的に…威力が上がるのかな。次は

「わ、私はケテルです。…スキルは『範囲増加』エリアプラスです。職業は…そう、僧侶です。よ、よろしくお願いします」

と自己紹介し、すぐに帽子で顔を隠してしまった。恐らく恥ずかしがりやなのだろう。次は、

「僕はテラ。スキルは『唐揚げ』からあげです。よろしくね」

元気いっぱいに返事をする少年。彼のスキルは『唐揚げ』か…ん?

「じゃあ。今日の作戦を…」

「ちょっと待ってください」

作戦を説明しようとするレインさんを止めた。

「どうしたんだい?」

「からあげって何ですか?何か特殊な…」

「いや、普通に揚げ物の『唐揚げ』ですよ。ほら」

とテラさ…いやテラくんは手を皿の前にだす、すると手から唐揚げがポロポロと出てきた。あぁ、本当に唐揚げなんだ。

「どうぞ」

唐揚げが入った皿を俺の前に置いた。…食べろって事だよな。恐る恐る口に運ぶ。…うまい。サクサクの衣、嚙んだら溢れる肉汁。今まで食べた中で一番うまいぞこれ。

「気に入ったみたいですね。では、作戦を発表します」

いや、まだなんで『唐揚げ』がパーティーに入っているかを…駄目だ食べる手が止まらん。

そして、作戦を聞き終わった後、俺が『唐揚げ』について聞く暇もなくパーティーは魔物討伐に出発した。

目的地道中での戦闘は盾職の俺が一番前で魔物を止め、魔法使いのモネさんが勇者のレインさんにバフをかけ、レインさんが魔物を切り裂く。戦闘終了後、僧侶のケテルさんが俺を回復してくれた。テラくんは…後ろで応援してた。…きっとあれだ。野営する時のコックか何かだろう。でも、唐揚げしか作れないらしいんだよな。

途中、テラさんの得意技スライムぐらいの大きさの唐揚げを見せて貰いつつ俺たちは順調に進んで行った。

しかし、その時はいきなり訪れた。

「よお、勇者。こんな所に何のようだ」

と急に後ろから声がする。すぐに振り返り戦闘態勢に入る。相手は人に見えるが雰囲気が違う。

「魔族…‼︎」

とレインさんが睨む。魔物より上位の存在である魔族。そして、レインさんが倒さなければならない敵。

「さぁ、こいよ」

と魔族は煽るが、あまり軽率な動きは出来ない。ここは慎重に…。

「来ないなら、こっちから。行ってやるぜ‼︎」

と魔族の姿が消えた。そこからは一瞬だった。俺の全力で構えた盾を俺ごと一気に吹き飛ばし、バフをかけようとしたモネさんと俺を回復しようと動いていたケテルさんを木に叩きつけた。

そして、レインさんを蹴り飛ばした。

手も足も出ないとはこのことだった。ここで、俺の意識が飛んだ。


「ふははは、勇者とはこの程度のものなのか」

「あのう、まだ僕残ってますけど?」

「なんだ、お前も死にたいのか?」

「いや、死ぬつもりはないんですけど。でもね、僕の大切な勇者をボコボコにしたから。ちょっとこらしめようと思ってね」

「ふははは、お前程度俺の」

「僕、高笑い嫌いなんですよね」

空気が変わり魔族は異変に気がつく

「おいお前、俺の体に何をした?」

体が動かしづらくなっていると魔族は感じていた。それに少年は答える。

「まぁ、死ぬ前に教えときますね。あなたはね、今から唐揚げになるんですよ」

「はぁ?意味が」

少年の言葉を魔族は理解できなかった。しかし、魔族の言葉を遮り少年は喋り続ける。

「僕のスキル『唐揚げ』は唐揚げを手から出すほかに、もう一つ能力があります。それはですね、見たものを唐揚げに出来るんですよね」

見たものを唐揚げにする力。物だろうと者だろうと変わらない全て鶏肉の唐揚げになる。それが少年の力だった。

「お、い。おま、え」

喋れなくなっていく魔族。衣がついていき狐色になっていく。

「では、さようなら」

やがて、魔族は等身大の唐揚げになった。少年は唐揚げを一口サイズにし二度揚げをし衣を整えた。そして、倒れている勇者に近づいた。軽く頰に触れ少年は言う。

「あぁ。早く僕好みの…唐揚げにならないかな」

少年は知っている。強く成長するほど唐揚げが美味しくなることを、だから少年は考えた。最強の勇者を作り唐揚げにすればどれほど絶品なものになるのかと。

少年は勇者から手を離し立ち上がる。

「服を自然な感じで汚してっと。さぁ、早くこの唐揚げ食べてもらわないと」

少年は知っている。少年のスキルで唐揚げになった魔物を食べるとその人の力になると。つまり経験値になる事を。

「さて、勇者を起こすか」


「ヒライさん、ヒライさん起きてください」

テラくんの声が聞こえる。俺はゆっくりと目を開けた。周りを見ると全員もう目を覚ましている感じだった。

「聞いてください、ヒライさん。勇者さんが1人で魔族を倒したんですよ」

と笑顔で言う。…?いきなりの事に状況が飲み込めない。とここでレインさんが声をかけてくれる。

「まぁ、俺の意識はなかったんだけどね」

と苦笑しながら言うレインさん。

テラくんが説明する限りではレインさんのスキルが覚醒して魔族を真っ二つにしたらしい。でも、肝心のレインさんは全く覚えてないとのことだ。まぁ、倒したのなら結果的に良しというやつだ。

テラくんが魔族を倒した祝いに特別おいしい唐揚げを振舞ってくれた。その唐揚げを食べると何処からか力の湧いてくる不思議な味だった。

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