大切にしたくて
鈴乱
第1話
大切にしたくて、間違えた。
とっても、とっても大切だった。
とっても、とっても大事な宝物だった。
だから、僕は誰にも見せたくなくて、誰にも渡したくなくて。
僕にはその宝物だけがすべてだった。
その宝物が微笑んでくれるなら、僕は幸せだった。
その宝物が微笑んでくれるなら、僕は、僕を裏切ったって、構わない。
僕には、あなたの笑顔が、すべてだった。
僕よりも、あなたが、好きだった。
あなたの幸せを、願った。
僕は、僕の中に何もないような気がして。
僕の中は、いつまでたっても、空っぽで。
だから、あなたの中に宝を見つけた。
あなたの目に、心に、宝を見つけた。
それを、どうにかして、守りたかった。
しょうがないよ。どうしようもなく、あなたを好いた。
あなたに、恋をした。
誰が間違いだと言っても、僕の心は無意識にあなたを求める。
馬鹿だって分かってるよ。
アホだって、自分でも分かってる。
でも……、僕が見つけた宝。
僕が僕の足で歩き始めた先で、出会った素敵な人。
僕は、君が、死ぬほど好きだ。
僕は、君が、とってもとっても、好きだ。
僕はいつだって、そうだった。
僕は、好きなもののためになら、力が出せるんだ。
でも、この世界には……好きなものがありすぎる。
好きな人がたくさんいる。
素敵なものがたくさんある。
愛してる。
愛してるんだ。
だから……、
だから、辛いんだ。
誰が一番、とかないよ。
みんな、みんな僕は大好きだ。
誰か一人なんて選べない。
みんな、みんな大好きなんだよ。
どうしたらいい。
この気持ち、どうしたらいいんだ。
大好きすぎて、僕は僕を忘れちゃったんだ。
だって、みんな、素敵なんだもん。
僕のことを忘れてしまうくらい、とっても輝いてる。
ねぇ、君たち。
そんなに大きな宝物を持って、泣かないで。
君が抱えてる、素敵な宝物を僕に見せて。
君が君をどう評価しても、どれだけ卑下したって、
僕は。
僕だけは君の光を信じてる。
僕は、君の素敵なところを見つけ出す。
だから、だから。
どうか、独りで泣かないで。
独りで、いなくならないで。
僕は、欲張りだから。
宝物をたくさん見つけたいんだ。
宝物をたくさんたくさん見つけて、それを抱えて、僕は笑うんだ。
「どう? 僕の見つけたお宝は?」
って、自慢したい。
ねぇ、自慢させてよ。
僕は、まだ、君という宝に出会ってない。
僕は、まだ、君という宝と話してない。
僕は、君と話がしたい。
僕は、君の話が聞きたい。
どんな話でもいい。
どんな言葉でもいい。
君を教えてよ。
君の心を、君の感情を教えて。
それが、僕の力になるんだ。
大切にしたくて 鈴乱 @sorazome
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