第4話 野球ロボ

 野球部の始動にあたり、龍之介はグラウンドの状態や自分の力を確認した。

 そこで彼は、自分でも把握していなかった力の源を女理事長に指摘された。


「チームメイトを君好みの美少女で揃えてみろ。そうすれば、練習中も試合中も、煩悩パワーでどんどん成長できるはずだ」


「学内の美少女を野球部にスカウトしろということですか?」


「ああ、そうだとも。君の好きなように女の子達をスカウトしてくれたまえ。この学園は、各部活動に優秀な生徒が在籍している。それぞれの分野で全国区を目指せる逸材もいるが……。欲求不満からか、伸び悩んでいる者も多い」


「へぇ……」


「理事長として、今の目標は甲子園優勝を掲げている! それが学園の知名度アップに繋がるだろう!!」


「分かりました! 俺、頑張ります!!」


 龍之介が意気込む。

 野球は好きだが、それ以上に美少女も好きだ。

 甲子園で優勝するためという大義名分を得た彼は、美少女たちをスカウトしていくことに躊躇いがなくなった。


「えっと……。ところで、後ろのロボたちはなんですか?」


「知らんのか? これは【野球ロボ】だよ」


「野球ロボ?」


 聞き慣れない単語だったのだろう。

 龍之介が首を傾げる。


「今は2099年だが……30年程前から、急速にロボットやアンドロイドの類が普及していったのは知っているな?」


「それはもちろん。家事ロボットとか介護ロボットが普及したおかげで、いろんな問題が解決したと聞いていますよ」


「その通り。今では、ほとんど全ての家庭や企業がロボットを使用している。もちろん、うちの学園にも導入していたのだよ」


「へぇ……。それで、あのロボたちが野球を?」


「その通りだ。昨年度から認可されてね。人数不足によって野球ができない者達のために開発されたロボットさ。これがあれば、人数が足りなくても大会に出場できる」


 理事長が説明する。

 2099年になった今、いろいろと便利なロボットが開発されているのだ、


「なるほど……。なら、部員不足のままでも出場できちゃうんですね。ワンチャン、そのまま甲子園優勝も出来たりして……」


「いや、そうでもない。試合には出られるが、戦力にはならないだろう。『人間を出すよりロボットを出した方が勝てるじゃん』となれば、部活動の意義が失われるからね」


「あ、そうか」


「だから、野球ロボの性能はかなり抑えられている。ルールを間違えることはないが……。ミートバッティング、打撃パワー、走塁力、送球力、守備力……いずれも最低クラスの素人レベルだ。仮にA~Gの7段階評価で表すならば、オールGといったところか。多少の個体調整は認められているがね」


「それでも、部員が足りなくて試合ができないよりも遥かにマシか……」


 龍之介が呟く。

 野球部がスタートしたばかりの今、部員はまだ彼1人だけだ。

 ロボットとはいえ、擬似的な部員がいることは心強い。


「グラウンド、ボール、野球ロボ、その他諸々……。私が用意すべきものは全て揃えたつもりだ。後は全て、龍之介君に任せるぞ」


「はい」


「来年の甲子園優勝に失敗したら、退学だからな。成績不良の君を今すぐに退学させないだけでも、ありがたいと思ってくれ」


「もちろんです。必ずや成功させてみせましょう」


 龍之介が意気込む。

 中学生大会の全国制覇ピッチャーにして、煩悩を原動力とするエロエロマン。

 彼はすっかりその気になっていた。


「期待しているよ。それじゃ私はこれで――あ、いや、1つ言い忘れていた」


「何をです? 何か餞別の品でも?」


「そんなところだ。当学園に野球部が出来たことをどこから嗅ぎ付けたのか――とある高校から練習試合の申込みがあってね」


「はい? 練習試合?」


 龍之介が首を傾げる。

 野球ロボがいるとはいえ、人間の部員は龍之介1人だけだ。

 練習試合をするには、明らかに準備不足であるように思えた。


「当初は断ろうと思ったさ。だが、先方がどうしてもって言うものでね……」


「まさか、引き受けたのですか?」


「ああ。しかし、これはいい経験になるはずだぞ? 野球ロボの性能を実際の試合で感じてみるといい」


「ええっと、ルール自体はインプットされているけど、運動性能は最低クラスなんですよね?」


「その通り。君はきっとこう思うはずだ。『一刻も早く正式な部員を集めなければ』とね」


 一種の荒療治のようなものだ。

 野球ロボの微妙さを最初に知っておけば、龍之介の本気度も上がるだろう。


「はぁ……。まぁ、いずれにせよ勧誘は始めるつもりでしたけどね。それで、相手の高校は何というところなのですか?」


「確か……隣県の【スターライト学園】と言っていたかな」


「スターライト学園……!? 今年の甲子園に出ていたチームじゃないですか! それに、その高校には――」


 龍之介が驚く。

 だが、結局は学園長のセッティング通り、スターライト学園と練習試合を行うことにあったのだった。


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龍之介

右投げ左打ち

ポジション:投手

最高球速100km 制球力G 持久力F 変化球G

ミートF パワーE 走塁力G 送球力G 守備力G

【煩悩の力】チームメイトに女子選手がいると能力アップ

【積極恋愛】恋愛に積極的になる

【夜の帝王】前*やセ**スの才能がある


ロボ0号 ミートF パワーF 走塁力G 送球力G 守備力G

ロボ1号 ミートF パワーG 走塁力F 送球力G 守備力G

ロボ2号 ミートF パワーG 走塁力G 送球力F 守備力G

ロボ3号 ミートF パワーG 走塁力G 送球力G 守備力F

ロボ4号 ミートG パワーF 走塁力F 送球力G 守備力G

ロボ5号 ミートG パワーF 走塁力G 送球力F 守備力G

ロボ6号 ミートG パワーF 走塁力G 送球力G 守備力F

ロボ7号 ミートG パワーG 走塁力F 送球力F 守備力G

ロボ8号 ミートG パワーG 走塁力F 送球力G 守備力F

ロボ9号 ミートG パワーG 走塁力G 送球力F 守備力F


※ロボに適性の守備ポジションは存在しない。どこでも守れるし、どこも守れないとも言える。

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