たぶん、君は友達

紫雨

第1話 琴音(小学生)

私、鈴木琴音のことをみんなは変だと言う。

たぶん、私の中にがいるから。

小学二年生の頃、そのについて語ったのが最後、みんなの仲間外れとしてこの四年間過ごしてきた。

クラスメイトAは私のことを奇妙だと言った。

クラスメイトBは私を悪魔だと指さした。

クラスメイトCは理由もわからず攻撃してきた。

クラスメイトDは知らないふり。


みんなを恐れて私を避ける。

みんなの正体を知らないのに。

私は人間のほうが怖かった。


「ねぇ、あなたは誰なの?」

に問いかける。

『凛花よ。あなたがつけてくれた名前なのに忘れたの?』

凛花は拗ねたような口調で返事をする。

「ちゃんと覚えてる。でもさ…」

『そんなことより、卒業おめでと。もう琴音も中学生ね』

凛花は私の話を遮って無理矢理に話題を変えた。

「どうせ何も変わらないよ」

窓の外を眺める。少し遠くに小学校が見えてカーテンを投げやりに閉めた。

卒業式は欠席した。頑張って登校しても、見に来てくれる人はいない。

「ねぇ、凛花。私の代わりに生きてよ」

無駄だとわかっていながら頼んでみる。

『ごめんね、それは無理なの』


外から楽しそうな子どもたちの声が聞こえてくる。

幼稚園の頃はみんなが信じてた妖精や魔法をもう誰も信じない。

みんなは大人になるけど、私は取り残されていく。

「ねぇ、凛花。私、大人になれるの?」

『…きっとなれるよ』

みんなと同じ大人になれる。嬉しい回答のはずなのに心が痛い。

私は何になりたいのか、自分でもわからなかった。

ニュースで知った、高校を卒業すれば大人になれるらしい。

私は大人になるまで、あと何度「寂しい」を抱えて笑えばいいのかな。

私は一人で生きていけるのかな。

不安だけが、毎日膨らんでいく。

「ねぇ、凛花。ずっとそばにいてね」

返事はなかった。

けれど、心が不意に暖かくなる。抱きしめられているのだとわかった。

毎日一人だけれど、本当は寂しいけれど、味方はいる。それが何よりも心強かった。


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