義妹になった同級生の美少女と、幸せを模索していく日々
@sumiyosinatsuki
プロローグ
義妹という存在は完全に赤の他人だ。
親同士の再婚。そうなると誕生日が後なら義妹は法律上の妹となる。
どんなに性格が合わなくても、どんなに気まずい関係でも——。
何があったかというと、俺の父が一昨日の金曜日の夜に再婚予定の相手と顔合わせをして、そのまま再婚を決定したのである。
そのまま義母と一緒に来た義妹も新たな家族となった。
俺の名前は桜宮和人。高校一年の十六歳。これまで父と二人暮らし。そこに昨日から再婚した義母の都島春子さん、そしてその実の娘である都島恵美さんが新たに同じ屋根の下で暮らすことになったと言う事だ。
それが問題なのである。都島恵美さんは、実は俺のクラスの同級生でもある。運命のいたずらとも言える縁とも言える。まだ一緒に生活して二日目。お互いに戸惑っている。俺は今日も全く話が出来ていない。もどかしい時間だけが過ぎていく。俺は部屋の中で籠っている。陽の落ちる時間に俺の部屋にノックする音が聞こえた。
俺が部屋の戸を開けると、そこには都島恵美が立っていた。
「桜宮くん、夕食だから降りてきてってお母さんが呼んでいた・・・・・・」
恵美さんは、ぶっきらぼうに連絡相談役のような態度で接してきた。一応これでも同い年の義妹。ただ、恵美さんの方が俺より三ヶ月生まれるのが遅かったので一応、同い年の妹となった。恵美さんはまだ十五歳。あと一ヶ月で十六歳になる。
普通なら、妹と言えば自分より年下を連想する。今まで一人っ子で妹という存在を経験したことがない。ましてやいきなり同級生の美少女が妹になることに違和感を覚える。
「ねえ、聞いている? 夕食だって」
俺に同じ事を尋ねる。
「分かったって。直ぐ行くから。連絡ありがとう」
「じゃあ私、先に行くから・・・・・・」
他愛も無い態度を取りながら、共に家の階段を降りていった。一応一戸建ての二階まである一般的な家族四人が住むマイホームである。俺らの家は。そんな家にこれまで赤の他人だった同級生が家族になるので慣れてないのだろう。このままだと、今日二日目も夕食は黙食になりそう——。
食卓に着く。テーブルには、味噌汁、おひたしと焼魚とありふれた一般的なメニューが並んでいる。俺からすればもの凄い違和感。これまで対面で父と食事をしてきたが、父が横に座ることになり、真正面には恵美さん。そしてその横に春子さん。始まったばかりの新たな家族での食事を進めていく。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺も恵美さんも一言も喋らず、箸を進めるだけの食事。それに対し俺の父親こと桜宮泰信と義母の春子さんは一貫してニコニコ。俺たちがこれだけ気まずい感情でもお構いなしという態度。子供を抱えた再婚同士で。
「いやあ、年頃の男女、しかも同じ学校の同級生だったとは。本当にどうなるかと思ったが、何とかやって行けそうだよ」
そう言いながらグラスビールを飲み干した。
「同い年の同級生が家族。小説か漫画みたいな世界だけど、現実で叶ってしまうなんて夢を見ているようだね、はあい、泰くん」
春子さんは、父のグラスにビールをつぐ。
「明日からは、二人が一緒に学校に行く日か、同じ学校だと仲良くなるのも早そうだから安心ね!」
「——安心ね。和人君しっかりしてそうだから、性格は真っ直ぐだから、恵美のことを大事にしてくれそうだからね」
「もう、新婚生活がワクワクするからって、過剰な期待は良くないよ」
いつの間にか、両親の間では俺と恵美さんが仲良いことに認定されている。この二日間を見ても、本当にこの再婚した両親は幸せそうだ。俺ら子供同士とは正反対に。明日からの学校生活が不安で仕方が無ない。明日から同級生の義母が同級生だから。
「・・・・・・ごちそうさま」
俺は手を合わせて食器を持ってキッチンに皿を持って行く。
「・・・・・・ごちそうさま」
恵美さんも食事を終え、キッチンに向かってきた。俺は自分の食器を洗いつつ、恵美の食器も淡々と洗っていく。
部屋の中は、二人が盛り上がる中で、水道の蛇口から出る水の音だけがかすかに聞き取れている。
恵美は無言で俺に近づく。
「両親を心配させることだけはしないでね、凄くうれしそうだから——」
恵美さんが俺の隣でつぶやく。気まずい態度丸出しだ。
それに対し、父さんと春子さんは騒がしい。楽しそうに酒を酌み交わしている。恵美さんは無言で、無表情のままリビングを後にする。益々俺の環境が気まずくなる。食器の洗う音だけが鳴り響く。
「和人、恵美ちゃんとは上手くやれそうか? 言ったとおりとびっきりの美人だろ。良い子だからお前でも上手くいきそうだよ」
何を思ったのか知らないけれど、父さんは期待ばかりを俺に押しつける。
「本当に。和人君が優しそうな人で良かった。恵美を優しく出来る子でなければどうかと思ったが、それが私の心配事だったわよ。一番の」
春子さんも、俺に期待感を押しつける。
「お互い一人っ子どうして、お互いに前の家族で色々あったから、和人もずっと寂しい生活していたから妹が出来るなんて夢みたいだな」
完全に酔っ払いの言葉である。父さんの機嫌が良いのはいいとしても、完全にスイッチが入っている。ここは完全無視。期待ばっかりさせても、いきなり同級生が屋根の下で暮らす、どう考えても夢の世界だ。直視は出来ない。まだ恵美さんが家族になってもマトモに会話すら出来ていないから。
両親が食べ終わった食器の後片付けをして俺はとっさにリビングを後にする。
「和人くん、風呂の準備をしておいてね。それと恵美に一番に入っていいと伝えておいてよね」
春子さんも俺に期待を寄せすぎているのが何か嫌だ。
俺はとっさに部屋に帰っていく。とりあえず春子さんから言われた以上は、恵美さんには伝達しておかなければならない。
階段を上って二階へ向かう。二階の俺の隣の部屋が恵美さんの部屋である。恵美さんに話しかける以上は心の準備が必要。俺はドアの前で一呼吸整える。
何を言えば良いのか? 自分から恵美さんに話しかけるのは慣れていない。これからは家族だから上手くやっていかなければならない
あれだけ両親にも期待されているのだから——。
俺はドアの前で決意したように、ドアを二回ノックする。
「はい」
ドアを開けたら恵美さんが部屋の中にいた。何か暗そうな表情で俺の方を見つめる。
「・・・・・・何?」
さっきの態度も冷たかったが、それよりも冷たい表情だった。ゼロケルビンに近い極限状態の態度で。
恐る恐る、力をふりしぼって言う。
「春子さんが、風呂は一番先に入って良いって言っていた」
恵美はとっさにドアの前に向かい、俺の方を冷たい眼差しで見つめた。
「それだけなの? 別にお母さんもそこまで気を遣ってくれなくていいのに。桜宮くんが別に言うことではないから」
面倒臭そうな態度を取り続ける恵美さん、でも何か緊張したような表情。家族なのに、まだ名字で俺のことを呼んでいるのか? 違和感がありすぎる。
「一応家族だから、下の名前で呼んでもいいけれど。むしろそうでなければ違和感あるだろ。恵美さん」
俺は、生まれて初めて女の子のことを下の名前で呼んだ。
「じゃあ、私はどうすれば良いのか教えてよ・・・・・・」
恵美さんは困惑した表情で話しかける。
「せめて下の名前で呼んでよ」
二人の関係は慣れていない。気まずい。でも家族で義理の兄妹だから仕方ない。今現在は俺の方が一つ上。完全な妹だ。
「分かったわ。最低限。両親の前だけでね。和人君・・・・・・」
和人君。その響きが新鮮だ。生まれて初めて同い年の女の子に下の名前で呼ばれた。名前で呼ばれて心拍数が上がっていく。何かドキドキしたモノが体中を覆い尽くす。
「もう一度・・・・・・、呼んでみて・・・・・・」
俺は恐る恐る話しかける。
「和人・・・・・・、君・・・・・・」
恵美さんは照れくさそうだった。
「うん、よく出来たね。恵美さん」
「別に、和人君のことが嫌いとかでは無いけれど、私自身が慣れてないだけだから」
またぶっきらぼうな表情に戻ってしまった。
「ただ・・・・・・」
「何か言いたいことでもあるの? 下の名前で呼ばれるのは嫌か?」
俺は恐る恐る恵美さん、いや恵美の話しに耳を傾ける。
「学校ではね、同じクラスだから、今はまだ名字が違う同士の別人でいてほしい。家では和人君呼びするから。でも、少なくとも一年生の間だけは『都島恵美』でいるつもり」
「クラスでは、家族関係であることを隠して欲しいと言うことか?」
「うん、それだけでなく極力関わらないで欲しいの。別に和人君の事が嫌いとか言うわけではない。どうしても恥ずかしいし、慣れてないし。学校内と家で私を使い分けて欲しいの。来年はクラス替えになる。それまでは、お願いしたい・・・・・・」
かなり強い言い方だ。このお互いの態度が今の俺たちの兄妹の全てを表していると言えるのだろう。家と学校、それぞれで呼び名を変えて関係も違う物同士でいるようにすること。それを条件として欲しいということだ。
「家では恵美さん、学校では都島さん。それで良いだろ?」
「うん、和人君、ありがとう。一年生の間は学校でも名字も『都島』でも良いって。そうでもないと出席番号も狂うと担任は言っていた。これは貴方と出会う前から学校の方と相談したことだから。それに、二年生は文理にクラス分かれる。和人君は理系に行くなら私は文系を志望する。秋になれば文理も決めなくてはならない。和人君の好きな方で良いよ。私はまだ本当にやりたいことがないから」
俺と一緒のクラスが嫌だからって、それだけで文系も浅はかだな。
「本当に何かやりたいことはないのか? そんな決め方なら後悔するぞ」
「和人君と一緒のクラスでなければそれでいい」
俺の事を遠回しに避けているようだ。
「そんなに俺の事不満か?」
少し力が入った言い方で問いかける。
「だから、言ったでしょ。悪い人ではないし、決して嫌いではないけど、今は何も感じない。私の問題」
少しムカついた。いくら入学当初の自己紹介で失敗したからと言っても、ここまで俺の事を不信扱いするとは。
「もう少し言葉を考えて話すべきだろ。都島さん」
同じ口調で反論する。
「明日からの学校生活では、まだ『都島さん』の感覚を持って欲しい、家では義理の兄妹」
「じゃあそのスタンスで過ごしていこう。恵美さん」
「うん、風呂の件はありがとう。もう一言、言いたいことだけど——」
何だよ。まだ言いたいことがあるのか?
「私を幸せにする気があるなら、本気で私を幸せにして欲しい・・・・・・」
そうつぶやきながら恵美は無表情でドアを閉めて部屋の中に戻った。
これは俺への挑戦状だ。何かタダではすまないような物を目覚めさせた。
こうして俺と義妹の関係がスタートした。
その経緯は、四日前の水曜日にまでさかのぼる。
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