リサージェンスゲート

大沢 朔夜

ブリーフィング

「どごーん! はいグリラ死んだー!」

 七歳の僕は言った。手に、装甲をまとった人型兵器のおもちゃを持って。それが持つライフルを、十一歳の兄が持つ、二足歩行の爬虫類みたいな怪獣のおもちゃに向けさせながら。

 怪獣――グリラのおもちゃを持つ兄は、

「グリラの再生力を甘く見るなよ。ガレオンのライフルくらいじゃ死なないぜ」

 と、僕が持つ人型兵器――ガレオンに対するグリラの優位を主張する。

 僕は、頬をぷくっと膨らませて、

「ずるーい! ガレオンのライフルは強力で……えっと……」

 と、ガレオンが勝てる理由を探すも、言葉に詰まった。それを見て「あはは!」と笑う兄に対して「とにかくガレオンは強いんだって!」と僕はむきになるが、

「まあ、もし戦ったらグリラには勝てないかもしれないけど――ガレオンにはガレオンの面白さがある。そこじゃガレオンは負けてないよ」

 と、兄は慰めを口にしながら、僕の頭を撫でてきた。僕も、「……まあ、グリラの映画も面白かったけど」とこぼすと、

「そういうことだ、恵人けいと。ガレオンにはガレオンの、グリラにはグリラのよさがある。それはお互いに認めようぜ」

 と、兄は答える。その言い分に、

亜沙人あさと、大人だなー! かっけー!」

 と、僕――恵人は尊敬を口にして、兄――亜沙人はどや顔をした。



 その兄と殺し合いをすることになるなんて、その頃の僕は夢にも思っていなかったのだ。

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