第14話 初めての体験
予想外の出来事がいくつかあった。一つは栞梨の身体だ。照明を消して部屋は薄暗かったが、パジャマを脱がせた栞梨の裸は、この世界にこれほど美しいものが存在したんだと俺を驚かせた。二つの膨らみは服の上からイメージしていた以上に大きかったし、しっかりとしたくびれもあり、俺の男の本能に訴えかけてくるような扇情的な身体だった。
もう一つ予想外だったことがある。それは栞梨がとても敏感な体質だったことだ。普段は恥ずかしがりで、子犬のように愛らしいカノジョは、ベッドの上では発情期の野生動物のようであった。
キスをしながらパジャマ越しに胸に触れたときからその兆候はあり、軽く触っただけで、カノジョは甘い吐息をこぼした。やがて裸になった栞梨の首や腰、太ももに口づけをするたびに、カノジョは悦びの声をあげた。
そしていまカノジョの大切な部分を指で弄っているのだが、外に聞こえるのではないかと心配になるほど、栞梨は嬌声をあげていた。
「あ、んっ、そこ、ん、いい、んっんっんっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
栞梨の変貌ぶりに最初は戸惑ったものの、自分の手でカノジョが気持ちよくなっている姿を見るのは、誇らしい気分であった。栞梨は目がとろんとしていて、快楽に身を任せて意識が飛んでいるようにも見える。
そうして俺はどんどん調子に乗り、こうなったらカノジョをとことん気持ちよくさせようと励んでいると、耳を疑うような言葉が栞梨の口から漏れ出た。
「――んっ、そう、あっ、もっとして、んっ、まーくん」
栞梨は俺に責められているときに、親友の名前を呼んだのだ。
聞き間違いかと思い、しばらく行為を続けたが、栞梨はそのあとも何度か「まーくん」と俺の親友の名前を口にした。
なぜ俺と二人きりの空間で、そして二人だけの愛情を確かめあっている大切なときに、カノジョが「まーくん」と呼んだのかがまったく理解できなかった。
俺は手をとめて、肩で息をしている栞梨を呆然と見つめた。
「す、すごいね。私、こんなになるなんて。びっくりしちゃった」
意識がはっきりしてきたのか、栞梨は身体を起こして枕元に置いておいた避妊具を手に取る。
「……もうそろそろ、使う?」
甘えた表情で、栞梨ははにかむ。ドラッグストアで購入したときから、あんなにも待ちわびたというのに、俺はまったくそれを使う気にはなれなかった。
「右京くん、どうかしたの?」
俺の反応がないので、不思議そうに首を傾げる栞梨。俺の好きな可愛い仕草のはずなのに、なんの感情も生まれなかった。
栞梨が正道の名前を呼んだことで、俺は混乱してしまい、なにも考えることができなくなってしまった。さっきまで滾っていた下半身の血液もすっかり冷え切り、もはや避妊具を使う必要はなくなっていた。
「……栞梨、ごめん」
「え? どうしたの? あ、もしかして、その、私の夢中になりすぎた姿を見て引いちゃった?」
俺は首を横に振って栞梨の質問を否定した。そして、自分の下半身の状態を説明して、今夜は無理そうだということだけを伝えた。栞梨は「そうなんだ。じゃあ元気になったら、これ使おうね、右京くん」と頬を赤らめて言うと、恥ずかしいのかそのまま頭からシーツを被った。
俺は「おう」と気のない返事をする。頭の中が混乱していた。そのため俺は真っ暗な部屋のなかで、なんだかいつもよりも闇が濃いなと、どうでもいいことを考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます