第二十一話 お嬢様、激戦区に入る。
「つきましたわね……
そう言って物々しい風が吹き荒れる駐車場をカラカラと、よく西部劇によくある丸い草が転がっていきましたわ。
「……何で転がっていくのですの⁉」
ここ日本でスーパーの駐車場ですわよね⁉
「やあ、やあやあ……そこのお嬢さん」
「誰ですの⁉」
思わず突っ込んでしまっていた私に一人の老婆が話しかけてきましたわ。
「貴方はもしや、【千手観音】のお菊さんですの?」
「ほう、私の名を知ってるとはね」
「ええ、この界隈では有名人ですからね」
そう言って私は
「……ひっひっひ、お嬢ちゃんもこの争奪戦に参加するのか?」
「ええ、そうですわ」
「ふっ、辞めておきな、この戦争は……遊びじゃない、命が欲しければ定価で金を払うこったな」
「ふ、そんなのいらぬ心配ですわ」
そう言って私はびしっと
「この戦争、勝者は私なのですわ‼」
「……くっくっく、なかなか大口叩きよる……楽しみにしとるでな」
そう言ってお菊さんは「いーっひっひ」と笑ってスーパーマーケットの中に入っていった。
「……せいぜい粋がってると良いのです……この
【閑話休題】
真の戦場とは、こういう事なのでしょう。
全身に感じるピリピリとした殺気を感じますわ。
まるで指一本動かせばすぐにでも飛び掛からんとするような、獣たちの水面下の応酬。
周りを見渡せば、主婦を始めお爺さんお婆さん、小さな子供に私と同い年位の女の子まで。
老若男女問わず沢山の人が今か今かと、各々の定位置で狙いを定めておりますの。
「……さて、時間は」
スッと取り出した腕時計の秒針が、カチカチと動く。
「……あと、5……4………」
3……2………1……カチッ
全員が動き出した。
始めに動いたのは、主婦。
「ヒャッハー! この総菜は私がもらうぜええええ‼」
「貴様ぁ⁉ それは私が狙っていた獲物‼」
「早いもの勝ちなんだよぉ、この世界はぁ!」
「……あれは⁉ 【
そう言って強烈なインパクトを醸し出す主婦たち……違う、片方おかまだ。
「イーッヒッヒッヒ! あんたはそこで足を止めてればいいさ! その間に、私が他の物を手に入れておくからなああ‼」
「はっ!? しまった」
そう言って走り出す主婦の前に、一人の今日キャラが立ちふさがる。
「おばさん、はしっちゃあぶないよ」
「くっ⁉ 子供だとッ‼」
そう言って立ちふさがった子供の後ろで、悠々自適に母親が目的の物を取っていく。
「クソっ、卑怯者が!」
「卑怯? なんの事かしら? 私はただただ、子供と買い物に来ただけよ」
「ぐ、ぐぬぬ……」
そんな光景が各地でおこっている。
「……はっ⁉ しまったですわ⁉ あまりの勢いに呆気に取られてしまっていましたわ‼」
私も動き出さなくてわ!
そう言って私は動き出しますの。
「えっと、私が手に入れないといけないのは……あれですわね」
目的の商品は、すで沢山の人に捕られ、あと一つしか残っていなかった。
あぶねーあぶねーですわー……
「とりあえずこれを……」
そう言って手を伸ばしたとき、誰かとぶつかった。
「はっ!? なんですの!」
そう言って振り返るとそこにいたのは、黒髪の女の子だった。
「いや~良かったよかった~姉ちゃんにどやされるところだったよ~」
そう言って、私が欲しいものを取ろうとする女。
てめぇ、そいつは私が先に手を出したものですのよ!
「ちょっと! 貴方! それは私のですわ!」
そう言って、ガシッと手を掴みますの。
「は⁉ 誰⁉」
「それは私が先に見つけましたの!」
「先に見つけたとか関係ないよね⁉」
「関係ありますの‼」
「先見つけたとしても、これは僕がもらうから‼」
「そんなことさせねえですのっ……」
そう言って、私たちの間に火花が走りましたわ。
バチバチと激化する、視線の応酬。
「……勝負だッ!」
そう言って女の子は拳を突き出しましたわ。
「な、何だっていうのですの? やろうってのですの?」
「違うよ! ジャンケンするんだよ!」
あ、そう言うことですの。
「なるほど……確かにそう言う事なら平和的な解決ですの」
そう言うと、女の子はニカっと笑った。
「そういう事、それじゃ行くよっ!
「いつでもこいですの!」
「ジャンケン……パーッ‼」
「パーですの!」
二人とも出した手はパー。
あいこでしたの。
「……あいこで‼ グー!」
「グーですの! またあいこですの⁉」
次はグーを出したのですが、またまたあいこ。
ぐぬぬですの。
「ぐぬぬ、次こそ……あいこでちょきっ!」
「チョキですのおお!」
「またあいこおおおお!」
…………
…………
それから私と女の子の戦いは正に接戦を極めましたわ。
「……ちょきっ!」
「グーですの! ふ、私の勝ちですわ!」
「……ぐぐぐ……しまった……」
「ふっふーん、それじゃあコレは私がもらいますわね……って」
そう言って商品を手に取ろうとした私ですが、さっきまでそこにあった物が既にありませんでしたわ。
「あ、あれれ~ですわ~?」
「……な、無い!?」
「ふ、お嬢ちゃんたち。視界が少し狭すぎたようね」
そう言って現れたのは、お菊さんでしたわ。
「お菊さん……はっ!? それは!」
「まさかっ⁉」
「これが大人の特権さね……いーっひっひっひ」
そう言って、お菊さんは私たちが欲しかった商品を持ち、颯爽とレジへと去って行ったのですわ。
「うそだドンドコドーン!!」
「うがああああ、しまったのですわああああああ!」
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読んでくれてありがとうなのです!
作者からの少しの宣伝なのです。
新作を始めましたのですよ!
タイトルは『転生したら幽霊船だったので、この世のお宝すべて手に入れてやろうと思います。』
https://kakuyomu.jp/works/16817330665162212961
……知ってます? 船って彼女なのですよ。
是非読んで……コメントいただけたら最高に嬉しいのです!
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