第2話 汚嬢様、ヒャッハーする。

 あれから、長い時間が経ちましたわ。


 私の体は、つぎはぎだらけのTheゾンビ。

 着ているドレスは、パッチワーク。

 右目に付けた深紅の眼帯。


 怪物となった私の目の前を魔物の大群が塞ぎました。

 そんな魔物に向けて、私は右腕に直結したマシンガンを構えましたわ。


「……汚物は消毒ですわッ‼ ヒャッハー↑↑」


 マシンガンが火を噴きゴブリンどもがハチの巣にしていきますわ。

 ゾンビになって苦節半年。


 ようやく、ようやくですわっ!


 ようやく上層に帰ってこれたのですわ‼


 ……あの後、ゾンビになった私は実は最下層にいたのですの。


 幸い? 私、ゾンビの特殊能力によって、何とかなりましたが……あそこは人間が生きれる場所じゃないですわ。


 最低ランク10以上、雑魚敵なんていない、魔境を越えた地獄。


 そんな地獄から、私はなんやかんやありつつ帰ることができたのですの。


「とりあえず帰ったら、お姉ちゃんに今までの事を説明しませんと……心配かけてしまったと思いますし……」

「……誰か、助けっ」


 そう言って、私が歩いているとどこからか誰かが助けを呼ぶ声が聞こえてきたのですわ。


「ん? 助けを呼ぶ声ですわね、助けに行くのですわ‼」

 

 そういってマシンガンを両手で抱えて走り出した私がたどり着くと、そこにはオーガに襲われそうな如何にもピンチな二人の女の子がいたのですわ。


「……あ、あれはオーガッ⁉ 下層の魔物がなんでこんな場所に……って、悠長なことしてる暇はないですわ‼」


 私はお嬢さん達と魔物の間に入り腕のマシンガンをぶっ放しましたわ。


 ダダダダダ……


 マシンガンが火を噴き、オーガを狙い撃ちしますわ。

 砂煙が上がり、静かになるダンジョン。


「やりましたかね? ……怪我はありませんか?」

「は、はい……あの、貴方は……」

「呼ばれて飛び出て何とやら、私の名前は、エリザベート・バースデイですわッ‼ 私が来たからにはもう泥船に……間違えましたわ。タイタニック号に乗った気でいるがいいですわ‼ おーほっほっほっほ……ほぶっ‼」


 そう言って高笑いをあげていたら、私の頭が吹っ飛びましたわ。


「キャぁあああああ!」


 血をまき散らし、爆散した私は地面に倒れ伏します。

 そんな私の姿を見て、彼女たちは悲鳴を上げますわ。

 まあ、目の前で助けに来た人がいきなりオーガに潰されてしまったわけですからね、おどろくのも無理はありませんわ。


「う、嘘……死んじゃ……わ、私たちのせいで」

「死んでないのですわ」

「え、ぎゃああああああああ⁉」


 首なし死体として向くりと起き上がった私は、すぐさま頭部を再生させるのですわ。


「……ちょっと油断しましたわ。中層や下層の魔物ならともかくまさか、上層の魔物であれだけ弾丸を打ち込んで死んでなかったなんて想定外も甚だしいですわよ、お〝っ」


 そう言いながら、オーガが持つ棍棒でミンチにされては復活する私。

 破壊衝動以外の感情の無いはずのオーガもあまりの出来事に何処か怯えているような気配さえありますね。


「……ぎゃっ、まあそんなことなんてないんでしょうが。ぐえっ……もう、いい加減潰され続けるのも飽きてきましたわね……エグッ、あ、そもそも潰される趣味なんてなかったのですわ」


 なんていいながら、私は、ゾンビの特殊能力を発動させますわ。


「あ˝……お˝……お〝ぉ˝ぉ……今ので八回……私は、今八回死にましたわ、この意味お分かりですの?」


 なんかエッチィ、オホ声を上げながら迎えた八回の死。

 これにより、条件が整いましたわ。

 人間時代から持っていたけれど、使えなかった狂気のスキル……死を代償に、発動する殲滅スキル【地獄巡】!


「……そのうちの一つ、使わせていただきますわ。【死屍累々両鉄処シシルイルイ・リョウテツショ】を‼」


 先ほどと同じようにガチャンと構えたマシンガンが火を噴きますわ。

 ですが、放たれるのはさっきとは比べ物にならないほど凶悪な数の弾丸ですわ。


「放たれた瞬間、増殖する無数の弾丸はあなたを死ぬまで貫きます。その様は正に地獄の一つ【両鉄処】の如く。この地獄から逃れる方法は存在しませんわ」


 そう言った瞬間、弾丸は止まり、目の前のオーガだった何かは肉片になって血だまりに落ちていきました。


「これにて、勝負ありっ……ですわねっ‼」

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