殴り込んだからには

 結論から言うと、メインの空き枠に近接武器をセットするのは止めました。

 というのも、武器屋でカタログを眺めながらゼネとティアに俺が近接武器を持つのと当たらない銃を持つのどっちが嫌か訊ねたところ、


「え、普通に当たらない銃一択でしょ。いくらクソエイムのアラヤでも数撃てば運ゲーで当たるわけだし。そもそも一般的な近接アタッカーのアラヤには脅威を感じないというか……はっきり言って弱いじゃん」


「当然、後者だ。お前が剣とかを持ったところで雑魚狩りにしか使えないし、確実に俺達のカモになるだけだろ。悪い事は言わないからやめておけ。ソマガの二の舞になるぞ」


 ——散々な言われようだった。


 少しだけムカつきはしたものの、残念ながら二人の評価は的を射てるっつーか、紛れもない事実である。


 今の戦闘スタイルに落ち着くまでのコイツらとの対戦戦績は俺の黒歴史だ。

 それ故に俺の強みも弱みもこの二人が誰よりも分かっている。

 であれば、素直に耳を傾けるべきだろうってことで、アタッカー向け武器屋での買い物は大盾を新調するだけに留めることにした。


 昨日、新しいのを買ったばかりなのにまた別のを買うのはどうかと思ったが、武器が強いに越したことはないし、前のは初期武器から脱却する為の間に合わせでしかなかったからヨシとしよう。






 というわけで、新武器購入後はティアの提案により、近くにあるNPCが経営するカフェに訪れていた。

 席に案内され、カタログから注文を終えてすぐのことだ。


「——それじゃあ、今後の方針について作戦会議をしまーす!」


 パンと一拍手、ティアが音頭を取った。


「どうした、急に?」


「言った通り作戦会議だよ。今後、サガノウンをどんな風に進めていくかのね」


「えー……計画立てる必要ある? んなの適当で良いだろ。別にガチってるわけでもないんだし」


「良くなーい! ぜーんぜん良くないよ!」


「お、おう……」


 頬を膨らませ、食い気味に強く否定するティアに思わずたじろぐ。

 つーか圧が強えよ、圧が。


「いい? わたしらがずっとサガノウンをやって来なかったのは、ソマガっていうある意味で最高の遊び場があったからでしょ。でも、そのソマガが一ヶ月前にサ終しちゃってやるゲームが無くなっちゃったから、似たような内容のここに辿り着いたわけじゃん! それはアラヤもゼネくんも同じだよね!?」


「まあ……そうだな」


「……否定はしない」


「でしょ!? だからこそわたしは、このサガノウンにソマガってゲームが存在していた証を何らかの形として残したいって考えているわけだよ!」


 拳を握りしめながらティアは力説する。

 これはまた壮大な計画を考えたもんだ、と呆れ半分で感心する一方、悪くないと思う……というか賛同する自分がいる。


「……なるほど。それで、具体的な方法は考えているのか?」


「ううん。だからそれをこれから皆んなで考えようよ」


 悪怯れることなくけろりと答えるティア。

 対してゼネは「だろうな」と言わんばかりに小さくため息を溢す。


 まあ、ぶっちゃけ俺もそんな気はしてた。


「——なら、活動の中心に据えるコンテンツの選定から始めるぞ。ティア、アラヤ。このゲームのメインコンテンツに何があるかくらいは把握してるよな?」


「それくらいはな。つっても、ざっとだけど」


 サガノウンのメインコンテンツ——。

 ざっくり分けて『任務』『防衛』『探索』『遠征』『対戦』——の五つと言ったところか。

 この中でやり込み要素が強いのを挙げるのであれば、『探索』『遠征』『対戦』の三つだろう。


「俺も大体その認識だ。ティアもそれで合っているか?」


「うん、ばっちし問題なし!」


「認識の相違はなし……なら、話を続けるぞ。これらの中で一番ゲームの根幹に関わるのは間違いなく『遠征』——要するに未開領域の一番奥に辿り着くことだ。公式が掲げるプレイヤーの目的であるが、未だ最奥部まで辿り着いたプレイヤーは誰一人として現れていない」


「みたいだな」


 未開領域は奥に進めば進むほど、出てくる敵がどんどん強くなっていく。

 そんで現時点での攻略最前線に至っては、レベルカンスト越えの敵がわんさか出てきてしまっているという有様らしい。


「つまり、わたしらで未開領域のゴールに一番乗りしようぜーってこと?」


「そうだな……アリかナシかで言えば”アリ”だ。……だが、今の俺達が遠征を第一目標に置くには解決すべき問題が多過ぎる」


「確かに。まず前提としてレベルカンストさせなきゃならないしな」


 今はとんとん拍子でレベルが上がりまくってるけど、途中からはそう簡単に上がらなくなるっぽいし。


 仮にレベリングだけに専念したとしても、レベル99にするまでに軽く一ヶ月近くはかかるだろう。

 それと並行して装備集めやら熟練度上げやらをしなきゃならないとなると、マジでRTA+膨大な作業ゲーやることになりかねないぞ。


 それだと途中で純粋に楽しめなくなるっつーか虚無ゲーやる感じになりそう。


「となると……遠征以外のコンテンツ——『探索』か『対戦』をガチるってことか」


「ああ、それが現実的な狙い目だと思う。無論、行く行くは遠征も本格的に視野に入れるべきだろうけどな」


「ふーん……じゃあじゃあ、ゼネくんは何から手をつけるべきだと思ってる?」


 ティアの質問にゼネは少し考え込んでから答えを返すのだった。


「あくまで俺個人としての考えだが……まず最初に参入するのなら『対戦』にすべきだと思う」




————————————

未開領域の攻略も大事ですが、通常フィールドの探索も意外と重要だったり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る