18章 『世界にダンジョンが溢れた日』

437話 【system】【構築中】

「……ぷはっ。 こんなにおいしいお酒作る世界なんだ」


その女神は、現れてそうそうに酒瓶を煽り――――


「――そんな宝箱みたいな世界、滅ぼしちゃダメでしょ?」


「「「GAAA――――――――!?」」」


――飲み終えて空になったそれを逆さにして口へ数滴垂らし。


ぱぁん。


ガラスの破片の飛び散る、軽い音が響く。


【うわぁ……】

【速報・ハルちゃん、またあの技】

【酒瓶を撃ち抜いて破片でドラゴンたちを……】

【しかも的確に頭か胸元に】

【まとわりついてたの、全部ぶち抜いてるぅー……】

【えっぐ】


【もしかして:かなーりのおこ】

【そのようだな……】

【ハルちゃんってさ、怒るボルテージ上がるほど静かになるからね……】

【まだ大丈夫  まだ笑ってない】

【ああ……】

【めっちゃご機嫌な感じでぶち切れるからなぁハルちゃん……】


『アルア様ー!!』

『アルテ様もしぼんじまってる……』

『あのあと、やっぱり魔王軍とすごい戦いを……』


少し前に姿を現した黒き女神と同様、白き女神もまた――まるで「幼女」と見紛う姿になっている。


それを認識した子供たちは、どれだけの戦いがあったのかと体を震わせている。


「……ハル様」

『そのお体は』


「あ、大丈夫大丈夫。 さっきそのへんでお酒と魔力補充してきたから怖くないよ」


銀髪の少女たちからそう問われ、腰に着けた「綺麗な収納袋」から酒瓶を取り出し、両手で掲げて心配のないことをアピールし始める。


【草】

【草】

【違う、そうじゃない】

【左に酒瓶、右に酒瓶でご機嫌ハルちゃん】

【んもー、ハルちゃんってばおちゃめ☆】


【なんだ、さっきのハルちゃん、ただちっちゃくなってただけか】

【ちょっと雰囲気違うからざわついてたけど安心だね】

【このお酒への並々ならぬ執着っぷりはハルちゃん以外にあり得ないもんね】

【始原もそう思います】

【草】


【てか何あった?】

【なんかちらほらハルちゃんがってコメントがあったけど】


【この短い時間でな、ハルちゃんがな】


【ぶらり地球に来て盛大に暴れてユニコーンロリを助けて】


【サキュバスに進化させてお酒せびり回ってから消えたんだ】


【詳細は「ユニコーンロリ」で検索だ】


【????】

【草】

【一体何が起きたんだそれ……】

【んにゃぴ……】


【いや、ほんとそれだけなのよ】

【ほんとほんと】

【マジでそうなんだよなぁ】

【カメラのことぜんっぜん気にしてなかったから、たぶん本当にただのぶらり旅だったんだろうねぇ】


【もしかして:手持ちのおしゃけ切れてた】


【もしかして:るるちゃんたちと別れてワープしてる途中で気がついて道草食ってた】


【道草(さっき現れてた魔王軍討伐&お酒】

【草】

【草】

【ハルちゃんだからね……なにしてもおかしくないよね……】


【でもなんか雰囲気違うしちっこいからさ、偽ハルちゃんとか言い出すやつがいて】


【草】

【偽ハルちゃんで草】

【懐かしいな偽ハルちゃん】

【ハルちゃんが認識された初期の初期のな……】


【偽ハルちゃんカルテット「私たちのこと、忘れないでください」】


【草】

【なんだこれ!?】

【知らないのか? ハルちゃんに憧れて偽ハルちゃんやってた子たちだよ】

【あー】


【しかもハルちゃんから直々に指導受けた子たちな】

【草】

【そういやそうだったわ、ハルちゃん、偽ハルちゃんたちの配信来てたわ】


【そんな子たちも今や中級者に踏み入れてるとかいうね】

【え、すご】

【もう1年だからな……】

【しかもみんな遠距離特化  実質この子供たちみたいなもんだ】

【ほへー】


空の酒瓶をぶん投げ、それを光る矢で打ち砕き――あれだけしつこかったドラゴンたちを一瞬で葬った女神は、そんな些細なことも気に留めず、双子へと問う。


「ノーム、システムの構築は?」

「ん」


「『ないない』の方は終わってるんだね。 よしよし」

「ん」


【???】

【ハルちゃん?】


【なんかハルちゃんが違うと思ったら、あれだ  カメラさんのことみてないんだ】

【あー】

【え、でもそれがデフォじゃ】

【いや、ハルちゃんはときどき見るんだよ】

【そうだよ】

【あと、ノーネームちゃんの呼び方が……】


【まぁカメラは、配信してないって思ってたときでもちらちら見てたよね】

【あれは配信してる希望のためかと思ったけど、配信してるって知ったあとも普通に見てたしなぁ】

【まぁ自分の周り飛んで、いろんな角度から見てきてる物体あったら気になるよね】


【なのに、全然見てない……】

【ハルちゃん、特段焦ってるわけでもなさそうなのに……】

【姿形はどう見ても見慣れた幼女姿なのに……】

【ハルちゃん……】


「じゃあ後は……っと」


白き女神は、光の弓を構える。


「……魔王軍さんたちからのゲート、開くね」

「ん」


ぽつ。


ぽつぽつ。


――ぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつ。


空の一面に――黒い渦が、散らばっていく。


それはまるで、空という空に編み目が広がるかのよう。


『まさか、あれ……!』

『……わたくしたちの世界を、埋め尽くした魔王軍の』

『あれよ……あれが、連邦国の空じゅうに……!』


それを視認したことのある者たちは、腹の底からの恐怖を覚える。


【ひぇっ】

【もしかして:ワープゲート】

【こわいよー】

【ついさっき、一瞬だけユニコーンロリの近くで起きたあれが】

【モンスターが、世界中の空に……?】


【え、でも、俺んちの近く、なんにもないぞ】

【私のところも】

【警報も鳴ってないな……】

【なぁにこれぇ……】

【本当に、何が起こっているんだ……?】



◆◆◆



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