436話 【速報・リリちゃん】
『リリー! おい大丈夫かリリー!』
『お、お姉ちゃん、ノームさまがしたことだから……!』
『いや、分かってるけどよ……!』
まさか、ずっと守ってくれた女神が自分たちを攻撃するだなんて。
――そんな考えは完全に除外されているも、何が起きているのか見当が付かず、ただただその漆黒の光を眺めるだけの、1人を除いた子供たち。
黒い光に包まれた、幼い少女。
その光が次第に大きくなり――そして、晴れる。
『リリー! 大丈夫……リリー……?』
『はい、おねえさま』
「――はい、お姉様」
【ふぁっ!?】
【え? え?】
【白髪妹ちゃんの隣に……】
【え まさか】
「……ノーネーム様も。 こうして直接にお会いするのは幼いころ以来、ですね」
【リリーちゃん!?】
【え、待って、なんでリリーちゃん】
【予想はしてた してたけど】
【白髪、銀髪で、顔も雰囲気もそっくりだったから】
【ああ……!】
【生きてたね……】
【ああ……!】
【よかったぁぁぁぁ】
【1年間生死不明だったんだもんなぁ】
【泣きそう 泣いてる】
【俺たちの全肯定リリちゃんが……戻って来たんだ……!】
【草】
【草】
【そうだった……】
【ついでに重度のクンカーな!】
【草】
【泣いてたのに笑っちまったじゃねーか!!!】
【ハルちゃんの配信なんだ、当然だろ】
「おひさ」
「ええ、お久しぶりですノーム……ノーネーム様」
【草】
【ノリが軽ぅい】
【ノーネームちゃんがかわいいいいいいいい】
【草】
【ノーネームちゃんの恥ずかしがりも変わらないな!】
【けど、まさかの】
【え? 子供たちって……】
【もしかして:11年前の】
【えっ】
【あっ】
【んで、去年消えたはずのリリちゃんがノーネームちゃんのないないで……?】
【え? どゆこと?】
【待って待って、情報量追いつかない】
手を繋いだ、白髪と銀髪の少女たち。
いや、白髪の幼い少女も、今や魔力を貯め込んで美しい銀髪になっていて。
――その彼女と手を繋いで立っていたもうひとりの銀髪は、腰まで届く長さを輝かせていて。
ハルとの冒険で何回か替えたあとの、ドロップ品で固めた装備。
10年間、様々なダンジョンを渡り歩いて選りすぐった軽装備。
そこには――その少女の出発点と到達点が、同時に存在していた。
【速報・リリちゃん】
【リリーちゃんでは?】
【ばっか、ハルちゃんがリリちゃんって呼んでからそうなったんだろうが】
【そうだっけ……そうかも……】
【まぁ1年前のだし】
【あー】
【ちなみに経緯はやっぱ全肯定】
【草】
【ああ……ハルちゃんの舌っ足らずな感じで呼んだのが発端だったか】
【まぁ分かる】
【分かる】
【ハルちゃんに呼んでもらえたら何だって良いもんな!】
【けど、……長かったなぁ……】
【ほんそれ】
【るるちゃんも相当待ってたけど……】
【待ちすぎて闇堕ちしてたけど……】
【あれ癖になってそう】
【草】
【今そういうの止めようね??】
【草】
「……もくてきち、とうちゃく」
ぐぅん。
彼らの落下が、遅くなっていく。
【目的地?】
【どこぉ……?】
【見えない】
【真っ暗で見えない】
【どうせ俺の未来なんて……】
【草】
その下方に、新たなワープゲートが出現。
彼らは――周囲の敵ごと、その中に突入し。
『――出た! どこここ!?』
『でっかい町……いや、遙か先にも道が続いてやがる……!』
そこは――一面の、青空。
上空100メートルほど。
眼下には煉瓦色と白色で形作られた、小さな家々が隙間なく敷き詰められており。
それとは明らかに時代の異なる広い道路が貫き、そこを鋼鉄の塊が走っている。
【車ぁ!?】
【中世の町みたいなのに道路が】
【いや、これは地球の欧州もこんな感じだぞ】
【まじか】
【古都市は法律で家とか昔のまんま、でもその外は現代的な建物とか、マジでテレビとかで観る欧州の町並みだな】
『あら、南欧。 あたし南欧に……ママとパパと行きたかったのに……』
『わたくしの居ました、王都……城がなければ、こちらの方が……』
思い思いの感想を口にしつつも、現在進行形で落下しつつある子供たち。
「「「GAAAA――――――――!!!」」」
――通常空間に出てしまった。
これでは獲物が逃げてしまう。
そう判断したドラゴンたちは、いっせいに最大級の攻撃を用意し始め、一瞬の静寂が訪れる。
「――えびる」
「――必要ないよ、ノーム。 それよりシステムの構築をお願いね」
「ん」
彼ら全員の上方――遅れて出てきた存在から、声が降る。
「!!!!」
「あるあ!」
「あるて!」
「……ハル様」
『アル様……』
「その程度の数のドラゴンたちなら……通常攻撃で充分」
――ひゅんっ。
光る弓から放たれた金色の矢が、ドラゴンたちへと吸い込まれていき。
「「「――GAAAA――!?」」」
完全に不意打ちとなる攻撃のために、口元まで昇っていたブレスと魔法が――ドラゴンたちの口の中で炸裂し、自爆する形となる。
「あれ? こんな魔力込めてないんだけど。 まぁいっか、楽だし」
【ひぇっ】
【汚ぇ花火だ……】
【じょばばば】
【タイミングはばっちり……ばっちりだったんだけど……】
【ばっちりすぎて、あれ多分……】
【ああ……】
【ま、まぁ、ごんっよりはマシだから……】
【草】
【けど、まさかのハルちゃんも】
【縮んでる!!!】
【ハルきゅんが戻ってきたわ!!】
【ハルきゅん!! ハルきゅん!】
【あの1枚布の下でぶらぶらしてるハルきゅん!】
【ハルきゅん、ノーネームきゅんに襲われて産まされたのよね……】
【男の娘×男の娘……なんて素敵なの……!】
【腐ったお嬢様方!?】
【お前らうるせえ!!】
【一瞬でどっから沸いてきやがったこいつら】
【けどマジでハルちゃんまでちっこくなってる】
【かわいい】
【かわいい】
もうもうと火の塊となりながら墜落していくドラゴンたちを、見下ろしている金髪の少女。
「ノーム、そこの子たち、お待たせ」
『アルテ様!』
『アルテさま!』
『アル……なんか雰囲気違うわね?』
『アルア様……小さくなられて……どれだけの激戦を……』
【速報・ハルちゃん】
【見慣れたハルちゃん】
【え、でもなんか違くない?】
【なんか話し方が……いや、気のせい……?】
◆◆◆
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