425話 SFみたいな古代未来都市

「やっばー! なにこれパリウッドのセットー!? ……なわけないわよね……うん、知ってたわ……」


私、女神様にはドキドキさせられっぱなしなの。


あり得ない数のモンスターの大群をゲームの必殺技みたいになぎ払ったり、一緒に裸になってお風呂に入ったり、一緒に寝たり、一緒に――子供だけで嗅いだり。


戦いを教わったり、ちょっとだけど魔法も撃てたり。


みんなで息を合わせてモンスターを狩ったり、ドロップ品を回収して品定めしたり。


キャンプ――大自然でサバイバルしたり。


こんな環境なのにこれっぽっちも怖くないのは、女神様――アル様が後ろで見ていてくれるから。


あ、あとノーム様も居たわね。


言葉が通じなかったりするのはちょっと困るけど、今は逆にそれが心地良いの。


――そして、今。


SF映画とかアニメーションに出てきそうな、古代未来都市って印象の巨大な町が洞窟の中にあったのを見て……もう張り裂けそうよ。


「パンハッタンよりも……テレビで観たパイナの巨大都市よりも、ずっとずっとすごいわ! ……っとと、いけないいけない……」


女神様は、ああ見えて少し……いえ、かなりおおざっぱなの。


だから運転も――空飛ぶホバークラフトみたいなのも遊園地のジェットコースターみたいに上下左右お構いなし。


私は楽しくてきゃーきゃー楽しんでたけど、他の子たちは……まぁ、どう見ても昔の人たちの服装だったし……初めてで怖がって。


でも女神様たちはお構いなしに楽しんでたもんだから、ちょっと運転が落ち着いたタイミングで寝ちゃったみたい。


そうよね、人生初めてのジェットコースターが、安全バーもレールもなくって、手すりへのセルフサービスで、しかも運転手の気分次第だったりなんかしたら……そりゃあ気絶するように寝ちゃうわよね。


……大丈夫よね?


恐怖で気絶したわけじゃないわよね……?





「……何、これ……」


手すりに両手でしがみ付いたまま意識のなかった4人を両手で支えながら……座り込んだ感じになりながら外を眺めて楽しんでいた私。


女神様たちはノリノリで都市の上空を遊覧飛行していたのまでは良かったの。


……だけど、これは。


「石碑……中央の広場に……しかも、あの姿はどう見ても」


――アル様と、ノーム様。


ついさっき、私たちを助けるためにって大きくなったノーム様のおかげで、一瞬で分かったわ。


「……え? ふたりって……そんなに昔から?」


「あるあ……」

「あるて……あるて……」

「のうむ……」


振り返ると――ようやく起きたらしいみんなが、たぶん、いえ、きっと恐怖からではなく信仰から、床にへばりついている。


なんだか私もしなきゃいけない気がしてきたから同じようにしてみたけど、これ、最初にアル様が振ってきたあとにしてたやつよね?


え?


……アル様、ひょっとしてすごいおばあちゃんなの?


見た目は私たちよりちょっと上のお姉さんなだけなのに。


「――――――――…………」


……あ。


アル様が――泣いてる。


それを見ちゃった私は、なぜか分からないけど急に悲しくなってきて――気がついたらみんなにしがみ付いて、泣いていたの。


理由なんてわからない。


けど、なぜか――とっても、悲しくて。





「ほらっ、アル様! これ! お酒! 私の荷物にも入れておいたの!」


パパはよく、お仕事でストレスが多かった日にはお酒を飲んでいたわ。


アル様は普段からお酒が大好きだし、これを飲めばちょっとは元気出るんじゃないかしら。


そう思って差し出したビンとコップ。


なみなみと注いで渡してあげると、何回かこくこくと喉を鳴らして飲み干して。


それを何回か繰り返したら――ようやく、普段の顔つきになってきたの。


「良かった……」


「あるて」

「おしゃ」

「しゃけ」

「おいし?」


みんなも明らかにほっとした顔になっているわ。


……言葉は通じなくても、気持ちは分かるものね。


「……けど、ここって……」


すごく高いビルの屋上に着地して、そこからエレベーターで――たぶん適当に押したんだろうフロアに降りてきた私たち。


そこはまさにSF映画の中そのものって感じの造り。


天井にも壁にもライトなんてないのに、規則正しくか不規則か、波みたいに光が通り過ぎていく。


「普通の長方形な形じゃなくって、現代美術……?だったかしら、そんな感じの独特な形をしたビルの中みたいに、でこぼこした形になってるし……」


みんなも興味深そうにきょろきょろしているけど、現代文明出身の私でもこうなんだもん、他の子はきっともっとおもしろいって思っているのよね。


「……――――――」


「?」


ふと視線を感じて振り返った私と、アル様の視線がぱちりと会う。


……どうしたのかしら?


何か私の顔とか髪の毛、服に着いて――いそうよね、だってあんな戦いだったんだもの。


そう思って、このフロアに鏡とかないかしら。


そんなことを考えていた私を――揺さぶるひと言。


「……――、キャシー……?」


「!?」


え?


え?


なんで?


なんで急に女神様が私の名前を!?


他の子の名前すら読んだこともないのに!?


「あの、女神様にだけはみんな言葉が通じてな――あ、あれ……?」


びっくりしたから尋ねようとしたら――もう興味をなくしたのか、下を向いている女神様。


……って、え?


「ノーム様が……寝てる……?」


たぶん冷たいでしょう床に、だらんと。


まるで猫のように、まるで遊び疲れた子供のように――ついさっきまでは手のひらサイズだったはずのノーム様が横になっていたわ。


目だけはアル様と私たちを交互に見てるけど「もう疲れた、眠い」って言っているようで。


「……くすっ、まだ小さいつもりなのかしらね」


手のひらサイズからアル様と同じ背丈になっているノーム様。


そんなノーム様にぽつぽつと話しかけているアル様。


その姿を見ていたら――私の名前を知っていたことなんて、ささいなことだって思えてきて。


みんなでノーム様をつついていたら、そんなことはもう忘れちゃっていたわ。



◆◆◆



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