414話 道具拾い
「アルテさま!?」
「ノームー様!!」
女神様があんまりにも高いところからいきなり飛び出した瞬間には、それはもうひやっとした。
だけどそうだよな、精霊よりもすごい存在だっていうんだもんな。
実体を維持できてる以上、飛ぶくらいは何ともないんだろう。
「あ、おねえちゃん……アルテさまが弓を!」
「弓っていうには形がヘンだけどなぁ」
そんな彼女……なんだよな、女神っていうくらいだし……は、上が異様に膨らんでるヘンな弓を取り出す。
そんで、あたしたちの知ってる弓よりもずっと矢を引き込んで――。
――きゅんっ。
そう、綺麗な弦の音ともに。
「わぁっ……!」
「すげぇ……見ろよ、一瞬で下の魔物どもが」
「ぼくたちじゃ、全然敵わない魔物を、いっぺんに」
「1回弓引いただけで100くらいか? 矢を出せるとか……やっぱすごいんだな」
アルテ――様が来たときにはもっとすごいことしてたんだ。
それやったあとに寝て、起き抜けでもこれくらいはできるんだろう。
「ア、アルテさまが居れば、ぼくたち助かる……?」
「強い魔物倒してくれるだけで生き延びられるんだ。 それにほら、見ろよ」
砂煙が晴れてきた地面には――ボコボコになった地面に綺麗な結晶、そんでたくさんの道具が転がっている。
「あの中の少しだけでも分けてくれりゃ、何日かは生き延びられる」
「はぁ……すごいなぁ、女神さまって……」
「あ、おねえちゃん、女神さま降りていくよ」
「お、じゃあ一緒に行くか。 拾うの手伝ったりすれば分け前くれたりするだろ」
「……おねえちゃん、打算ありすぎ。 さっきのお姫様たち、見習いなよ」
「いやだって、そもそも話が通じねぇし」
きらきらした白い羽と頭の上の輪っかを輝かせながら降りていくアルテ様。
あたしたちは急いで階段を降りていった。
◇
「す、すごいよおねえちゃん……こんなにたくさん」
「ああ……よく分からねぇ物も多いけどな。 こんなときに他の3人と話せたら良かったんだが」
下に降りたあたしたち。
……言葉が通じない以上、勝手に道具を漁って盗ろうとしてるって思われないか心配だったけど、どうやら女神様はそんなことすら考えないようで。
ま、やろうと思えばいくらでも魔物倒せるんだろうし、そもそもここに来たときのあの大量のがあるしな。
あたしたちが、なんとなくで1か所に集め始めたのを見た彼女はもっかい空を飛び始め、
――ひゅんっ。
周囲の警戒を始めていた。
それはまるで、あたしたちを――いや、きっと、あたしたちを守るために。
「……どんだけ遠くまで見えるんだよ……」
「し、しかも、あんなに遠くまで届くなんて……」
あまりの理不尽さに頭が痛くなるけど、そういうもんだと思ってアレクと道具をかき集めていく。
「アルアー!」
「ノームー!」
「ぜえ、ぜえ……」
ちょうど道具を拾い終えたらしい3人が、嬉しそうに……キャシーは背丈こそあるけど、体力、リリーより無いからなぁ……両手いっぱいに抱え、ちょうど降りてきた女神様に向かって走っていく。
「けど、このままここに集めてていいのかなぁ……」
「……確かにな。 魔物がいっせいに戻ってきたらいくら女神様でも対処できないし、怒られないんなら上に上げた方が良さそうだ。 女神様も、寝てた場所だって分かりゃ怒らないんじゃないか?」
両手いっぱいの3人に走り寄り、なんとか「上に持っていこう」っていう意思を伝える。
「♪」
「~♪」
「……」
たぶんもっと役に立てるって嬉しいんだろうお姫様たち、そしてあの階段を何階層も上がるって気がついてげんなりしてるキャシー。
「大丈夫だって。 体だけは丈夫だからな、あんたの分もあたしが運んでやるよ」
言葉は通じないけどあたしも道具を急いでかき集め、キャシーを追いかける。
「こ、こんなに食べものまで……良く分かんないのも多いけど」
「まぁお姫様たちの食べ方見りゃ分かるだろ。 分かんなくてもおいしい匂いしてるんだから、口に入れちまえばおんなじだ」
「……そんな考えだから、おねえちゃんの料理はまずいんだよ……」
「アレクが味にうるさすぎるんだ」
そんな、ここに飛ばされる前の軽口を、ここに飛ばされる前みたいに弟と叩き合いながら――空を飛んでこっちを見てる女神様に感謝しながら、下から上までを何十往復もした。
◇
「キャシー、大丈夫か?」
「あ、アリス! 言葉が通じるのね! さっきはありがとう、荷物運んでくれて!」
「お前は戦ったことないって言ってたしな」
「あ゛ー……本当、体力の無さがねぇ……いつもはパパの車だったから」
「しょ、しょうがないよ……ぼくだって森に放り込まれたときはそうだったし……」
「この中で1番年上なんだし、せめて追いつけるようにはなりたいわっ」
往復後。
まだ下に残ってふわふわ浮いて、ときどき広間に繋がってる通路の中へ矢を放り込んでる女神様の元に戻ってきたあたしたち。
なんでかは分からないけど言葉が通じ直してるらしい。
「けど、さすがにその服じゃ寒いし、転んだらケガするだろ。 女神様が良いって言ったら、さっきの中にあった服とかもらったら良いんじゃね?」
「そうねぇ……完全ファンタジーな世界観で私ひとり現代の服装だし、それに――――――――――……」
「……あー、まーた通じなくなっちまった」
今回はあんまりにも短い時間だったけど……まぁしょうがない。
「――――――――――?」
「――……、――……――」
代わりにお姫様たちとは会話できてるみたいだし、あたしたちみたいにきょうだいが居るわけじゃないんだ、キャシーが誰かと話せてるならそれで良いよな。
たまたま女神様が見てきてるけど、言葉が通じるわけでもなし。
「んじゃ、残りの分も運んどくか」
「そうだね、やることないもんね……」
「これだけで……あたしたちなら何年分の稼ぎだからなぁ」
「明日は体、重くなっちゃうね……」
楽しそうに話している3人に、そんな3人を見ている女神様……と、肩の上のちっこいのを見たりしつつ、あたしたちは集めた道具を運ぶ作業だ。
……お、燻製肉。
誰が燻製にしてくれたかはわかんないけど、あたし、これ好きなんだよなぁ。
◆◆◆
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