381話 【再起動】
『「【しかしながら――今回の戦闘をもって、召喚に応じてくださった皆様の世界に最も近い魔界からの、通称「魔王」】」』
「……ハルちゃん……ノーネームちゃん……」
地上十数メートルのところで、あらゆる人々へ語りかける双神。
その表情は――無。
『「【その中でも最強の存在、及び近しい眷属たちのコアの消滅を確認。 復活には代償が伴い――元の力を獲得するには、相応の時間が掛かります。 皆様の世界で猛威を振るったほどの侵攻は――当面は、起きません】」』
【マジか!?】
【てかあれ本体だったのか……】
【そうか、Gの本体が……】
【ぷちっと……】
【事故で……】
【ひどすぎる】
【いや、俺たちにとっては幸運だったんだけどな……】
【草】
【魔王っていう肩書きの恐ろしさが消え去った瞬間だな!】
【大丈夫、ハルちゃん知ってる俺たちからすればとっくにだから】
【イモリだトカゲだとさんざんに言ってきた成果が、こんなところに……!】
【ま、まあ、言葉って大切だから……】
【Gだもんな!】
ざわざわ。
互いに顔を見合わせ、聞いた言葉を理解しようと試みる人々。
そして――歓喜の声が、数十万の声が、いっせいに湧き上がる。
【すごい音圧】
【万単位の人たちの叫び声だからね……】
【まぁハルちゃんたちに直接助けられた人たちだしな】
『「【さて、この地へお越しいただいた、私たちが観測できた範囲の人間――知性ある獣の皆様】」』
【!?】
【今私、唐突にハルちゃんたちに罵られた……?】
【話し方的にあり得ない語彙でどきっとしたわ】
【急な罵りに興奮したわ】
【草】
【上位存在アピか……】
【ハルちゃんが鞭振るってるイラスト探そっと】
【ああ、初期のキャラが不明だったころの……】
【草】
【最初はふわふわしてたからなぁ……天使とか女王とかいろいろと】
【けど、ケモノて……】
【何かの比喩表現じゃないかな……】
【ま、まあ、ハルちゃんノーネームちゃんからすれば、人間は下位存在だし……】
【そうそう、すごい翻訳機能持ってるらしいけど、翻訳は翻訳だし……】
『「【只今、惑星アルム――皆様の足をつけているこの地面を、再起動しています。 景色が変わりますが、皆様に影響はございませんのでご安心ください】」』
【再起動?】
【再起動て】
【もしかして:機械文明】
【マジか】
【まぁあんだけSFした町残ってるしな……】
【でも、惑星の再起動って……?】
【惑星ごと……】
【規模が違うんよ……】
【ていうかさ】
【ああ……】
【この星の名前……】
【「アルム」って】
【町の名前どころじゃなかった……?】
【子供たちが呼んでたアルとノーム……】
【もしかして:やっぱり】
【マジもんの神様だったか……】
【じゃあ、ハルちゃんたちって……】
【この星、そのものの……】
「……うわ、なんだ!?」
「空が急に」
「明るくなってきた!?」
天上で鳴り続ける鐘、そして町の建物を筋のように通っている光。
それ以外は月光の下よりも暗かった世界が、数十秒をかけて次第に明るくなっていく。
【空が】
【青い……】
【え、さっきまで星空とか見えてたのに】
【朝になった?】
【いや、再起動って言ってるし】
【あ、空 あの細い光が】
【あー、過去?のハルちゃんたちの光景で見た、この星の上空を包んでる細い糸みたいなあれか】
【あれがすっごくはっきりと】
【綺麗……】
しばらく続いていた地響きが、落ち着いている。
それに気がついたのは、違和感に空から地上へ目線を落としたるるだった。
「……あれ? えみちゃん、あっちの方……ほら、あっち。 あっちに……町とかあったっけ?」
「……いえ」
「さっきまで、光の矢に突き刺された巨大なモンスターが居たはず……ですが……」
「あ、おっきい結晶になって転がってる……けど、その先に」
【町!?】
【すげぇ、町だ】
【高層ビルが連なってるな】
【すげぇ】
【あ、別の方向……ほら、爺さんの見てる方】
【あー、こっちにもありますねー】
【でもずいぶんと小さい建物ばっかだな】
『「【休眠モードに入っていた都市を幾つか近郊へ起動しました。 皆様、傷が癒えるまでのあいだ、どうぞ最寄りの都市を好きにお使いください。 また、救出時に重症から死亡直後までの方々は、現在各都市で治療中です】」』
【ふぁっ!?】
【起動て】
【もはや何でもありなハルちゃんたち】
【しゅごい】
【ていうか、重症はまだしも】
【死亡って……】
【こんなことできる力があるんだ、死者蘇生すら……】
【ハルちゃんにノーネームちゃん……】
【もしかして:本当に神様】
【少なくとも、はるか上位の存在で――なのに下位の人間に対してこれ以上ないくらい愛情深い、神様だよ】
【まさに人類の母……】
【ママ……?】
【双子のママだぞ】
【何それ素敵】
【お前ら……】
【あ、そういやハルちゃんたちも、あの地下都市がそのまま地上に上がってきたっけ】
【あー】
【都市を……丸ごと、移動させられる技術力……】
【あんだけの都市を、ちょっと揺れる程度で……?】
【科学なのか魔法なのか分からないけど、すごいことだけは分かるな】
【けど、それじゃ、ハルちゃんたちは】
【もう……?】
【戻ってくれるさ】
【ああ】
【とりあえず最寄りの神社にお酒、奉納してくる】
【草】
【そうだな! おいしいお酒を見れば、いつも通りに戻るよな!】
【安心安定のアル中のハルちゃんにな!】
【ついでにハルちゃんにお酌したいノーネームちゃんもな!】
【草】
【なんか気が楽になった】
【だよな】
【急に涙が】
【やはりお酒……お酒は全てを解決する……】
【昔から言うもんな! 神様にはお酒だって!】
【もしかして:ハルちゃんたち、昔からちょくちょく来てた】
【来てそう】
【最低でも千歳だもんなぁ】
【たまに来てはお酒のお代にお手伝いとかしてそうだもんな】
【草】
【見える見える……ハルちゃんがそういうことするの……】
◆◆◆
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