375話 ごんっ

「ふぅ……ふぅ……」


「がんばって、ノーネームさん」


僕にしがみ付いて、僕と同じだけの体重を僕に預けてきてるノーネームさん。


もう顔を上げることもなくなって、すごい汗と熱が押し付けられてて。


けども――それが。


それが、この子の願いって言うんなら。


「あと……少しっ」


ぶわっ。


一気に魔力を注ぐと、ぶわんと膨らむ鐘。


【でかい】

【でかい】

【ていうか、もう空が見えなくね?】

【ハルちゃんの頭のカメラからは、もう真下しか見えないな】

【こわいよー】


【るるちゃんたちのカメラからだと……やっぱくっそでかいわこれ】

【もうこの町の何倍のサイズになってね?】

【なぁにこれぇ……】

【ハルちゃんたちのベルだよ】

【あの……どう見ても町を覆い尽くすどころじゃないサイズなんだけど……】

【しかも2個だぞ、2個】


【でも、ハルちゃんの金ぴかの方も、ハルちゃんとノーネームちゃんの金と黒のストライプの方も】

【めっちゃまぶしい】

【きらきらしてる】


【まるで太陽の無かった世界に出現した太陽……】

【これって神話?】

【そうだよ?】

【人類が生き残れたら永遠に語り継がれる御業だもんな】


【ダンジョンの最下層?でハルちゃんがぶち切れて鳴らしたベル……あれで本気じゃなかったのか……】

【まぁ今回はノーネームちゃん、魔力全部使えって言ってるみたいだし】

【ドラゴンも出てこなくなったし、打ち止めか】

【じゃあ、あとは見えてるモンスターたちだけだな!】


「……あ、どんどん地上が開けてってる。 みんな、強いなぁ」


何十メートル――や、もっと上だろうけども、上空から見たらよく分かる。


地上は、町を中心に人の輪がだんだんと広がっていって。

外から押し寄せてきてたモンスターたちは、次々と姿を消していって。


「これだけの人たちが集まれば、モンスターの大群でさえ。 ……勇気、出るね」


「ん……っ」


「大丈夫?」

「んぅ」


【ノーネームちゃんが】

【今ちょっとずり落ちかけた】

【ノーネームちゃんがんばって!】

【ハルちゃんも魔法の準備でお世話できないからなぁ】

【ノーネームちゃん……】


――じじっ。


「ノーネームさん?」


「あと」

「ちょっと」


一瞬だけ、ふと、ノーネームさんの体重が消えた。


そんな気がしたけども……きっと、気のせいだよね。


「……っと、できましたよノーネームさん」


しゅぽんっ。


息を限界まで吐き出すようにして魔力はすっからかん。


その瞬間から僕たちは、浮力を失う。


けども、


「ノーネームさん!」


「まえ」

「前ですね……行きますっ、ホーリー……」





「………………………………」


「………………………………」


【ん?】

【あれ?】

【ハルちゃん?】

【魔力切れで意識が?】


「……なるほど。 ノーム?」


「まえ」

「ん。 51683%か……行くよ」


きぃぃぃぃん。


「僕」は、「僕」の中の「コア」と接続する。


「認証――整合性チェック――クリア。 出力安定」


【?】

【ハルちゃん……?】

【なんか雰囲気が】

【声も顔も同じなのに……?】


魔力の残量がほとんどないからか、ちりちりとする視界。

ノームも実体を維持できなくなりかけてるし、早くやらないとね。


「でも……よし」


「僕」が腕を下ろすと――ふたつの鐘が、前方へと倒れていく。


「僕」の口は、勝手に動く。


「最終シークエンス――オールクリア――前後方、惑星防護壁解除――地上防壁展開。 全エネルギー伝達路、安全弁解除」


この星の奥深くが、目を覚ます。


魔力っていう始原があるから侵攻してきたやつらへの、せめてもの意趣返しにって――永眠させるつもりだった、この星を、起こす。


その起動装置は――あまりの巨体のために、緩慢な魔力の塊。

この星に比べたら小さすぎるけども、目覚ましとしては充分なはずだ。


「生成魔素・反魔素制御力、臨界点到達――管理守護者権限で最終セーフティロック解除」


惑星の中心へのアクセスも――何千年も放置してたにしては、すごく良い状態。


「目標――前方後方全方位転移陣計1万、惑星全土の魔界生物群4千万匹」


あのときは間に合わなかった、全てのシステム。


それは、準備されていた特大の攻撃のために、今。


「『アルム』ジャッジメ――――」


「僕」は、その攻撃を――――――――


『――貴様ら、良くも我ら魔王軍を! 聞いて驚け、我は第――』


「あっ」


『え?』


……振り下ろしてた鐘が、ちょうど良いとこに出て来ちゃった、あの懲りない魔王さんの頭上に――。


――――――――ごいんっ。


『          』


「……あー、ごめんね?」


『わ、我を出待ちしていたというのか……つ、次、こそは……』


「え、やだよ。 もう来ないでね」


――しゅんっ。


実にタイミングの悪かった彼をぷちっと潰しちゃったけども、鐘は止まらない。


――――――――そうして。


――りーんごーん。


りんごーん。


鐘が――ノームと「僕」……じゃないね。


ノーネームさんと僕の鐘が――惑星を、覆った。



◆◆◆



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