361話 最終フェーズへ

僕たちの周りには、僕たちみたいにひらひらふわふわしている人たち。


せっかく協力者が現れたんだ、それを使わない手はないよね。


「じゃあ、今出現したとこを……ノーネームさん」



【10】


【Ⅹ】


【111 111 111 1】


【1010】


【1】【1】【1】【1】【1】【1】【1】【1】【1】【1】



ぴこぴこと、いろんな表現で「10」っていう数を伝えてくれるノーネームさん。


それを見た羽の生えてる人たちは、相談しながらも両手を広げて突き出し――「10」っていう数を確認。


……あ、よく見たら指が3本の人から8本の人まで居る。


すごいね、人って。


そうしてすぐに彼らはばらけて集まり直し、10の集団に。


指が10本じゃなくても、どうにかがんばれば10進法の10は通じるんだ。


「じゃ、行きますよ」


――しゅいんっ。


そういえば最近は使ってなかった、光る弓だけでの攻撃。


輪っかの力を借りないから多くの敵には対応できないけども、集中力維持してそこそこの戦いするなら、これがいちばん。


これ、魔力の効率はいいし、何より使い慣れてた弓の感覚に近いし、何本でも同時に撃てるから便利なんだけども……さすがにここのところはモンスターの数が多くって使い道がなくって。


両手構えて、1回持ち上げて。


「んー、やっぱり弓を引くのは肩こりに良いね……特に和弓みたいに思いっ切り引き込むのはさ」


こう、普段は動かさない肩をぐりんっと動かせるしさ。


【草】

【ハルちゃん、弓は肩こり解消グッズじゃないのよ……?】

【ていうかハルちゃん、肩こるんだ……】

【幼女……まだまだ小学生中学生なのに】


【暇ができるとすぐにお酒と本にかじりついてるし、確かに目を酷使してるからな】

【割と眠くなってうとうとしてくるまで本にかじりついてるよね、ハルちゃん  タブレットだけど】

【わりと寝落ちしてるよね】

【かわいいよね】


【そういやあのタブレット……きちゃない袋さんから出してから1回も充電してなくね?】


【……ノーネームちゃんパワー?】

【きちゃない袋さんパワーかもしれないよ?】

【もうそれでいいや……】

【無機物が自律して動かなければ良い……動かなければそれで良いんだ……】

【草】


きりきりきりって矢を引き込んで――ひゅんっ。


発射された矢は、ちょっと真っ直ぐに飛んで――10に分裂。


僕の視線は10分割、それぞれの目標――たった今出現した、食べられそうな人たちの集団に向かって飛んでいく。


……あ、今度の人たちは地球の人かな?


なんかもう助けすぎて、ぱっと見ただけでどこの出身の人かってだいたい分かるようになってきた僕。


あ、モンスターにわしづかみにされてる人の服、確か去年かおととしに流行ってた服だ。


僕も一応は男――だったから、雑誌とかテレビとか、ファッションのも軽ーく見てたんだよね。


月に10分20分、本当にヒマなときだけだけども。

まぁ幼女になったから全部無意味になったんだけども。


あ、あの人の落とした荷物、知ってる作品のグッズ。


知ってるものを外国で目にすると、なんか嬉しいよね。

そういう気持ち。


ここは外国どころか異世界みたいだけどね。


『――――――――!』

『アル、――――!!』


矢が刺さる寸前に追加で見つけた、食べられそうな人の分でさらに20に分裂した僕の意識は、モンスターのコアにずぶりとめり込んだのまでを確認して僕の体へ。


羊飼いのお仕事を引き受けてくれた人たちは、もうとっくにそれぞれの集団にたどり着いていて、さっさっと危ない人から拾い上げてってくれている。


「自動化って楽だなぁ」

「らく」


きゅぽんっ。


「あー、らくー」

「らくー」


「飲みます?」

「のむ」


【ああ、呑兵衛女神さま】

【女神さまたちだぞ】

【ノーネームちゃんはただ付き合ってるだけだけどね】

【ハルちゃんに飲むかって聞かれたら断れないよね】


【ハルちゃんはアルハラ上司?】

【大丈夫、ハルちゃんはただ勧めるだけ  ノーネームちゃんが喜んじゃうだけだよ】



【♥】



「あ、これ好きですか? 焼酎って言うんですけど」


【草】

【草】

【ハルちゃんが勘違いしてて草】

【ノーネームちゃん、頭の上にもぴこって出してるから……】

【多分今の、俺たちに反応してたんだよな?】


【いいじゃん、ノーネームちゃんがご機嫌だし】

【かわいいがいっぱいでしあわせ】

【あの、どう見ても地球人が救出されているのも見てあげて……】





「!」


自動化で喜んでた僕は、索敵スキルが真っ赤になって酔いが吹き飛ぶ。


がばっと見上げた空には――無数の、黒い渦。


そう、あれはいつぞやに見たことのある――。


「ノーネームさん」


「さいしゅう」

「ふぇーず」


「……残りは?」


【4%】


「……なら、やるしかないですね……ぷはっ」


僕はただの会社員Aからダンジョン潜りBへ、そして無職Cから羊飼いDへと点々としてきた。


そして最後は羊飼いのお仕事も捨てて……なんだろ。


「まぁいいや、最後って言うんなら」


黒い渦が――そこだけは明らかに異質な漆黒で、多分魔王さんの自爆魔法とおんなじタイプだからきっと魔王さんがやってるんだろう。


空では、それから大量のドラゴンの群れが。


そして陸では――索敵範囲の外側が次々と空洞になって、目の前の空間へとモンスターたちが。


つまり、


「タワーディフェンスの最終段階。 ワープしてきた主力部隊の迎撃戦ですか」


「ん」


「げいげきしぇっ」


がちっ。


「………………………………」

「………………………………」


「……げいげき、せん」

「ですね」


……噛んで痛そうな顔したし、今も顔が真っ赤になってきてるから気づかなかったフリしとこっと。


こういうのってはずかしいもんね。


【かわいいいいい】

【かわいいいいいいいいい】

【かわいいいいいいいいいいい】

【草】


【ノーネームちゃん! 恥ずかしいからってないないよくない!!】

【これは私欲のないないだよノーネームちゃん!】

【私欲のないないってなんだよ草】



◆◆◆



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