356話 景色は大戦争

どぉん。


――どぉん。


ぎりぎり見えるくらいの遠い先で、明るい光がぴかぴか、少し経ってから爆発音がひっきりなし。


「せっかくだから遠くから囲んできてるモンスターたち叩いてきてほしいって言ったら、ほんとにやってくれるんだ……あー、楽」


さっきまで頭の上をうるさかった飛行機たちに、身振り手振りで「あっちお願い」ってしてみたら、本当にやってくれてるらしい。


ノーネームさんも【→】とかぴこぴこして意思疎通してくれてたし。


本当に便利だね、それ。

僕もほしい気がしてきた。


……頼めばくれそうな気もするけども、ノーネームさんのアイデンティティー的なものだし、それを取っちゃうのもかわいそうだし。


それにしてもどんぱちしてて気持ちがいい。


弾とか燃料とか大丈夫なんだろうか。


それにモンスター相手なんだ、無理はしないでほしい……けども、よく考えたら飛ぶモンスターは最初に倒し尽くしてあるからやりたい放題なんだよね。


乗ってる人とかがケガしないんなら、まぁいっか。


「制空権確保ってやつだしなぁ」


特に、何かでっかい飛行機からはひたすら爆弾が落ちてってるみたいで、モンスターたちが吹っ飛んでるのがなんとなく見えて爽快。


【制空権(女神2柱】

【制空権(飛行系殲滅】

【制空権(ホーリージャッジメント】


【豪華ってレベルじゃない戦力だもんなぁ】

【しゅごい】

【見ろよ、遠くで空爆してやがる……】

【画面が暗すぎて加工しないと見えない】

【リアルタイムで加工してくれてる、配信の配信見てくれば?】


【それにしても異世界で人類……人類?の軍がモンスターを空爆って……】


【なぁにこれぇ……】

【これ、11年前のみんなに見せてやりたいな……】

【その11年前の人たちが、ここに居るんだろ?】

【その人たちが、現地で……目の前で、この圧倒的な戦力をな】

【何それ素敵】


【ノーネームちゃんの粋な演出だからな!】

【きゅんっっっっっっっ】

【草】

【えぇ……】

【ノーネームちゃん! 目の前の戦いに集中しなさい!】


――――――どぉんっ。


「えっ」


なんかすっごい爆発起きてるんだけど……大丈夫?


ノーネームさんは……平気そうな顔してるから大丈夫なんだろうけども。


【ひぇっ】

【あの、今のって……】

【でかいきのこ雲……まさか……】

【さ、さすがに大量破壊兵器じゃない……はず……?】

【この距離でやらかすはずはないから……】

【だといいね……本当に】


たぁんっ。


「ま、こっちも忙しいから、少しでも包囲が遅くなるならいっか」

「いい」


僕たちは、いつも通りに食べられそうな状態で召喚された人たちを救出。


どのくらい経ったのか分からないくらいにはおんなじ作業してて、もはや時間の感覚もない。


ただただ、近くにポップする集団に突撃しては救出してを繰り返すだけだ。


「子供……いや、神様……?」

「ありがとうございますありがとうございます……」

「なんまんだぶなんまんだぶ……」


「はい、この人たちもお願いしますね、みんな」


『ん!』

『あるあ……♥』


【ハルちゃん! 今の人たちハルちゃんに感謝してたよハルちゃん!】

【普通にしゃべってたよハルちゃん!】

【後光が差しすぎてお釈迦様と勘違いされてたよハルちゃん!】


【忙しすぎて完全に気が付いていないハルちゃん】

【もう3時間くらい休みなしだからねぇ……】

【いかん……のんびりなハルちゃんが過労死してしまう……】

【草】


【被害者名簿で確認取れた  やっぱこの人たち、11年前の大侵攻の最後の方で亡くなったはずの人たちだわ】


【マジか】

【この配信でまたこっちが大騒ぎになるな】

【大騒ぎ(同接40億突破】

【せ、政府とか軍関係で複数回線ずつ接続してるのもカウントされてるから……】

【そうそう、そっちですごい数になってるだけだから……多分】


【SNSとかでも次々と遺族のはずだった人たちが】

【ハルちゃん配信の配信してた配信者が遺族だったらしく、泣きながら感謝してる】

【もらい泣きしちゃったわ】

【11年……ようやく諦めて振り切れるようになったころにこれだからなぁ】


【またハルちゃんの伝説が……】

【神話だろ?】

【神話(現在進行形】

【人類史が続く限りには神話として残るな!】

【しかも明らかに地球以外の世界もっていうな……】

【異世界にもハルちゃんたちの神話が拡散していく……】


【でももうかなり助けてるよな】

【てことはそろそろ……?】


【もしこの人たちが本当に亡くなった……いや、亡くなるはずだった人たちの救助作戦なら、少なくとも地球からの人たちの分はそう遠くないうちにひと段落つくか?】


【いや、最後の方で滅びた国がいくつかあるから……】

【あー】

【え? 全部??】

【……全部助けるつもりなの? ノーネームちゃん……】


【あの、それ、この町に収まる人数じゃ……】

【ていうかそんなにないないできたんだ……】

【ないないの容量すごくない?】

【いやいや……いやいや】


【嬉しいけど……】

【ハルちゃんが……】

【過労でアル中になっちゃう……】

【大丈夫、もうなってるよ】

【大丈夫、女神様だからへっちゃらだよ】

【草】


【百万とかそれ以上の単位の人間……無理じゃね?】

【百万どころじゃないぞ、国が崩壊して被害が分からなかったところのも含めると、追加で最低でも千万単位だぞ】

【ひぇっ】


【ハルちゃんとノーネームちゃんが何日寝ずにやっても追いつかなさそう……】

【ハルちゃんたちへの負担がでかすぎるしなぁ】

【けど、こんなに素早く動けるのはハルちゃんたちくらいだし……】


――――――どすん。


「おー……でっかい」


でかい。


そんな感想が、陸上に出現した平べったい、いわゆる空母――ただしさっき見たのの何倍のでっかさ――ぽつりと漏れる。


【あの、さっき出てきた合衆国の原子力空母の……】

【……甲板、10倍くらい広い……いや、それ以上……?】

【ヘタすると10キロに届く長さの航空甲板……?】

【えぇ……】


【もしかして:異世界やばい】

【やばいね】

【でっっっっか】


【あ、でも飛行機はそこまででかくない】

【甲板とか走ってる人のサイズは同じくらい?】

【こうして見ると、人間……知的生命体で2足歩行で、俺たちとそう離れてない見た目のは同じくらいのサイズなんだな】

【低くて小学生並み、高くても……やっぱ地球人の範囲だしなぁ】



◆◆◆



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