348話 ノーネームさんの作戦
「ほんとう」
「うん、本当」
「ほんと?」
「本当だよ」
何度も確認してきて、その姿がまるで子供みたいで。
何回か聞いてようやく納得したのか下を向いて、ちょっと考えた彼女。
でも、そこからもっかいこっちを見てきた瞳は――何かを決めていて。
【情報開示】
ぴこん。
頭の上で、文字が浮かぶ。
やっぱり恥ずかしいらしい彼女は、これまで慣れてる話し方で告げてくる。
【死】
【絶滅】
【消滅】
【救出】
【悪夢】
【難易度】
【書換】
【複数】
【時空】
【可能】
【用意】
「……ふたり、と」
ぽつり。
「みんな、いる。 できる。 ……する?」
真剣なノーネームさんが、言う。
ノーネームさんは、説明が足りない。
ごく自然に、テレパシーで通じてるって誤解してる節がある。
だから、今の説明でもあいかわらずによく分からない。
けども、ノーネームさんは真剣だ。
ノーネームさんなりに、真剣なんだ。
なら、
「ノーネームさんは、したいんですよね?」
「したい」
僕が聞いたとたんに、食いつくようなお返事。
……もう、決まってるんじゃん。
そういう人間くささ、やっぱり好きだよ。
「じゃ、しましょっか。 できそうなんですよね?」
【79%】
「ひくい」
「まだ」
「じゅんび」
「ひつよう」
「……、でも」
「じかん」
「たりない」
「成功確率ですか……充分ですよ。 ノーネームさんにとって、大切な人たちなんでしょ? それでも言うってことは、今、したいんでしょ? なら」
もっかいぎゅっと握って……なんだか僕たちを食い入るように取り囲んで見つめてきてた子供たちの顔も見て、安心させるように。
「ノーネームさんのしたいことなら、言ってください。 僕たち、みんな協力しますよ。 友達、ですから」
友達。
ごく普通の学生時代を過ごした男だった僕にとっては数は少なくって。
けども、知人の先――友達って呼びたくって、けども僕の気のせいかもって迷ってる人は、居た。
その人たちとは――多分もう、友達からは離れている。
けども。
でも、きっと。
今は。
今は、ノーネームさんともこの子たちとも、これだけ長く一緒に居るんだもん。
この関係は――「友達」、で、良いんだよね、きっと。
や、もしかしたら戦友とかそういうのになっちゃってるかもだけど……いずれにしても、友達には関係ない。
「とも、だち……」
「そう、友達。 ね? みんな」
『とだち?』
『とも……ち』
『ともだち!』
『ともだち!』
『ともだち……♥』
「うん、みんな友達。 だから、協力しますよ」
「………………………………ん」
こくり。
ちょっとほっぺたを赤くして、ちょっとだけ光る瞳を落とすノーネームさんは――まるで、本物の人間の女の子みたいで。
【 】
【 】
【 】
【 】
【 】
【尊すぎる】
【心臓止まりかけたわ】
【俺も】
【涙が止まらない】
【良かったね 爺がないない中で】
【AEDもあるし、くしまさぁんも居るから大丈夫じゃない?】
【草】
【いまいいとこ! いまいいとこ!!】
【泣ける流れだったのに……】
【始原だからね……オチになるのはいつものことなんだよ……】
「……たわー、でぃふぇんす」
「みっしょん」
「ついか」
するって決めたらしいノーネームさんが、告げてくる。
「ほご」
「しょうかん」
「ごえい」
「何かを召喚するから、それを護衛……? まぁ大丈夫でしょう、敵はまだ」
「わーぷ」
「――――――っ!?」
索敵スキルへ、いきなりの反応でぞわっと泡立つ。
ばっとミニマップの真っ赤になってる方面へ顔を向けると――。
【うへぇ!?】
【なぁにこれぇ……】
【さっき……さっきカメラがこの方向映したときは……】
【……確認した 15秒前までは、ただの荒野だけだ】
【なのに……】
「……モンスターの、地上戦力。 なるほど、この状況で護衛する存在が――――――」
『――――――!!!!』
『!? ――――――!』
『――! ――――――』
「――――――――――、え」
子供たちが反応しようとしているのを感知しながら、僕の中の時間は引き延ばされながら動いていく。
ビルから堕ちるようにして羽を伸ばして展開、加速。
今は、1秒でも惜しい。
だって、
【……人!?】
【人だ!?】
【たくさん居る!?】
【マジで人!?】
【え、でも、ノーネームちゃん、みんな死んだって】
【いやいや、生きてる! 生きてるぞ!】
【えっと……数十人は居るな】
距離のあるそこへ、僕は認識できる最小限の時間単位で近づいていく。
――遠すぎて何をしゃべっているのかは分からなくとも、モンスターたちを目の前にして、本能的な顔をしている人たちを見れば、どんなことを叫んでいるのかなんて、誰だって分かる。
「――ノーネームさん! そっちはお願い!」
多分彼女なら、こうして離れていても分かってくれるだろうっていう根拠のない勘任せに叫び、頭の輪っかを目の前へ。
「ホーリー、」
最近はとにかく広範囲高威力で使っていたこれなら、ノーモーションで――銃よりも早く、確実に、かつ複数ヒットを狙いを定められる。
索敵スキルを極大まで透き通らせて、そこに居る375の物体を――人間とそれ以外に識別。
誤射っていう絶対にしちゃいけないのだけは、しないように。
けども、今にも食べられそうな人たちを助けられないことのないように。
「――ジャッジメント」
僕は、この魔法を「初めて」直接に、人を助けるために行使した。
◆◆◆
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