347話 何か言いたげなノーネームさん

「今の魔力は……結構使ったから、良くて半分。 これで敵の航空戦力が補充されないなら楽だろうけども……補充される前提で行かないとね」


起き上がって、みんなと一緒に体を動かして寝起きはすっきり。


「さてみんな、今日も……ん? なんですかノーネームさん」


起きてからも、子供たちと一緒に張り付いてきてたノーネームさんが、まだ手を握ったままで。


それは普段のことなんだけども、今日はなんだかぐいぐい引っ張って来ている。


この子、無口だから言いたいことあるときは先にこうするんだよなぁ、いつも。


そういう子って、確か小学生くらいまではよく居た気がする。

覚えてないくらいには子供のときまでだけども。


まあ当然か、男でこういうことするのってそんなに居ないし、女の子なら居たかもしれないけども、僕は男だったからとうぜん女子は寄りつかなかったし。


「ノーネームさん?」


「じょうほう」

「かいじ」


「する?」


ノーネームさんは、手を繋いだまま……や、僕の前に来て、もう片方の手も催促して。


両手をぎゅっと握りしめて――多分ぴったりおんなじ身長でぴったりおんなじ目線で、瞳と気の色だけが違う、僕のそっくりさん。


まるで鏡を近くで見ているような気分になる。


【ガタタッ】

【お? ちゅーか? ついにちゅーするのか!?】

【あの、それ以上のこと、多分ノーネームちゃんが一方的にしてるんですけど】

【寝てるときに襲うとか……ノーネームちゃんでなければ許されない行為したもんな!】


【自分を産み落としたもんな!】

【もしかして:ノーネームちゃんは経産婦】

【!?!?】

【ガタタッ】

【ひどすぎて草】


【いや、産まれ直したから体は経産婦じゃないぞ】

【でも産んだんだよね……?】

【産んだね】

【やっぱり経産婦じゃないかかかかかかかか】

【えぇ……】

【ノーネームちゃん、ないないするくらいならはっきり証明して……】


【ばか、寝てるときと起きてるときは全然違うんだよ、なんにも分かってないな  だよな? ノーネームちゃん】


【そうそう、反応が無いのも良いし、ちょっとだけ薄い反応があるのもまた最高なんだ  な? ノーネームちゃん】


【後で「あれ?」って不思議な顔されるのが良いんだよな?】

【俺たちは同好の士で友達だよな?】


【お巡りさんこの人たちです今すぐに身辺調査してください何か絶対悪いことしてます】


【こわいよー】

【怖すぎて草】

【ガチの発言過ぎて草も生えない】

【うん……こんな一瞬でこんな文章書く時点でね……】

【ひでぇ!?】

【ひどくないよ、正義の通報だよ】

【草】


【大丈夫、もう把握したから】

【えっ】

【抵抗するといろいろ罪状が増えるから、おとなしく投降してね?】

【草】


「……ノーネームさん?」

「んぅ」


目を合わせたり逸らしたり。


迷っている様子のノーネームさん。


……うん。


そういうところが、人間臭くて好きなんだ。


「ノーネームさん、言いたくないなら言わなくて良いんですよ」


きゅ、って手を握り返して、語りかける。


『………………………………!!』

『ある……のむ……!』

『はぁ……はぁ……♥♥♥』


【子供たちステイ】

【子供たちシャラップ】

【あの、白髪妹ちゃんの息が荒くて】

【気にしてやるな】


「――人間は、秘密のままにしてることも多いですし、嘘をついたままだったりすることも多いんです。 僕だって誰にも言わないこともありますし、嘘もついたことがあります。 人間なんて、そんなもんです」


じっ。


僕が話しかけると、いつでも必ず僕の瞳を覗くようにして――彼女の紅い瞳が向かってくる。


「ノーネームさんは、悪い人じゃない。 秘密も多いですけど、僕たちとかを嫌な目に遭わせようとしてのじゃない。 それが分かってるので、良いんですよ」


「………………………………」


【ハルちゃん……】

【ままぁ……】

【これはママだわ】

【すべてを許す……天使か】


【女神だよ?】

【人類の母……】

【慈母の女神……】

【敵には苛烈に、守るべき人間には母として……】


【お前たちもようやくハル様の慈悲深さが分かったか】

【始原は黙ってて?】

【生えてるお母さんって良いわよね!】

【姉御も黙ってて】

【始原がとにかく邪魔】

【草】

【総スカンで草】



◆◆◆



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