332話 神話の戦い 4
「……すごい……」
「ええ……」
「あのブレス攻撃をはねのけるどころか……」
「魔王軍にまで……」
地上付近からの、黒と金の螺旋。
それは皆を絶望に叩き落とした赤い矢を軽々と飲み込み、そのままさらに上空へ上空へと加速をつけて飛翔。
さらに回転も加速し、ほんの数秒で黄金の光1色に混ざり合った、地上からの「矢」――それは、地上から離れるほどに勢いを増し、太く、長く伸びていく。
『GAAAAAA――――――――――!?』
これほどの反撃が来るとは想定もしなかったのだろう、ドラゴンたちは明らかに動揺し――瞬間で、純粋なエネルギーに飲み込まれる。
もはやバリアも意味をなさず、数も意味をなさない。
地上から放された、合流して1本になった、光の矢。
それは――数十秒の間、惑星に降り注ぐ恒星の光量をも上回り、世界は白金と漆黒に分断された。
【うおっまぶし】
【見えない】
【また何も見えない】
【光量が高すぎてカメラが真っ白】
【俺たちはもう何も見ることもできずに……うぅ……】
【草】
【情緒を破壊された末路だ……そっとしといてやれ……】
【でもさ、今の】
【ああ……!】
【金色と黒の、しかも】
【同時攻撃】
【間違い……ないよな?】
【だと思うけど……】
【ハルちゃんとノーネームちゃんは?】
【まだすやすや】
【草】
【寝息配信は続いてるな!】
【癒やしなはずなのにどうして……】
【でも、ハルちゃんたちは寝てる……じゃあ、あれは一体……?】
次第に、恒星からの光をも遮断する攻撃が収まってくる。
――目が慣れてくると、その威力がはっきりと刻み込まれたのが映される。
「あ、あれ……」
「雲が……ものすごい範囲の雲が、消えて……」
「それに、魔王軍も半壊じゃな」
「ちりぢりになって……撤退してる……のかな?」
【しゅごい】
【たった1発で】
【あの、でも、なんかさっきまで居たはずの神様女神様たちも……】
【草】
【あ、大丈夫だったわ、ちゃんと吹き飛ばされて落下中なだけだったわ】
【それはあかんやつなのでは……?】
【フレンドリーファイヤはダメ絶対】
【と、とりあえず、残ってた人たち……人たち?は動いてるから生きてるっぽいし……?】
【でも、やっぱ今の攻撃……】
「――――――――――ハルちゃん!?」
地上からの攻撃、その発射地点と思しき場所。
大地が「数十キロに渡って」陥没し、巨大なクレーターの形成された場所。
そこには、2人の少女が。
2人の少女が、対になる少女たちが――並んで、立っていた。
「ハルたんふべぅっ!?」
「興奮しすぎです三日月さん精神安定剤ぶち込みますよ」
【草】
【やだ、くしまさぁん過激】
【くしまさぁんおこ】
【すげぇ、前衛でレベルも高いえみちゃんを平手で……】
【え? 女神でも怒ることあるの?】
【ハルちゃんに邪な気持ちを抱いたらしいからな……】
【もしかして:えみちゃん、ないないされる条件ばっちり満たしてる】
【草】
【やっぱ3人がないないされた原因えみちゃんじゃねーか!!】
【えみちゃん……どうして……】
【それでも俺はえみちゃんを応援するんだ 同志として】
【お巡りさん、えみちゃんファンクラブのメンバーリストです】
【ひでぇ】
【犯罪者予備軍リストで草】
【草】
「ふむ……大気圏外から地表を。 人間の視力では確認することもできないはずの存在を、けれども確かに儂らは目にしておる。 ……そして」
ざっ、と、見えない床に伏せる老人。
「――ハル様、ノーネーム様。 我ら生ける存在をお助けくださり、感謝の念に堪えませぬ」
【草】
【すげぇ……この爺さん、これ以上ない土下座してるぜ……】
【ああ……】
【こんなに美しい平伏の姿は初めて見たよ……】
【ああ……】
地表――から数キロ下の、クレーターの中心。
そこで――手と手を繋いでこちらを見上げているのは、「ハル」と「ノーネーム」。
金髪に黒髪、碧眼に紅眼、白色の羽に漆黒の羽、白色の衣に漆黒の衣。
完全に同じ顔で、完全に同じ体で、けれども正反対の「少女」2人は、
『迎撃』
『完了?』
『うん』
【ハルきゅんのボイス!!!】
【姉御うるさい】
【姉御どっか行って】
【姉御さよなら】
【ひどい!!!】
【草】
【あれ、でも、なんで2人の声が聞こえるんだ?】
【しかも、ハルちゃんの配信では……】
【2人とも、すやすやしてるよな……?】
【じゃあ、この光景は……】
「リアルタイム、ではない。 そういうことでしょうか……?」
「? だって今、2人とも目の前……遠いけど……居るよ? ハルちゃん、ずっと探してたハルちゃんが、あんなに近くに居るんだよ?」
見えない球体に両手を、体重を乗せて、1センチでも近づこうと張り付いている、るる。
「落ち着いてください、るるさん。 視聴者の人たちによると、どうやら今この瞬間のハルさんたちは眠っているそうです」
そんな彼女を警戒してか、真横に立つちほ。
「……ハルたんが2人居る可能性は!! あの女神な幼女が2人!! いえ、それどころかノーネームたんも2人まとめて4人の幼女をぜひくまなくたんの――――――――――」
ふっ、と。
4人の存在が、消えた。
【!?】
【えっ】
【えみちゃん!?】
【おいじじい、どうした!?】
【auto nai-nai】
【草】
【悲報・やっぱ3人、えみちゃんのセクハラのせいでノーネームちゃんおこでないないされてた】
【しかも今回はこんな重要そうな場面で爺さんごと……】
【えぇ……】
【えみちゃん……どうして……】
【えみちゃんはないないされた人間の代表なんだよ】
【俺たちの代表……ならしょうがないか】
【草】
【え? これでおしまい??】
【えぇ……】
【あの、これ……全世界生中継……】
【※大半の国家、ネットにアクセスできる人、深夜帯でないところのほぼすべての人が見てました】
【草】
【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】
【朗報・えみちゃん世界デビュー】
【朗報か?】
【朗報だろう 多分】
【いやいや……いやいや】
【あ、画面が】
【4人の配信が止まった……】
【え? これどうすんの……?】
【んにゃぴ……】
【……とりあえず今から検証班とか有識者がものすごい会議するはずだから、そっちの配信見よう……】
【なんかもう疲れたから、俺、ハルちゃんたちの寝息配信で仮眠取ってくる……】
【俺も……】
【ハルちゃん、助けて……】
【ノーネームちゃん……】
【幼女に癒やしを求めに殺到する視聴者たち……】
【阿鼻叫喚とはこのことか……】
【えみちゃん……割と重症だったのね……】
【でもそんなえみちゃんが好き……】
【分かる】
【むしろ好きになった】
【気をつけろ、今この瞬間からその宣言は非常に危ないものになったぞ】
【草】
◆◆◆
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