289話 気持ちの良い夕方(多分)

こちらは本日2度目の投稿です。



◆◆◆



爆発の罠を起爆させて、隣の落とし穴の罠を展開。


久しぶりだったけども、ちゃんと石の軌道は落とし穴へも届いて――ぽこっ、と、地面に半径2メートルくらいの穴。


「……普段の半分くらいのサイズ……火薬の量が少ない? 落とし穴の罠自体がちっちゃい?」


近づいて――フチのとこが崩れてないだけかもだから、慎重に。


羽を少しだけ動かして、いざ足元が崩れても飛び立てるようにして、観察してみる。


「……それとも……ダンジョンの構造。 そのものが、普段のよりも頑丈……なのかなぁ」


【ひぇっ】

【えぇ……】

【あの、そもそも床だって普通のやり方じゃ非破壊オブジェクトなんですけど……】

【大丈夫? ハルちゃんだよ?】

【そうだった……】


【モンスターも多ければ広いし、構造もこっちとは違う……そりゃあダンジョン自体も強いのか】

【あー】

【ダンジョンの本場?だもんなぁ】


【地球は辺境だったのか……】

【ド田舎って、ダンジョンも大抵しょぼいもんなぁ】

【そしてそんな世界で覇権を勝ち取ったらしいイモリ】

【魔王軍……】

【ハルちゃん早く帰ってきて!!】


「まぁいいや、じゃ」


しゅんっと取り出したのは、光る弓矢。


「魔法は」



【✕】


【✕】【✕】【✕】【✕】【✕】【✕】


【オネガイ】



「……次はちゃんとやるのに」


【草】

【ノーネームちゃん、渾身のガード】

【よくやった】

【むくれてるハルちゃんかわいいいいい】

【魔法使いたくってうずうずしてるな!】


【ちょっとくらい良いんじゃない?】

【良いと思うか?】

【一面が真っ赤に融解するか銀色のとげとげになるぞ??】

【こんな場所から撃ったら、下手すりゃ下の階層丸ごと……】

【ごめん俺がどうかしてたわ】

【草】


【ハルちゃん……多分、今より弱いはずの幼女モードになったら使っても良いだろうから……】

【それまではがんばって我慢してね? お願いね??】


きりりりり……しゃらんっ。


綺麗な音が爆ぜて、金色の光が穴の中へ吸い込まれていく。


【なんか音、変わった?】

【変わったな】

【もしかして:ハルちゃん、未だに成長してる】

【えぇ……】

【やめて……もう充分でしょハルちゃん……】


じっと目をつぶって、矢の先端にカメラがあるみたいな視点になる僕。


「……む、分岐……視点を4つに分裂……あ、なんか行ける」


かなり速いはずなのに、僕の頭が追いつける速度で下の階層の空中を飛翔している矢。


分裂させたら視界が4つに分裂して、それぞれで真っ黒な通路の中をひゅゅんって突き進んでいく。


『……ある?』

『あるあ……?』


「大丈夫。 ちょっと待っててね」


『だいじょぶ』

『まって』

『ん』

『のうむ?』

『あるー』


【そういやこのハルちゃん、何やってるんだろ】

【さぁ?】

【矢が進む音とかモンスターや壁に当たる音で状況を判別してるんじゃ?】

【え、でも、ハルちゃん、500階層のときに矢の先が見えるって言ってた気が……】


【ここまで降りてくる前も、上の階層から吹き抜けに向かって殲滅してたよ?】

【えっ】

【ごめん、あまりのインパクトで忘れてたけどそうだった】

【草】

【分かる】

【記憶までないないされたか……】


【そこまで行くと、もうただの長距離攻撃手段じゃないんよ……】

【それな】

【もはやあれだ、無人機で攻撃するときの操作画面的な】

【あー】

【それを自前でやれるのかハルちゃんなのか……】

【遠距離攻撃を司る女神だからな!】


しばらく進んだ先にモンスターが現れ始め、そのたびに――感覚で矢を分裂させ、攻撃し、どんどんとマッピングをしていく。


「……よし」


今回は、ただ試してみただけ。


だから適当にモンスターが集まってる部屋にぶつかった矢から、ばーっと弾けさせて適当に全体攻撃しといた。


今日の終わりか明日の初めに攻略するんだ、それなりに数減らしとけばさくさく進めるよね。


「終わったから、このフロアの残りも行っちゃおっか」


『ある♥』

『あるて♥』



【H-ARU♥】



【草】

【待てノーネームちゃん、ハルちゃんの表記はそれなのか!?】

【なにげに初めてじゃね?】

【一応何回かそれらしき呼び方はしていたが……】

【「推し」とかっていう表現の方が多かったよな……?】


【しかし子供たちが嬉しそう】

【嬉しそう】

【でもさ……なんだかハルちゃんを呼ぶ声に、色が混じっている気がするのは気のせいか……?】

【やめよう?】

【そうだよ、よくないよ】

【草】





「じゃ、今日はここでキャンプだ」


『ゃんぷ』

『ゃんぷ!』


【やっぱ発音体系が違いすぎる】

【むしろどうやって発音してんの、やんぷって】

【分からん……】

【んにゃぴ……】


【あ、んにゃぴと似てるかもしれん】

【んにゃぴ……マジだ!!】

【んにゃんぷ?】

【んにゃんぷ!】

【草】

【コメント欄が子供たちになってる……】


このフロアも無事クリア。


で、道中で見つけといたそこそこの広さの部屋に戻ってきて、もはや「キャンプ」って言えば子供たちが流れ作業で準備してくれるようになってて楽な時間だ。


「このくぼみが良いんだよ、このくぼみが」


【草】

【ハルちゃんのこだわり】

【元野良猫だからな、巣作りは大切だよな!】

【どっちかって言うと鳥とかでは……?】

【いいの、野良猫ハルちゃんってかわいいじゃん】

【なるほど】


僕はくぼみ――今日のは高さ10メートルくらいの、確実に安全なやつだ――まで羽を広げてひとっ飛び。


そこへ、にゅるんっときちゃない袋さんからいつものセットを取り出して置いていく。


「本当に楽になったなぁ」


【やっぱ収納袋って便利すぎるんよ】

【しかもきちゃない袋さんは無尽蔵だからな!】

【きちゃない袋さんを崇めよ!】

【大丈夫、ハルちゃんが主神ならきちゃない袋さんは主神に使える天使とかだから】

【えぇ……】


【じゃあ何? きちゃない袋さん、天使なの?】

【草】

【まさかの天使で草】

【きちゃないのに……?】

【大丈夫、ハルちゃんがつけてくれた汚れもあるから】

【それは大丈夫なのか……?】


【え、じゃあきちゃない袋さん、羽とか天使の輪っか生えるの?】

【えぇ……】

【想像したら草】

【やめて……マジで生えそうだからやめて……】

【無機物の天使とか恐ろしすぎて草枯れる】


「あとは、あの子たち」


羽をばさり――羽ばたかなくても飛べるんだけども、気分でね――羽ばたかせた僕は、地面で待ってる子供たちの元へ。


「今日は誰からー?」


『ん!』


「黒髪の弟さんだね。 しっかり捕まってて」


『ん……ある……』


【うらやましい】

【羨ましすぎる】

【そういや諸兄、あのショタっ子がハルちゃんに抱きついたりお風呂入ってるのは良いの?】


【大丈夫、ショタは男にカウントしないから】

【見た目も男の娘だしな】

【むしろいい】

【むしろ滾る】

【<URL>】

【姉御……お前……】



◆◆◆



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