233話 上の階層へ

「もむもむもむもむ」


こういうパンとスープって食事……なかなか悪くないね。


冷たいけども、高級な料理ってあえて冷たいのが出ることあるって言うし、そういうもんだと思えばそういうもんだって思えてきた。


『――――――、――……』

『――……』


子供たちは……え?


【泣いてる……】

【ロリたち……】

【私のショタが泣いている!!】

【しっしっ】

【姉御、なんで出禁にならないの?】

【始原っていうハルちゃんのお気に入りだからなぁ】


【けど……この子たち、多分食事すら……】

【あー】

【ハルちゃんが来るまでは……何食べてたんだろうね……】

【モンスターからのドロップ期待できないとなれば、地面に落ちてるのを探すしか……】


【それも、見つかったら大ケガ以上確実なモンスターの周回するダンジョン内で】

【1日に1個ゲットできたら御の字だったんじゃないかなぁ……】

【かわいそう】

【かわいそすぎる】


【着の身着のまま放り出されたサバンナで生きてくようなもんだしなぁ】

【この安全地帯の洞窟見つけるまではマジでそんな感じだっただろうなぁ】

【地獄かな?】

【そう思うと、このハルちゃんってマジで救世主だな】

【ハルちゃん自身はなんとも思ってないけどな!】

【草】


みんなが食べながらえぐえぐ言ってる。


……そんなにマズいかなぁ。


確かに、パン屋さんとかで買うのより匂いも無いし、もそもそしてるし……そうだ、ダンジョン落ちの食べものとか、おいしくないから食べるの止めたんだもんなぁ。


「まずはご飯かぁ……たくさん狩って、おいしいのドロップするモンスター探さないと……」


【モンスターさん逃げてー!】

【マジで逃げて  逃げて】

【ハルちゃんに食べもの目当てで狩られるモンスターたち……】

【ハルちゃんならマジでやりかねない】

【ああ……!】


数日前の買い置きを、めんどくさがってそのまま食べるみたいな朝食。


なんか我慢した、すすり泣きの響く朝食。


……うん。


まずは、食べものだけでも良いもの探さないとね。

おいしいってのは、嬉しいものだから。


いちど面倒見ちゃった以上は、最後まで。


よく、そう言うでしょ?





『あるあー』

『のうむっ』


言葉が通じない以上、お互いに何をしたいかとか何をするとかの意思表示は難しい。


目の前に物があればなんとかなるけども、そうじゃなきゃ手を引いたりして連れてくくらいが精いっぱい。


【ハルちゃん、どこ向かってるんだろ】

【さぁ……】

【やめて……またなにかするのはやめてハルちゃん……】

【おろろろろろろろ】

【草】

【情緒を壊された視聴者だ……そっとしておいてやれ……】


だから、朝ごはんのあとに散策しようと……したんだけども、子供たちは僕のあとにぞろぞろとくっついて来ちゃう。


別にあの部屋でごろごろしててもいいのにねぇ……止めようとしても聞かないし。


ちょっと散歩して、帰りに適当なモンスターとか狩って新鮮な食べものと飲みものくらいは持って帰ってくるだけなのにね。


【しかしこの通路、迷宮みたいだな】

【アリの巣みたい】

【それだ】

【しかし狭いな】

【子供サイズでちょうど良い広さか……】

【大人だと中腰で進まなきゃいけなさそう】


ぐねぐねうねうねしている通路。


僕は今、なんとなくで上の方を目指して進んでいる。

「上ってどっち?」ってこの子たちに聞いても伝わらないし。


進んでみて上り坂があったり登り階段があったりしたらそのまま登って、下りが出て来たら引き返すって感じでかれこれ30分くらい。


子供たちも素直に着いてきてくれてる。

だから、こうして好き勝手に進んでるんだ。


……そうじゃなきゃ、帰り道分かんないもん。


子供たちは甲高い声で話し合いながら楽しそうだし、多分まだ帰り道は分かるんだろうね。


ところどころの壁に矢印が掘ってあったりするのはきっとこの子たちのなんだろう。


【しかし長いな】

【どこまで続いてるんだこれ】

【さぁ?】


【昨日ハルちゃんが吹き抜けから見上げてたのを解析した結果、地面から天井まで最低20階層くらい  そこから床の厚み考えると二十数階層ってことだが】


【脚疲れそう】

【まぁ子供なら大丈夫でしょ、体軽いし】

【それにダンジョン内だからな、レベルさえあればある程度楽なはずだし】


【……子供たち……レベルいくつ?】

【さぁ?】

【ハルちゃんのは?】

【さぁ……】

【分かんない分かんない】

【あああああああ!】

【やだぁぁぁ! もう缶詰はやだぁぁぁ!!】

【草】


【ハルちゃんの戦闘力で発狂し出す視聴者たち】

【だってハルちゃんって、なんかもうハルちゃんって生命体だもん……】

【天使だからな!】

【女神だよ?】

【とりあえず上位種族……もうそれでいいや】





「お」


途中から空気の流れが変わった通路があって、その先を追ってた僕……と、後ろの子たち。


特に止められもしなかったから、多分この子たちが知ってる場所なんだろうね。


そんな僕たちは、ずいぶん上の階層の部屋に出たらしい。


【おお】

【普通の部屋だ】

【実家のような安心感】

【だってこのダンジョンに来てからいろいろおかしいし……】

【俺たちの知ってるダンジョンの光景って感じ】


「あ、これ、僕が好きな感じのくぼみなんだ」


出口の穴からは……2階のベランダとかテラスって感じの狭い空間。

そこから下は中部屋って感じの、ごく普通の空間が広がる。


【草】

【ハルちゃんの巣候補だな!】

【ここで野良猫要素……分かってるなハルちゃん!】

【やっぱりハルちゃんは壁を登ったくぼみで構えるのが好きね】


【始原は嬉しく思います】

【草】

【ああ……俺たちの原風景だ……】

【始原はもっと自分の原風景見つめよう?】


【俺の原風景……どこ……ここ……?】

【ここだよ】

【きゅんっ】

【俺たちの人生はハルちゃんに捧げている】

【ハルきゅんにね!】

【しっしっ】

【姉御は自分のサーバーにお引き取りくだせぇ】



◆◆◆



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