231話 お風呂上がりの1杯は格別

「あー、いい湯だったー」



【極楽】



ぽてぽてと、湯上がり特有の気だるげな感覚とすっきり感を味わいながら、子供たちと一緒に細長い通路をぐねぐねと歩いて湯冷まし。


廊下に反響する、高い声。

こういうのってなんかいいよね。


【うう……】

【ひどい……】

【こんなの、あんまりだぁ……】

【どうして……どうして……】

【草】

【お前らそればっかだな】


子供たちは、見違えるように綺麗になった。


顔とかの汚れも、髪の毛についてた泥とかも洗い流して……まぁ石鹸はなかったけど、お湯で綺麗に流したから相応に綺麗。


酸性かアルカリ性かは分からないけども、お肌がちょっとつるりとして自然に綺麗になってるし、お湯だけでも多分清潔にもなってる。


……髪の毛は逆に、なんかぎしぎししてるけどね。


本当は髪の毛に悪いんだろうけども、シャワーとかはないからしょうがない。

こんな環境で温泉があるだけしあわせなんだ。


【でもさ  ハルちゃん……】

【さっきカメラ装着したとき一瞬見えたけど……】

【ああ……】

【ふつくしい……】

【髪の毛がしっとり、お肌がつやつや】

【こうして見るとちゃんと成長した姿なんだなって】

【ああ……!】


【幼女も良かったけどこれもこれで良し】

【でもやっぱ良くて小学校高学年よね……】

【成長の早い人種でこの体つきだもんなぁ】


「あー。 こんなときにお酒があれば……」


【草】

【ハルちゃんが湯上がりのお酒を求めている】

【気持ちは分かる】

【こんな見た目なのに言動が……】


【酒乱のかわいい子は嫌いか?】

【え? 最高だが?】

【お酒好きな子って……良いよね……】

【良い……】


「……すんすん」


お酒。

アルコール。


「……この山の中」


『あるてー?』

『――?』


さっきこの子たちに回収してもらったドロップ品の山。

リビングとして使ってるらしい部屋の隅っこに積み上げられてる中。


……がさごそ。


『あるー?』

『――――?』


ちょっとだけ崩れる山。

けど、そんなことより、


……きゅぽんっ。


「んぐっんぐっ……ふぅー……」


【草】

【えぇ……】

【もしかして:アルコールに引き寄せられたハルちゃん】

【ああ……】

【やっぱこの幼女、アル中だって絶対】


【こんだけの山の中からよくピンポイントで探し出したなぁ】

【ラベルはないが、どう見てもワイン瓶】

【ああ……普通のダンジョンでもたまに落ちてるねぇ……】

【呑んだことあるけど味はたいしたことないぞ】

【普通は炎系の魔法と組み合わせての火炎瓶とかな扱いなのに】


【良かったね……焚き火に使えるようなアルコール度数の高いやつじゃなさそうで……】

【見た目的にワインだもんな】

【いや、ハルちゃんなら吞むぞ  多分】

【ああ……】

【スピリタス系のでも吞みそうねぇ……】


【「この濃さが良いんですよ」とか言いそう……】

【言いそう】

【言う】

【絶対言う】

【草】

【ハルちゃんに対する絶対の信頼で草】


『――――?』


「うん、おいしいよ。 みんなも吞む?」


ちゃぷっと瓶の中の音。


おいしいのはみんなで分けないとね。

大丈夫、まだ何本か眠ってる気配するから。


【草】

【ハルちゃんだめでしょ!】

【アル中をこの年齢の子供たちにまで広げようというのか……!?】

【いやいやさすがに……と言いたいけど、中世?な世界なら子供でも吞むしなぁ】


【あー】

【安全な飲み水がなけりゃ、アルコールが1番安全だったんだっけか】

【ダンジョンの中の水なら吞んでも平気だが、外じゃ多分……】


『あるあ……』

『ある……』

『――――……』


子供たちは……なぜか座り込んで、頭を下げて。

赤毛の子が両手を差し出してきて。


「分かる。 お酒って貴重だよね」


とっても嬉しそうだから、喜んで差し出した僕。

子供だって1口は吞んでみたいよね?


大丈夫、1口なら体にも問題はないでしょ。


【違う、ハルちゃんそれ違う】

【その子たち多分、女神から手渡されたお酒を崇めてる】

【聖杯……聖瓶……】

【自分たちを救ってくれた存在から勧められたんだ  たとえ呑めなかろうと吞まずには……】

【ハルちゃん! アルハラはダメって言ってるでしょ!!】


【ま、まあ、ここ地球でもないし法律は違うはずだし……】

【法律があるかすら怪しいけどな!】

【あのイモリのせいで壊滅してる疑惑のある世界だもんな】

【そこへ差し込む一筋の光……】

【なおその光は酒を呑めと強要してくる模様】

【草】


【ま、まあ、神様とかってそういうもんだし……】

【完全に人外ムーブのハルちゃん】

【人間のこと分かっていそうで根本的にはなにひとつ分かってないのが上位者だもんな!】

【全然分かってる気配がないのもまた人外だな!】

【全然分かる努力をする気配がないのも神様ってやつだな!】

【草】





「……ふぅ。 これで全員に回ったかな」


きゅぽんっと新しい瓶を開けてぐいっと1口。


【すげぇ……】

【この10分くらいで2本も……】

【もう3本目に……】

【しかも子供たちが呑めなかった分も奪い取って……】

【草】

【まぁ女神だし】

【もうそれでいいや】


さっきまではお風呂上がりにぼろを着てた子供たち。


彼らの服装は、上下の下着に上下の服、靴。


あとは全員分じゃないけども、肘当てとか膝当てとかを装備して、どこからどう見てもダンジョンに居るダンジョン潜りさん。


幼すぎるけどね。


『あるてー!』

『――――――……』

『――――、――……』


【避難民の子供たちがまともな装備を!】

【良かったなぁ】

【……これさ  ハルちゃんが来るまではぼろだけで過ごしてたってこと……?】

【ああ……】

【さっきまで靴すら履いてない子居たしなぁ……】


【やっぱこの子たち、モンスターほとんど倒せない……?】

【だろうな、倒せたらドロップである程度揃えられるし】

【もしかして:ハルちゃん、マジで救世主】

【天使だもん、そらそうよ】

【あ、また崇められてる】

【そらそうよ】


【ダンジョンの中に放り込まれて?  多分フロア落ちしてるアイテムとかで食糧だけ確保してなんとか生活してたところに、これだもんなぁ】


【武器も装備もなければ低階層のモンスターでも狩れないしなぁ】


【あのモンスターの軍勢の殲滅と言い、さっきの殲滅と言い……自分たち守ってくれて世話してくれる女神でしかないハルちゃん】


【ここにハルちゃん教が爆誕したな!】


【ハルちゃん……地球だけじゃ飽き足らず、異世界でも勢力を増やしていくのか……】



◆◆◆



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