224話 なんか発動した
『――――、――――、――……』
『のうむぅ』
『あるあ?』
気が付いたら僕の左右に張り付いてる子たち。
あと動く人形なノーネームさんのことも気になるらしく、そろそろと手を伸ばしたりしてる。
……けど。
「この子たちも……これじゃ、気が休まりませんよね」
僕はいつも通りにきちゃない袋から――。
「……きちゃない袋、落としたんだった……」
【朗報・きちゃない袋さん、思いだしてもらえた】
【やさしい】
【良かったね、きちゃない袋さん】
【もはや大人気、きちゃない袋】
【だってとうとう洗ってもらえなかったし……】
【あのシミの付き具合がまた絶妙だったんだ】
【草】
……え?
ささっと腰周りとかを探ってみるけども……持ち物は、無し。
「え?」
……もしかして。
「僕……無一文? お酒も……ない……?」
あと、この格好になる前は腕につけてたはずの……メイン武器のスリングショットも。
替えの服とか洗濯用品とか、プレハブのトイレとかお風呂とか、そういった生活必需品から、食べものからお水まで。
あとは、本が何百冊も入ってたタブレットも。
「おさけ……」
あと、やっぱりたくさん入ってたはずのお酒も。
【草】
【そこで最初にお金とお酒なのか……】
【女神の価値観だから……】
【天使だって いや、天使にお酒はどうなんだ……?】
【草】
【そこは自信持って天使って言ったげてよぉ!】
【けどこの状況で真っ先に出て来るのがお酒とか……さすがはハルちゃんね】
【ま、まあ、古今東西、神様ってお酒が好きなのが常だし……】
【そ、そうそう、多神教の神様の1柱なハルちゃんなら、お酒が原動力でも……ねぇ?】
【じゃあハルちゃんって何の神様なの?】
【お酒の神様】
【幼女の神様】
【遠距離職の神様】
【ショタの神様よ!】
【しっしっ!】
【この見た目になってもショタ説を貫く姉御たち……もはや敬意を表するまである】
『――――……』
『――っ……』
僕の左右にへばりつくようにして、下を一緒に見下ろしてる子たち。
なんかいろいろ説明してくれてるっぽいけど……ごめん、なに言ってるかさっぱり分かんない。
けど。
「……あんなのがうろうろしてたら、怖いよね」
【やさしい】
【ハルちゃん女神】
【ハルちゃんは天使なんだよ】
【ハルちゃん、基本のところが優しいもんなぁ】
【じゃなきゃ、そもそもるるちゃんも助けてないしな】
【俺、ステルス時代のハルちゃんに助けられた1人だぞ 事務所にお礼の手紙送った 「数が多すぎてお返事できないけど、きっとハルちゃんも喜びます」ってお返事来た】
【えらい】
【やさしい】
【けどステルス時代て】
【草】
【いやまあ……うん……配信で助けても名乗り出ない聖人っぷりだったし……】
【その点はどうなのよ始原】
【何回助けようと、ハルちゃんが名乗り出る様子がなかった だからハルちゃんの意志を汲んだ】
【おお】
【さすがは始原】
【まぁ多分本音はめんどくさかったんだろうけどね……】
【始原の意見も大体一緒だった】
【なんでそんなこというの!!】
【草】
【台無しで草】
【でもハルちゃん、多分その行動原理でステルス決めてたんだよなぁ……】
【当たり前のことって言ってたし、本当に当たり前にやってただけなんだろうけどなぁ】
【めんどくさがりなのに人助けはしっかりする……そういうとこが好き】
【分かる】
「……徘徊してるのは……中級ダンジョンレベルかな……」
僕は、いつも感覚で……視界に入る前に狙撃してるから、実は敵の種類とかレベルとか、細かくは分からない。
けども、多分強すぎもせず弱すぎもしない、いわゆる「普通の」モンスターが大半……だと思う。
【遠くてわかりにくいけど確かにそうかも?】
【充分な装備にアイテム、ある程度のレベルや経験があれば倒せそうだが】
【問題は広さと数よ】
【定期的な間引きがないとモンスターの数も増えるし、高レベルのが出現しやすいんだもんなぁ】
【?】
「……うん。 できたら倒しておきたいよね……この子たちのためにも」
壁にくり抜かれてる窓のへりに乗っかってたノーネームさんが、振り返って見てくる。
……その絵文字……絵文字? 結構見やすいね。
「……今の僕に、武器は無い。 あの魔王さんと戦う前につけてたスリングショットも、いつの間にかになくなってるし」
ついでに石もなくなってる。
1ヶ月もこつこつ集めてたのに。
全部あのきちゃない袋さんの中に詰めてたから。
アイテム全ロスト。
……地味に堪えるやつ。
【あー】
【そういやないなぁ】
【石さんならそのへんでいくらでも補充できるけど】
【投擲だと、武器使うよりは格段になぁ】
【せめてきちゃない袋さんがまだ生きてたら……】
【きちゃない袋さんって生きてるの?】
【え? 知らない】
【でもハルちゃんがこぼしたおしゃけとかで魂宿ったり】
【しないだろ しないよな?】
【いや、ハルちゃんは女神だからもしかしたら……】
【ノーネームちゃんも今や実体化してるし……】
【ただの布袋に魂宿ったら困るから宿らないで】
……ま、落ち込んでもしょうがない。
あんな自爆魔法に巻き込まれて生きてるだけでも上出来。
それよりも今。
僕の隣にいるこの子たちの安全だよね。
「………………………………」
――あのとき。
あのときは、どうやってた?
自爆魔法から逃げてきた先のここの上空で、たくさんのモンスターを見下ろしたとき。
地面を這うモンスターの大群を見て、これがるるさんたちのところに行ったら困るなって思って、だから攻撃したやつ。
「……魔力は……結構戻ってる……あとはあのときを再現する……」
『あるー?』
『――……?』
僕は軽く羽をばさっとやってみる。
左右にくっついてた子たちが離れる感覚。
――そう、羽は動かしてた。
「こんな風に」。
『あるー!』
『――――――!』
【飛んだ?】
【飛んだぁ――!】
【なんかもう自然と浮かんでるハルちゃん】
【ハルちゃんやめて……ぶつぶつ言ったと思ったら突拍子ないことするのやめて……心臓に悪いの……】
【ああ! また爺さんがやられた!】
【草】
◆◆◆
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