222話 なんかいろいろ生えてた
「ノーネームさんノーネームさん、僕たちは……ん」
ノーネームさんを見てた僕は、気が付いたら起き上がってた他の子たちに見られてるのに気が付く。
「……言葉……分かんないんだよねぇ……どうしよ」
『――――?』
『――……』
あ、子供たちの方も困ってるみたい。
けどみんなで相談してるし……この反応……なんか見た感じ北欧系?と東洋系?が混じってるけども、みんな言葉は通じてるっぽいのかな。
「言葉が分かんないことには……あ、そうだ」
ノーネームさんを片手に乗せて、片手を振ってみんなの視線を集めてみる。
『…………?』
「ハル。 はーる」
僕は、自分の顔を指して名前を連呼。
「ノーネーム。 ノー……いや言葉通じない相手にノーネームさんは長すぎますね」
【確かに】
【英語知らないと困るよな】
【というかそもそも「ノーネームちゃん」って「名無しの権兵衛」ってことになるしな】
【だってノーネームちゃん、名乗らないんだもん】
【俺が知ったときは定着してたから、てっきり……】
「んー。 ……ノーム。 のーむ」
【ノームちゃん!】
【ノームちゃん爆誕】
【ノーム……妖精か】
【ちっちゃいし、ぴっかりだな】
【朗報・ノーネームちゃん、ノームちゃんになった】
【ノーネームちゃん、じゃないノームちゃん、感想は?】
【♪】
【アアアアアアアアアアアアアアア】
【嬉】
【悲】
【否】
【?】
【!?】
【♥】
【■・■】
【自我】
【アアアアアアアアアアアアアアア】
【!?!?】
【+-】
【よし、喜んでるな!】
【草】
【もはやすっかり定着した、ノーネームちゃんの発狂っぷり】
【ノームちゃんだってば!】
【いや俺たちノーネームちゃんで慣れてるし……】
【どっちでも良いんじゃね? ノーネームちゃんでもノームちゃんでも】
【ノームちゃんかわいいいいいいいい】
【んもー、ノームちゃんったら恥ずかしがり屋さんんんんんんん】
【草】
【この辺りも、もはやいつもの】
【ハルちゃんもノーネームちゃんも場所も変わっちゃったけど、結局はいつも通りだな!】
『!!! ――――――!!』
『――、――――――!!』
『――――……』
「……ごめん、発音がさっぱり分かんない」
自分を指差して名前ってのは、多分どこの世界でも共通。
だからやってみた……のは理解できたみたいだけども、肝心のお返事が……その、発音がなんかぎゅるんってしててさっぱりだ。
【え? なんだって?】
【何この発音……】
【んにゃぴ……】
【地球上になさ過ぎる発音よね……】
【全然聞き取れん】
【舌とかどーやって動かしてんの……?】
【と、とりあえずハルちゃん達の名前は伝わったっぽいから……】
◇
『あるぅ!』
『あるて!』
『あるふぅ!』
『あーるー』
「あー。 もうそれでいいよ……」
それから10分くらい、お互いの名前を連呼し合って疲れた。
僕はもうダメだ。
結局この子たちの名前、ひとつも聞き取れなかったし……しかも、僕の名前も中途半端だし。
『のーむ!』
『のーむす!』
『のむ!』
『のうむ~』
【♪】
……ノーネームさんの方は、そこそこ違和感ない発音になったみたいなのがうらやましいな。
「けども……えっと、ここって……」
改めてこじんまりとしてとっても居心地の良さそうな空間を見てみる。
ワンルームマンションに布団を3つ4つ並べた感じの洞窟。
四隅には薄暗く光る石……これ、多分ダンジョンの壁とかから剥がれたやつだ。
こういう光る石で攻撃すると、綺麗な光の筋ができるからなんかちょっと嬉しいやつ。
部屋の出口な通路の先にはオレンジの光……匂い的にたいまつかな……と、間接照明的でこれまた雰囲気抜群だ。
「……?」
ぶんぶんっと頭を振ってみる。
「……頭の上……なにこれ」
髪の毛にくっつけて浮いてたカメラさんはいつものだけども、その上にも浮いてたのは。
「……輪っか?」
直径30センチくらいの、薄い輪っか。
車のハンドルとかみたい。
けども物質感って言うか……とにかく持ってる感覚はあるのにないっていう斬新な物体。
【ハルちゃん、それ取れるの!?】
【草】
【天使の輪っか……取れるんだ……】
【ま、まあ、自分の一部?だし……】
【女神ならそれくらいできて当然だな!】
なんかほどよく金色に光ってる輪っか。
なんとなく反発する力を感じるから手を離してみると……ふわりと浮かんで、頭の上に。
「………………………………」
もっかいつかんで引き寄せて。
で、手を離して。
ふわふわと浮かんで行って、真上に戻る
『『『おー』』』
「……おもしろい……」
【おもしろがるハルちゃん】
【ハルちゃんの体でしょ?】
【まーた平身低頭してから褒め称えてる子供たち】
【自分の体をさわさわしておもしろがる幼じょょょょょょょ】
【あーあ】
【ノーネームちゃん、まーだ大切にする人間増やしたいの?】
【ていうかハルちゃん、前、前】
【まーた拝まれてるよハルちゃん】
【まぁ今の動きで、浮かんでるのがハルちゃんの特殊な何かって分かっただろうし……】
光る輪っかは頭の真上から20センチくらい浮いてる。
頭を傾けてもそらしても、相対的な位置と角度は変わらないらしい。
変なの。
まぁいいや。
「……で……はねぇ……」
ぐっと背中をツイストして羽を見てみる。
……なんか「腕じゃないけど腕みたいな感覚」で動かせるらしく、ツイストした側のが見やすい感じに、こっちにカーブしてばさっとなってる。
「んっ……くすぐったい……」
【●REC】
【●REC】
【ハルちゃんの声……】
【ああ……】
「はっ……あっ……やめとこ……」
【前からときどきどきっとしたけど……】
【ちょっと成長したからか……その……】
羽を手で触ると、わきの下とかふとももを撫でるみたいな感覚で思わず悶えちゃう。
……なるほどね。
これが僕の体に生えて、
「……浮いてるじゃん……なにこれ……」
なかった。
普通に浮いてた……分離してるよ、羽の付け根。
腕みたいに動かせて脚のつけ根みたいに敏感なのに、僕の体から直接生えてるわけじゃない。
変なの。
まぁでも、こんなのが肩に押されてたら寝にくいし、寝返りとか打てないよね。
【なぁにこれぇ……】
【お、鳴き声が初めて役に立った】
【草】
【けどほんと、なんだこれ】
【ハルちゃんに生えてる……んだよな……?】
【よく分かんないけど、今さらじゃない? ハルちゃんの何もかもがちょっとおかしいのって】
【ちょっとおかしいってのがここに繋がるとは……】
【繋がっちゃったね♥】
【繋がったのか?】
【俺たちはハルちゃんが人間から見てちょっとおかしいって最初から分かってたんだ】
◆◆◆
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