202話 ノーネームさんと、共闘

『おのれ……おのれおのれおのれおのれ良くも世界の支配者たる我の寵愛を――ぐぅっ!?』


「ばぁんっ。 ……だからもー、言ってるじゃないですか。 やっぱ僕、寵愛とかそういうのはちょっと……って」


6つめのコアを破壊。


ドラゴンさんの戦闘力っぽいの――機動性とか反応速度とかブレスの迫力とかが、極端に落ちてきた。


「ノーネームさん、さっきも言いましたけど、あのドラゴンさん。 やつあたりでノーネームさんに来るかもですから気をつけてくださいね」



【愛】

【理解】

【♥】



【草】

【ノーネームちゃんが完全に乙女だ】

【そらそうよ】

【ノーネームちゃんのピンチ、ハルちゃんが華麗に救ってるんだもんな】

【これできゅんと来ないほうが無理】

【分かる  画面越しでも、男でもきゅんってなるし】


【興味ある子はこっち来てね<URL>  大丈夫、初心者歓迎だから】

【姉御はちょっと引っ込んでろ】

【何どさくさに紛れて野郎共をメス堕ちさせようとしてんだよ草】

【だって、こんなチャンス滅多にないし……】

【お姉様のサーバーに新鮮な男の子が……現時点で400名  まだまだ歓迎よ?】

【ひぇっ】


「――――――――左です」



【了解】



『GAAAAAAAA――――――!!』


僕を諦めきれない――って言うよりは多分、思いっ切りプライド撃ち抜かれちゃったドラゴンさん。


弱ってきてるのもあるけども、なによりも完全に頭に血が昇ってる。

だからなんにも考えないで、ただ僕を墜とそうと放ってくるブレス。


でも。


しゅごおおおおっと……そういやこのイスさんに乗ってから、いくら加速してもいくら急停止急旋回急上昇急降下しても何ともないんだけど……まぁいいや、便利だし。


【もはやハルちゃんの手中だな】

【ハルちゃんの手のひら……ふぅぅぅぅぅぅぅぅ】

【草】

【気をつけろ、ノーネームちゃん、元気になってるぞ】

【なるほど  ノーネームちゃんぺろぺろろろろろろ】

【草】

【ノーネームちゃん相手でもないないなのか……】


【けど……ごめん、ちょい離脱  酔い止め飲んでくる】

【分かる】

【おろろろろろろ】

【さっきのNTRとは別の理由でおろろろろろ】

【あ、ゲロゲロの味、ちょっと違う】

【えぇ……】

【お前……】


【カメラがすっごく動く動く】

【車って、運転手は酔わないから……】

【本当、ロケットとイスさんなハルちゃん、機動性ちょっとおかしいもんな】

【元からちょっとおかしいハルちゃんが、さらにちょっとおかしく……】

【それはちょっとなのだろうか】


【ごめん、すっごく】

【あり得ないくらい】

【人間じゃないくらい】

【天使くらい】

【たまには野良猫属性も思い出してあげてください】

【草】

【お前ら……】

【あ、酔ったやつら、とりあえず炭酸飲め  それで軽いのなら楽になるぞ】


多分、配信は続いてるんだろう。


何でって?


大声出さなくてもノーネームさんに言ったことが伝わって……今みたいに僕がブレスの右、ノーネームさんは左って具合に、ちゃんと避けてくれてるから。


大声出すと疲れるもん。

楽に越したことはないよね。


……まぁノーネームさんの反応は分からないんだけども、目を見ればなんとなく分かるから。


ノーネームさんが元気なら、ノーネームさんの力っぽいので強制的に配信させられてたあのときと同じ状況のはずだし。


それなら、観てる人たちも安心させないと……ね。

そのためにも、なによりも帰ったあとのみんなのためにも。


「……ノーネームさん。 あのドラゴンさん……魔王さん、ここで倒します」


【えっ】

【マジ?】

【確かにできそうだけど】


「今の僕なら、多分やれます。 ……そうしないと、こうして魔王さんとの結婚前に噛みついた以上には、絶対報復来ちゃいますから」


【あー】

【あー】

【そりゃあそうだ】

【あんだけハルちゃんに執着してたもんな……】

【え? じゃあ地球、またピンチ?】

【だから倒すって言ってるんだろ】


「……命を。 しかも、知性のある存在を……殺すのは、嫌です。 怖いです。 手が震えます。 でも」


ぎゅっ。


両手を握りしめ、残りのコアが半分以下になって再生も遅くなってる魔王さんを見下ろす。


「あの『人』を討伐しないと、殺さないと。 僕の大切な人たちが、報復でひどい目に遭うんだったら。 ――僕は、やります」


【ハルちゃん……】

【「あの人」……そうだよな、ハルちゃんは会話してるんだもんな】

【モンスターとは違って、生きてる生物、それも知的生命体……】


「……ノーネームさん。 僕と一緒に、地球。 守ってくれませんか?」



【勿論】



「……もちろんって言ってるんですよね。 大丈夫、なんとなく分かりますから」



【えっ】

【ハルちゃん!?】

【あの、ノーネームちゃん、こっちにしか書き込んでないんだけど】

【もしかして:ハルちゃん、ノーネームちゃんと以心伝心】

【おろろろ……ん? これはNTRなのか?】

【草】

【視聴者の情緒が破壊されている】

【破壊された情緒はね、もう元には戻らないんだよ……】


【<URL>】

【姉御とその眷属は黙ってて】

【どっか行って】

【二度と帰って来ないで】

【ひどくない?】

【おう、このシリアスと感動ぶち壊した責任は重いぞ姉御】


しゅごおおおお。


僕は、建て直してきた魔王さんを正面から見すえる。


『……くっ……やはり遠征用の予備の肉体では……』


だろうね……って、予備の体だったのか。


そうだよね、とんでもない数の世界を征服したって言ってたんだ、そんな存在が……いくら魔力が無尽蔵になってるからって、僕ごとき人間、しかも幼女の攻撃でここまでダメージ、受けるはずがないもん。


だから。


だから、今、ここで……今乗り移ってるっぽい肉体を倒して、ちょっとでも時間を稼いで。


……あとはどうにかして説得で諦めさせるか、それが無理なら、ノーネームちゃんに手伝ってもらってこの空間にたくさんの人たちを。


ダンジョンで魔法が使える人たちを。


――初級しか使えない僕でこの威力だ、なら魔法で上位層に言ってる人たちが集まれば、きっとなんとかなるんだ。


「……さあ。 ノーネームさん、行きますよ。 あの人のコアは――あと、たったの4つです」



◆◆◆



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