194話 僕が産まされる契約成立 やだけど

このドラゴンさんは、なぜか僕を気に入っている。


いや、多分単純に好奇心だろう。

だってドラゴンが人間の美醜感覚なわけないし。


決してこの未成熟どころか未発達な肉体に性的興奮を……してないよね?


この、おっぱいもお尻もないのになぜかどきどきする見た目のせいじゃないよね?


そうだよね?


ね?


………………………………。


……そう信じとこ……何か怖いし……。


だってこんなでっかいのが僕にそんな欲望を……なんて、なんか脚の力抜けてくるじゃん……?


だってだって、こんなでっかいのなら当然あれもでっかくって。


「………………………………………………………………」


……で、こ、この、ノーネームさん謹製のボディにそのへんの男が入り込んでるって言うのが不思議なんだろう。


なら、少なくとも興味があるうちは言うこと聞いてくれるはず。


せめて、僕が男なのに女の子としてやられちゃう分の対価はもらわないと……。


「……もし言うこと聞いてくれるんだったら、僕の世界へは一切に手を出さないでください。 未来永劫、何十年かして僕が居なくなってからも、ずっと、絶対。 それが、お嫁さんになる条件です」


【ハルちゃん……】

【ドラゴンが話す内容は、10年前の比じゃない……ってことか】

【こわすぎ】

【ハルちゃん、救世主】

【やっぱり女神だ……】

【ああ……!】


【え? って言うかさ  10年前のあれって、まさかこのドラゴンみたいなのが……】

【……来たんだろうな。 あのときにダンジョンが出現したんだし】

【じゃあノーネームちゃんが主犯?】

【どうだろう……あの時点でノーネームちゃん居たんだったら、もっとこう……愉快なことになってたはずだ】

【草】


【笑っちゃいけないけど分かって草】

【ノーネームちゃん、力のあるやべー存在にしてはまだマシな方だし……】

【ハルちゃんが現れる前はるるちゃんに執着してた程度だし……いや、「程度」って言っちゃるるちゃんに悪いけど……】


【その他は、せいぜいがないないするくらいだもんな】

【いや、世界中で集団拉致とか割としゃれにならないことしてるわけだが】

【ノーネームちゃんなら絶対コンタクト取ってきたはずだもんなぁ……るるちゃんに取り憑いてたくらいだし……】

【でもそれ、とりあえずで侵略したあとに自我に目覚めたとか……】


【分からん……】

【ノーネームちゃんのことは、できたら悪い子じゃないって信じたいところなんだが……】

【世界中でシャレにならない被害出ちゃってるしなぁ……】


『……心まで美しいのだな。 理解した、それでこそ伴侶のし甲斐があるというものよ。 よかろう、貴様の意思を尊重しよう』

「良かったです」


ふぅ。


これで謎のドラゴンさんによる地球虐殺は回避……されたのかな。


「そういうことならしょうがないです……で、これからどこに行くんですか?」


まさかここで子作り?


いやいや……いやいや。


なんかこう、そういうのはせめて雰囲気あるところで……ほら、悲しい思いするんだったらせめて、なにか慰めになる雰囲気じゃないと……。


『貴様の心に打たれた当初は、貴様が滅ぼしてほしい国を滅ぼした場で初夜をと思っていたが』


うぁー、倫理観ー、価値観ー。


なまじ言葉が通じるって怖いんだなぁ……。

場面が想像できるだけにえぐいよなぁ……。


でも、もし僕が散々な目に遭って逃げてきた女の子だったら、それで喜んじゃうのかもね。


だって憎くて仕方ない敵国を滅ぼしてくれて、その上自分を守ってくれる宣言してる強いやつのお嫁さんだもん。


時代と価値観が違えば、まさに自分を救ってくれた英雄。


「素敵! 抱いて!」ってなるのかも……いや、なるだろう。


元々女の子って、オラオラ系とかヤンキー系な力こそパワーでジャスティスってのに惹かれるらしいし?


それがさらに、憎い敵国を……って言う世界なら、そりゃそーなる。


……って、今思ったけども。


ドラゴンさんのあれ。

僕に入るんだろうか。


「………………………………」


ぶつぶつぶつぶつって鳥肌立つけども、冷静になろう。


僕のこと気に入ってるドラゴンさんが、ぼこって僕を串刺しにするはずがないんだ。


千回楽しむ……じゃないじゃない、うませるんだって言ってるんだから、できる限り僕の体がダメージ受けないようにするはず。


奴隷じゃなく伴侶だもん。

僕が生きてて、この見た目をできるだけ長持ちさせたいはず。


さらに僕の言うことにもなんか喜んでるっぽいから、僕の心が壊れないようにはしてくれるはず。


……あくまで、人間の女の子な基準の、ドラゴンさんの価値観で。


だからきっと、僕が死なない方法でえっちなことを――うげぇぇぇぇ……やっぱりやだなぁぁぁぁ……でもみんなのため……うわぁぁぁぁ……。


……う、うん。


「これがるるさんとかじゃなくってまだ良かった」って思いながらがんばろ……それならまだがんばれる気がする。


るるさんとかえみさんとか九島さんとかリリさんがそういう目に遭うくらいなら、僕がされるのは全然……じゃないけど……まだマシだもん。


『しかしこの世界に手を出すなということなら、我が魔界にある宮殿へ連れよう。 貴様で夢中になった我が、うっかり周囲を破壊してしまうやもしれんからな』


「僕で」とか、うわぁ……言い方ぁ……。


ま、まぁ、配慮できてるのは良いことだから……うん……。


「魔界……別の世界ですね。 そこに僕を連れて行くと」


『そうだ。 そちらであれば、我が軍勢も財宝も飽きるまで眺められるだろう!』

「いえ、別に軍勢とか特に……あ、見たいです見たいです、すごい魔王さんのすごい軍勢、見たいです」


わー、うれしそー。


僕はぜんっぜん嬉しくなーい。


でも嬉しそうに……ちょっとはしないと、イラッと来て無理やりとかぷちっととか、地球滅亡とかあり得るからねぇ……。


人身御供って大変だねぇ……。


【別の世界!?】

【軍勢!?】

【こんなでかいドラゴンが居る世界か……】

【それどころか、モンスターが軍単位で居るってよ】

【軍ってことは統率取れてるってよ】


【え? ハルちゃん、お持ち帰り?】

【話の流れ的にはそうなるな】

【悲報・俺たちのハルちゃん、お持ち帰りされる】

【よりにもよってこのドラゴンの子供産まされるってよ】


【ああああああ】

【ああああああ】

【ああああああ】

【ああああああ】


【草】

【阿鼻叫喚過ぎる】

【そらそうよ……】

【草生やしてる場合じゃないんだけど、いつも通りのコメント欄でどうしても笑っちゃう】

【ま、まぁ、ハルちゃんだってこれが全世界生中継って知ってたら「笑ってください」って言うだろうし……】



◆◆◆



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