140話 はじめてのだんじょんはいしん(真) その2

【あれ?】

【ハルちゃん?】

【さっきから動いてないな】

【トラブル発生?】

【しかも最初のコメントがない……】


さすがにダンジョン内だから、大丈夫だとは思うけども念のためにひとりごとは気をつけるとして……んー……。


1番近い人は……大丈夫そう?

かな?


そうして意識を集中させることしばし。


索敵スキルで見る限りだと……って言うか下の階まで見えるんだけども、モンスターさん以外の生物がこっちに来る様子はない。


ま、そうだよねぇ。


大してレベルも高くないダンジョンで、入れ替わりの時期もまだまだ。

良いもの探して、みんなさっさと降りていくんだもんね。


じゃあさっさと


「!」


……おっ……と。


いつも通りに銃を構えて歩こうとしたら、思いっ切り前に転びそうになる僕。


……あー、びっくりしたぁ……。


そっか、歩いてる程度じゃ気にならなかったけども……そうだよね、体変わったんだもん。


重心とか筋力とかこんなに違うんだ。

ひやっとしたし、気をつけよう。


【うわ】

【びっくりした!】

【ハルちゃん転びそうになった?】

【つまずいた?】

【何もないところで?】

【るるちゃんじゃあるまいし】


【おっと、別の子の名前……ハルちゃんは気にしないだろうけど厳禁だぞ】

【ごめん】

【いいよ】

【優しい世界】

【でも、ハルちゃんがこんなのって初めてじゃね?】


……うん、気をつけよう。


体の感覚が違うせいで不意をつかれたり、撃ち損ねて大惨事とか。

ほんとーにどーしようもないもん。


【けど……ああ、悲しいことに見てない……】

【ああ……ハルちゃんだからコメント見ないんだよなぁ】

【今日は最初の挨拶もないし……具合悪い?】

【こういうときに収益化とファンボあると良いのに】

【仕方ない、ハルちゃんだからな】

【それでも普段なら開始直後にコメントしてくれるんだけど……】


しかも……やっぱ武器も重い。


腕にずっしりくる重さの狙撃銃。


魔力で補強すれば持てるだろうけど、代わりに稼働時間と、いざってときの補助が足りなくなるかも。


上げ下げして確かめてみるけども、やっぱり重い。


ああ、悲しきは幼女。


そう思うと、やっぱ筋肉なかったとしても男は男だったんだね、僕も。


【……? なんか視点……低くない?】

【……カメラ、頭の上から変えたんじゃない?】

【そうか……】

【……ちょっと離席する。 26番だ】

【マジ? りょ】


……軽いの探そ……あと銃身も短いのじゃないと、運ぶだけでひと苦労だなぁ、これ。


幼女にでっかい武器ってのはロマンだけども、本物の幼女になってみるとそれはそれで大変だって気が付く。


素直にサイズに合ったの、探さないとね。





気を取り直して集中して……っと。


「……………………………………」


……通路の先の先……距離、350。


モンスター……四つ足、無警戒。


腰を落として……重いから良い感じの岩に乗せて、しっかりと照準を合わせ。


集中して、体の中の何かを引き出すようにしてさらに命中率を引っ張るようにして上げて行って――


……ぱぁん。


【この音が俺の仕事の号令だ】

【お前……ハルちゃんの配信ない日はどうしてるんだ】

【え? もちろん休んでるけど?】


【おい、昨日お前の部下が陳情に来たんだが?】

【爺仕事しろ】

【残念、これが俺の仕事だ】

【草】


……命中精度は問題なし。


ついでに利き目も変わってないね。

ん、なら普段通りで良さそう。


少なくとも射撃問題無いって分かってひと安心。


こんな体だけども、どうにかして安全な場所確保して……じっとモンスターの巡回を待ち受けるスタイルなら事故も起きないでしょ。


今日はコストとか気にせず、安全マージン取り過ぎなくらいで行こっと。


【しかし今日のハルちゃん、いつになくアクティブだな】

【本当だな、普段ならすぐに狙撃ポジ直行なのに】

【地面で、しかも低い岩で狙撃繰り返すとか斬新すぎる】


【普通のことをしただけでここまで言われるハルちゃん】

【でもハルちゃんだし……】

【アクティブというかのんびりというか】

【良いじゃない、たまには。 気分変えたいんでしょ】


……身体能力は相当低い……かなぁ……。


いや、この肉体年齢的には高いと思うよ?

多分、僕のレベル相応には。


けどなぁ、やっぱリーチからして違うし……。


【あ、しかも今日は地面からの射撃と石拾いしてなくない?】

【そういえば】

【遠距離主体だからコスト考えて、メインは石を使ってのスリングショットだもんな】


【やっぱりいつものハルちゃんじゃない……?】

【あの距離の狙撃はハルちゃんだろ】

【そうなんだけど……】

【手持ちの石が少なくなったんだろ】


けど、索敵スキルと狙撃スキルはむしろ冴え渡ってる感じだから、危険は無い……はず。


うん、よっぽどミスらなきゃね。

まだこの体になって2日目だからよく分かんないけども。


……ただ、やっぱり銃が重い。


岩とかがない場所で立ってると、じっと構えてるだけで震えて来ちゃう。


ちょ、やば、脚がぷるぷるしてる。

これじゃ狙撃精度が……。


――たぁんっ。


あっ。


……たぁんっ。


【え?】

【1発目、外した?】

【普段と明らかにリズム違ったよな?】

【……やっぱり今日おかしいよね?】

【ああ、今もなんか焦る感じだったな】

【ハルちゃんに限ってワンショットじゃない……?】


……普通のモンスター1匹に、弾2発も使っちゃった……しかも別にそこまで遠くないし、のんびりのたのた歩いてたって言う……。


ああもったいない。


かと言って、近寄られたら万が一が怖いのがこの体。

子供って転びやすい記憶あるし……早いとこ軽い武器揃えなきゃなぁ。





気が付いたら1時間くらい経ってた。


……つ、疲れたぁ……。


いつもみたいに狙撃しながら休むための、いい感じの壁の窪みに登るのでさえ。


手がぷるぷるして落ちそうになるのとかね……普段の何倍の魔力で増強しないと落っこちてたな、あれ。


う、腕がぁ……。

体重3分の1くらいなのにぃ……。


「……………………………………」


……しかも、今気づいちゃったけども。


【心配だな】

【やっぱカゼ引いてるんじゃ】

【お酒好きって言ってたし、二日酔い?】

【プロのダンジョン潜りがそんなことしないだろ】


【趣味と言い張ってるプロだもんな】

【しかもあのハルちゃんだぞ?】

【時間もいつも通りだしなぁ……うーん】


……僕、配信……しちゃってたみたい……どうしよ。


ま、まあ?


うっかり顔とか出しちゃう前に、普段通りにカメラの向き変えようとして気が付いたから、僕が幼女になってるとかはバレてなくってセーフっぽいけど……。


ふと取り出したスマホを見たら流れてるコメントで……会社の新人時代にやらかした割とでかいミスしたときみたいな、血の気が引ききっておなかも痛くなるって言うあの状態な僕。


ぽんぽんぺいん。


そんな珍妙な単語が、ふと頭をよぎる。


やっば。


【ハルちゃん大丈夫?】

【体調悪かったら休め】

【具合悪かったら大事になる前に帰ろ?】

【俺たちにとってはハルちゃんの安全の方が配信より大事よ】


……むっちゃ心配されてる……。


そ、そうだよねぇ……なまじ3年くらい配信してきたから、常連さんは僕の普段の動作、知り尽くしてるもんねぇ……。



◆◆◆



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