【11/20発売】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~レンジャースキルで「ヘッドショット系幼女」って呼ばれたりダンジョンの秘密に囚われたりする配信~
41話 『【速報】偽ハルちゃんたちを辻ハルちゃんが襲う』
41話 『【速報】偽ハルちゃんたちを辻ハルちゃんが襲う』
「くぁ」
お昼寝から目覚める僕。
お昼寝って良いよね。
この体になってから1日2回くらいするけどほんと気持ちいいもん。
特に難しい本と格闘したあとにお酒呑みながらやさしい本読んで落ちる瞬間が最高。
「んぁぁ……」
静かな室内、ぐっと猫みたいにのびーっと。
……良いよね、やっぱりひとりって。
今日は誰も来ない日。
これが失われた日常。
女の子たちが僕の部屋にたむろしてるのは悪い気持ちじゃないけども、とにかくきゃっきゃって笑い続けてるし僕の髪の毛好き勝手してくるしであんまり気が休まらない。
あと、えみさんがいるときに今みたいなことすると確実にヘンタイさんになるから抑えなきゃだし。
「ん――……」
前は全然見てなかったスマホも、気が付けば習慣でちらちら見るようになってる。
「……………………………………」
ぼーっとした頭の僕は、ふとえみさんに言われたことを思い出す。
『ハルも気が向いたら配信とかを観た方が良いぞ。 普通の配信と言うものをな』って。
確かにそうだよねって思ってアプリを開く。
そうだ、僕にはいわゆる「普通のダンジョン配信」って言うのの知識が皆無なんだ。
だからなんかみんなから変な反応されるんだろうし、ここはお勧めに出て来てる適当なのいくつかお邪魔してみよう。
本ばかり読んでいても飽きることはある。
なら新鮮なのを体験しておくのも悪くないだろうし。
「……ん」
これでいっか。
どこかで見た僕って感じのキャラのアイコン。
「ハル」って名前と絵文字で女の子らしい感じ。
……?
なんで?
『見ててください、今からヘッドショットれんぱ……きゃあ!?』
【偽ハルちゃん、初心者がいきなり狙撃は無理よ?】
【そもそも銃って反動すごいし】
【下手すると肩壊すから止めた方が……】
「……えー……」
画面には……頭の上にコスプレ用の王冠っぽいのを乗せた長い金髪の女の子。
マントというかローブも着けてて……え?
もしかしてこれ、僕のコスプレ?
なんで?
と言うか撃ってからバランス崩して尻餅ついてるし……。
【というか偽ちゃん、ハルちゃんならそんな声出さないよ?】
【うん、配信でも大半の時間は黙ってるし】
【そんな普通に会話しないの】
【そもそもハルちゃんならそんな無様は晒さない】
【ハルちゃんは俺たち斥候職の師匠なんだ、許されない】
【もっと勉強しよ?】
【ことごとくダメ出しされてて草】
偽ちゃん……偽ハルちゃん。
つまりは僕……らしい。
……何でこの子僕のマネしてるんだろ。
『だって! お店の人言ってたもん! このスコープあれば初心者でもって!』
【ああ……かわいそうに】
【あなた、騙されちゃったのよ】
【いや、品物はそうなんだろう。 けど】
【うん……まともに撃ったことがない初心者じゃあな】
【いいカモだもんねぇ……ハルちゃんフィーバーに便乗しようとしてる子にいろいろ売りつけるのって】
【ちなみにその一式、他の配信でもおんなじの着けてる子何人も居るんだけど……おいくらで?】
『……にじゅう……高かったのにぃ……』
【ああ……】
【ま、まあ、初心者脱出まで続けたらペイできるから……】
【でもケガしないようにね?】
【脱出装置、1回当たりのお代はその何倍よ? 気をつけてね?】
【しかし止めない店主も店主だよなー。 この子中1とかだろ?】
……20万……え、そんなしょぼい装備で?
『……も、もう一度! 今度はちゃんと狙うもん!』
【ハルちゃんのマネしないで素直にパーティー組みなって】
【知ってる? ソロって全体の5%も居ないのよ?】
【サッカーとか野球を1人チームするようなものなの】
【みんな優しいな】
【おう、そこそこハルちゃん似かもしれない幼女だからな】
『中学生だもん! 今年からなったもん!』
【おお……もう……】
【去年までランドセルで草】
【もん! とか言ってる時点で……】
【お前それるるちゃんに言えるの?】
【ごめんなさい】
【草】
画面に映ってる子はもたもたと立ち上がって新品っぽい銃を……ああ見てらんない。
『えいっ!』
【当たってない】
【あさっての方向】
【もしかして:ノーコン】
……いや、多分違うなこれ。
【ハルちゃん★「その構え方のままで良いから、右目つぶって撃ってみてください」】
【え?】
【は?】
【「ハルちゃん★」……えっ】
【「ハルちゃん★」の後に、るるちゃんえみちゃんと同じ事務所のマーク……え?】
【本人?】
【は?】
【どうせまた偽ハルちゃん何号ちゃんだろ】
【アカウントは……待って、飛んだらガチだこれ!?】
【マジ!?】
【草】
【ハルちゃん、以外とフットワーク軽いのね……】
【アクティブ幼女ハルちゃん】
【始原だがハルちゃんが書き込みをしたのは初めてだぞ】
【え、始原!?】
【始原までいたのかよ草】
【ああ、俺たちはどこにでも居る】
【始原……!】
【いやちょっと引くわ……】
【草】
【これ、そういう企画?】
【いや、辻ハルちゃんだ】
【辻ハルちゃん!?】
【辻ハルちゃんで草】
【俺たち始原はだな、偽ハルちゃんの配信を巡回して】
【危なさそうなら最寄りのダンジョンの知り合いを通じて、危険なら助けるようにと伝えて回っているだけだ】
【まさか本人が来るとは俺たちも想定外】
【この偽ハルちゃん17号ちゃんにもすでに応援を呼んでいたんだが……】
【始原……!】
【やってることはただのストーカーで草】
【事案ですか?】
【でも、一応は人助けだし……】
ん、始原さんも居たんだ……ヒマだね。
まあいいや、ぽけーっとしてる子に伝えておこうっと。
【ハルちゃん★「撃つ直前まで両目閉じて、撃つって思ったら左目だけ開けるのでも良いと思います」】
『え!? ハ、ハルちゃん!? うそ!?』
【速報・ハルちゃん、偽ハルちゃんの配信に降臨】
【天使降臨】
【虐殺天使降臨な】
【いや、これ指導してるから……】
【虐殺天使師匠降臨……?】
【ハルちゃん★「フォームは良いし、そのスナイパーライフルも普通に良いやつみたいだから、ちゃんとやれば当たると思いますよ」】
『あっ、ありがとうございます! ハルちゃんが私の配信に……ぐすっ……』
【なかないで】
【ぺろぺろ】
【でももうすっかりハルちゃん名乗ってたこと忘れてて草】
【だって本人来るとは思わないだろ?】
【まさかハルちゃんまでホーミングしてくるとは……】
【ホーミングハルちゃん!?】
【ホーミングるるちゃんより害はないはずだから……】
【草】
【というか、そうか。 この子利き目が……】
【あー、なるほど。 逆の目で狙ってたなら外すわな】
【それをひと目で見抜いたハルちゃんと、何十分も見抜けなかった俺たち】
【やめろ】
【やめろ】
【ごめんなさい】
【生まれてきてごめんなさい】
【ナメクジから生命やり直します】
【大ダメージで草】
コメント見てる限りだと、どうやらこの子は僕を騙った……じゃない、いわゆるなりきりコスプレみたいなのをしたかったらしい。
集まってる人たちもそれ分かっててからかう感じ……だよね?
で、この子。
何年分のお小遣いとかはたいてライフルまで手に入れて、お母さんに頼んでダンジョン探索許可取り付けたんだって。
偉いね。
でも無謀じゃない?
中1でいきなりとか……今どきはこんなもんかな。
そうだよね……CMとかでごく自然に「ダンジョンへ行きましょう!」って政府広報出てるしねぇ……。
『……当たったぁ!! 買ったときの講習みたいにちゃんと真っ直ぐ飛んだぁ! ……ぐす、ハルちゃんありがとぉぉぉうぇぇぇん……』
【偽ハルちゃんおめ】
【でもなるべく早く名前変えた方が良いと思うよ】
【ハルちゃん本人見てるし】
【ハルちゃん★「僕は別に良いですけど、マネしてケガしたら痛いですから。 ダンジョンは楽しんでください」】
【やさしい】
【良い子だ】
【やはりハルちゃんは天使……】
【本物の幼女だった……】
ぺこぺことすんごい勢いで画面に向かって頭下げてる子。
……あ、金髪ロング、ウィッグだったのね……取れてる取れてる。
「……………………………………」
けど……なんだろ。
これ、なんか楽しい。
「……………………………………」
……別のとこも行ってみよっと。
◇
【ハルちゃん★「隠蔽スキルが低いときは基本、壁に背中くっつけた方が良いですよ」】
【ふぉっ!?】
【え、ハルちゃん!?】
【……本物のハルちゃんのアカウントだ】
【え? なんか初心者のところにあのハルちゃんが!?】
【贅沢どころじゃない指導で草】
【いいなぁ……】
【俺もハルちゃん名乗って配信】
【通報しました】
【通報したぞ】
【何でだ!?】
【草】
◇
【ハルちゃん★「あ、その持ち方間違ってます。 肩抜けますよ? ……あ」】
【え、ハルちゃん】
【来てくれたけど……うん……】
【痛そう……救助要請出しな……初心者なら割引あるからさ……】
【うわぁ……】
◇
【ハルちゃん★「石はですね、なるべく丸っこいのが良いです。 真っ直ぐ飛ぶので」】
【なるほど】
【普段コスト削減に石を厳選しているだけはあるな】
【丸っこいのとか表現がかわいい】
【……これ、今をときめく規格外の新人なハルちゃんが、つきっきりで指導してるようなもんじゃ……?】
【ハルちゃん★「なるべくいい感じの石を見つけてくださいね。 慣れれば見渡すだけで分かります」】
【優しいけど言ってることはスパルタ】
【やっぱり:虐殺天使】
【ああ、俺たちのハルちゃんだ……】
【この偽ハルちゃんも感動して泣きじゃくってる……】
◇
【ハルちゃん★「弓矢は真っ直ぐ飛ぶようになってからの方がいいと思いますよ……せめてコンポジットボウ、えーっと、機械みたいなやつで」】
【初心者がいきなり弓はやっぱ無茶だよなぁ】
【誰だ! 去年まで小学生だった女の子にこんなもん売ったのは!】
【いや、親からの許可と購入代金あれば断れないし……】
【あ……この子の配信も辻ハルちゃんであっという間に……】
【ハルちゃん★「あ、でもフォームは良いのでもう1回……そう、それで矢の方向意識して離してみてください」】
【ふぇぇ……贅沢すぎる指導だよぉ……】
【ハルちゃんハルちゃん、これ普通にお仕事。 商売。 多分30分何百万だって出す人居る】
【むしろ出すから連絡先ちょうだい】
【通報しました】
【待て、俺は純粋に技術を習いたいんだ!】
【絵面がどう考えても事案ですのでやっぱり通報しました】
【おいぃ!?】
【草】
【で、気が付けばいなくなってるのまでワンセット】
【ハルちゃんは、ほら……気分で動く系の天然幼女っぽいから……】
【だてに辻ハルちゃんしてないな】
◇
【ハルちゃん★「む、僕はそんなお下品な会話しません。 えみさんに言いつけますよ」】
【あーあ、ハルちゃん怒っちゃった】
【まあ当然だな】
【と言うかこの子、なんでハルちゃんが下ネタ系って思ってたん……?】
【あー、配信→切り抜き→MAD→のループでいろいろ混じってる……】
【けどえみお母さんに言いつけるとかかわいい】
【ぺろぺろしたい】
【通報しました】
【開示請求】
【姉御は勘弁してくれ】
【草】
【本当姉御、どこにでも湧くな……】
◇
声が高いけど、ぎり声変わりしてない系の少年の配信。
【ハルちゃん★「……なるほど……僕がショタ説ってのになるとそんな感じなんですね」】
【声の感じとかそっくりだったし、完全に騙されてたよ俺たち】
【でも本物のアカウントが来ちゃったらなぁ】
【でもつまり君は偽ハルきゅんってことね? 後で私のアカウントにいかがわしくない写真送ってくれたら許すわ】
【ああ、かわいそうに……姉御の餌食に……】
【でも保身はしっかりしてる姉御で草】
◇
【ハルちゃん★「あ、そこ爆発系の罠あります。 あ、そこから2時の方向、1メートル先は転送の罠です」】
【え?】
【なんで?】
【えーっと……ハルちゃん、なんでそんなの画面越しで分かるの……?】
【ハルちゃん★「なんとなく。 試しに石投げてみてください」】
【どかーん】
【えぇ……】
【いくらハルちゃんでもそんなはずは……マジかよ】
【罠の種類まで合ってる!?】
【なぁにこれぇ……】
【ああ……偽ハルちゃん、辻ハルちゃんのやばさを目の前で見てこの前のるるちゃんみたいに……】
【草】
【画面越しでも容赦ない幼女】
◇
【ハルちゃん★「るるさんたちとですか? えっと、るるさんはお風呂に入ってきた程度ですけど」】
【程度!?】
【なにそれ、ハルちゃん的にはその先があるってこと!?】
【ここに塔を建てよう】
【こ、今度ぜひえみお姉ちゃんとのお風呂実況を……】
【偽ハルちゃんの配信がすっかり辻ハルちゃんに乗っ取られてて草】
【ま、まあ、最初に乗っ取った……のは偽ハルちゃんたちの方だし……】
◇
【ハルちゃん★「コアですか? ……とりあえず目がしょぼしょぼするくらいの時間、じっと観察してみてください。 はい、まずは6時間くらい。 なるべく目を閉じないで」】
【草】
【アドバイスが完全に根性前提なんよ】
【いやまあ普通の人には見えないんだし……】
【偽ハルちゃん偽ハルちゃん、君は素直にパーティー組んで普通にやった方が良いと思うよ……?】
【うん、その方がよっぽど楽だと思う……】
【優しいコメントのはずなのに言ってる内容で諦めさせる高度な会話技術よ】
【いや】
【ハルちゃんだから多分何も考えてない】
【考えてたらハルちゃんじゃない】
【みんなの信頼で草】
◇◇
「楽しかった……」
気が付いたら何時間か経ってたらしい。
……他の人の配信にお邪魔するって楽しいかも。
もしかして僕、配信の才能が……なさそう……。
けどそっか。
僕、そこまで有名になってたんだね……僕のマネした子たちが出るくらいには。
なんかちょっと恥ずかしい気がしてきた。
「もうひと眠り、しよ……」
慣れないスマホでのチャットばっかりして疲れたからか、もう1回眠くなった僕。
もぞもぞと新しいお布団に潜り込む。
……ん、るるさんの匂い。
◇
【速報・ハルちゃん、辻ハルちゃんとなり偽ハルちゃんたちを一掃する】
【最近乱立してたハルちゃんを名乗るアカウントも落ち着くか】
【ダンジョン協会からの声明『ハルちゃんという子のマネは大変に危険ですから止めましょう。 初心者は保護者や監督と一緒に』】
【ハルちゃんの衣装一式を売りつけていた悪徳業者、何故か自首してくる】
【『勘弁してください』以外会話が通じず、何らかの脅迫があったと……】
◆◆◆
41話をお読みくださりありがとうございました。
この作品はだいたい毎日、3000字くらいで投稿します。
ダンジョン配信ものでTSっ子を読みたいと思って書き始めました(勢い)。
「TSダンジョン配信ものはもっと流行るべき」
「なんでもいいからTSロリが見たい」
と思ってくださいましたら↓の♥や応援コメント、目次から★~★★★評価とフォローをお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます