30話 【コラボ配信】「ふたりはるるハル!」1
「……………………………………」
初めて来るダンジョン、その3層くらい。
何でも、周囲の偵察もとい他に潜ってる人たちを見るってことで、僕たちに先行して警備の人たちが様子見してくれてたからのんびりと入って来た僕。
……るるさんはちょい遅れての到着だ。
理由?
ほら、僕たちが入った途端ダンジョンがなんかやばいことになったら困るし?
僕たちだけならなんとかなるけども、他の人が居ての巻き添えはちょっと……ねぇ?
崩落とかモンスター召喚とかで被害が出かねないからしょうがないよね。
あと、るるさんと僕との距離をいろいろ試したいって言われてるのもある。
僕たちがどのくらいの距離であんなことが起きるのかっての、確かに知っときたいし……だってあんなミラクルだよ?
『ハル様。 現在探索中の方は4組、いずれも私たちが配置につきました』
「ありがとうございます」
耳に入れたインカムからは護衛の人たちの声。
前の僕より高レベルだし、今の僕よりも身体能力ではずっと上な彼らが、いざとなったらなんとかしてくれるんだって。
ありがたいね。
ちなみにこういう裏方なお仕事は人気がある。
ほら、スキルを活かしての会社勤めながら高給取りだからさ。
経理でいろいろ処理してくれての社会保険とか……会社がやってくれて払ってくれるって素敵だよね。
去年クビになってから自分でやるとその恩恵が……って稼ぎじゃなくなるんだけどね、僕みたいに毎日のように潜ってると。
ただただめんどくさいのは残るけども。
でもこれだってでっかいケガしたりすると半年単位でお仕事できないし、リスクはそこそこあるし。
それはさておき……じゃ、スタート。
【お、いつも通りの時間】
【午前10時って、まるでフレックス制で働いてるみたいだよな】
【だがそれがハルちゃんだ】
【ぼっちで決まった時間にダンジョンで働く健気な子……】
【社畜のようなルーチンワークで淡々と働くロリっ子……】
【いい……】
【訓練されすぎた視聴者たち】
今回はコラボ。
だから視聴者さんたちの対応はるるさんに丸投げ。
だけど僕だって10人くらいならなんとかなるから、始原さんって人たち11人だけはアイコンで分かりやすくしておいてもらってる。
それ以外の人たちのコメントは基本流し見。
なんでも普段MAX10人の配信からいきなり万以上はムリだからって。
そりゃそうだ。
配信ってのは特殊な作業なんだもん。
僕にそういうのはムリ。
【俺の名前、ハルちゃんのデフォルメ絵……だよな!?】
【俺たち始原は最高ランクのメンバーに加入できたからな】
【いいなぁ始原……】
【追加はありますか?】
【残念でしたー、私が最後ですー】
【姉御!】
【姉御言うな。 開示請求するぞ】
【ゆるして】
【草】
【姉御が強すぎて草】
姉御?
……ああ、11人目だっけ。
なんかかっこいいよね、そういうの。
「始原」とか……そういう悪乗り、僕も好きだよ。
男としてはそういうところに心くすぐられるんだ。
「おはようございます」
【しゃべったー!】
【ハルちゃんが俺たちにしゃべってる!!】
【かわいい声】
【やっぱロリだな】
【ちょっと舌っ足らずな感じが良い】
いつもの時間、いつも通り告知とかは一切無し。
そしたらいつもの人たちが集まっていて、やっぱり言われたとおりの作戦で良かったみたい。
そうだよね。
僕はもともとぼっち気質なんだ。
たくさんの人がわいわいやってるところからけっこう離れたところで、ひとり本でも読んでるのが合ってる。
だからいつも通りにやろう。
他の人たちのはるるさんとか事務所の人とかがうまくさばいてくれるでしょ。
なんか外国語とか変なこと言ってる人たちもいるけど、そういうのはムシでいいんだって。
「僕の画面ではこの前と同じ感じですので、コメントに反応してもらいたい人とかはるるさんの方に行ってくださいね」
【はーい】
【いいんちょー】
【ろりいいんちょー】
【でも俺はハルちゃん目当てだからこっちにする】
【俺も】
【私も!!!!】
【姉御……】
勉強のためにるるさんのアーカイブとか見たけどみんなすごいね。
あんなのもう普通にテレビ出てる人とかみたいじゃん。
僕には絶対ムリだもん。
僕は教室の中でさえ前に出て話せないんだ。
せいぜい仲がいい感じの10人くらいが限界だよね。
その10人の中に入るか入らないかで、ときどきぼそっとしゃべるくらいで。
【この前もそうだったけど、しゃべり方は幼いけどしっかりしてる……意外とロリじゃない?】
【ロリに決まってるだろ】
【いいんだ、俺たちはロリでも合法ロリでも】
【うわ、同接の増え方えげつない……】
【前回と前々回があれだったし】
【コメント、一瞬で流れるな】
【まあ、そうなるな】
【これで事故起きたらまた大変なことになるな】
【召喚の儀はやめろ】
【るるちゃんの呪い様が来たらどうする!】
【え? 泣く】
【草】
あ、そうだ、先にこれ言っとこ。
「今日はコラボなので、事務所から提供してもらった弾がたくさんあります。 なので今日は石とかじゃないです」
【おてて】
【おてて】
【ちっちゃい】
【お、狙撃銃】
【ハルちゃんのいつものやつだな】
【スリングショット→弓矢→狙撃銃、高レベルの敵にはロケット砲だもんな】
「だから今日はコストのこと考えなくていいですね」
【いっぱい食べて \1000】
【大きくなって \15000】
【そのままでいて \30000】
「あ、違います、おねだりじゃなくて」
【収益化してなかったときの3年分以上のだから \50000】
【収益化してない相手って貢げる手段がないんだ……分かってくれ…… \10000】
【本当だよな……相手が干し芋とかファンボ持ってればまだ貢げるけどなぁ】
【応援のメッセージじゃ足りないことも多いんだ】
【特にハルちゃんはあんまり読んでくれないし……】
【始原たち……分かる、分かるぞその気持ち……!】
【分かる】
【清貧も推す材料だけど、応援したいときに無いとなぁ】
【そうそう、長く続けてもらいたいたら】
うわぁ、今の一瞬で……さ、さんじゅう……。
「……………………………………」
……僕の手元に入って来るのはこの何割かだけども、なんか悪い気がする。
僕の金銭感覚は独り身のサラリーマンのまま。
副業のダンジョンでなんか上手く行っちゃったからお金は稼げるけども、スーパーとか薬局とかコンビニで安いの食べ比べする程度にはまだまだ脱・新入社員って感じ。
「……えみさん、今のお金、返金とかは……できないんですか」
【三日月えみ「返金機能はありませんね」】
ここはヘンタイさんじゃないときは頼りになるえみさんしかいない。
「そこをなんとか」
【三日月えみ「いえ、プラットフォームのシステム的に無理なんですよ」】
そういえばえみさんって人の前では話し方変わるよね。
なんか別人に思えるけども、その正体は女の子でありながらにして……。
【優しい】
【悲報・ハルちゃん、マジで返そうとしてた】
【おいしいものもっと食べて? \5000】
【おにく代 \7000】
コメントを見る限り、今どきの価値観はお金をもらうのはおかしくないことらしい。
……普段からネットとか配信とか観ないからさっぱりだ……今度からもうちょっと、るるさんとえみさんのだけでも見よっと。
【って言うか珍しいねハルちゃん、こんなにコメントに反応するなんて】
【もっと声聞かせて……】
【この前も結構おしゃべりしてくれただろ?】
【あれはるるちゃんの不幸のせいだからノーカン】
【だな、るるちゃん関係のことは見なかったことにするのがこの業界のマナー】
【結局るるちゃんに回帰するのか……】
【ああ、全てはるるちゃんを中心に回っている】
【草】
【るるちゃんが転んだ拍子にスカート下ろされた子やズボン下ろされた男は数知れず……】
【しかも配信中でな】
【あれで、本気で狙ってないからなぁ……しかも恨まれないどころか同情されるし】
【配信の機能で、だいたいセンシティブっぽいのには自動でモザイクかかるからセーフだけど……】
【おい、ハルちゃんの配信だぞ。 るるちゃんの不幸はるるちゃんの窓でやれ】
【そうだな】
【すまん】
【いいよ】
【やさしい】
【でもコラボで実質同じ画面だし……】
【なんかこの前以来、るるちゃんから何か飛ばされそうだし……】
【るるちゃんのとこでコメントするの、ちょっと怖いし……】
【分かる】
コメント、読めはするけどすごい勢い。
どうしよっかなって思ってたら探知スキルに嗅ぎ慣れた気配が。
「あ、るるさん来ますよ」
【るるちゃん遅刻?】
【配信そのものも今始まったみたいだし、単純にハルちゃんが早かっただけじゃ?】
【でもるるちゃんだよ?】
【ああ遅刻だわ、そのへんで転んだり迷って】
【誰かを巻き添えにしてる】
【悪い子じゃないんだ……ただただ運が悪いんだ……】
【草】
「ハルちゃんおまたせー!!」
ちょっとしてから、結局お揃いの服になってるるるちゃんが走ってくる。
お揃いのワンピース。
「それじゃ戦闘しづらくないですか」って聞いたら「腰でベルト巻いてスパッツ穿けば大丈夫!」って言ってたやつ。
【るるちゃんかわいい!】
【ああ、良い……】
【元気っ子のおしとやかな格好……】
【あのまま麦わら帽子被って】
【タイツ脱いで】
【穿いて】
【サンダルにして】
【……あとは何もしゃべらなければ男の理想の女の子だな!】
【おい、大切なものが足りないぞ】
【そうだな、胸も必要だ】
【草】
【いや、絶壁って言うのもるるちゃんの童顔フェイス的に、小学生なあの頃だって思えば……】
「あ、そうだ。 僕も顔はダメですけど」
せっかくだからって頭に乗せてたカメラを持ち上げて足元だけ映すように。
……るるさんがいるから慎重にね、慎重に。
るるさんがいるから、すごいミラクルで僕の顔が映る可能性もあるんだ、慎重に……。
【あんよ!!!!】
【かわいい座小僧】
【その脚で踏まれたい】
【お揃いのワンピース……てぇてぇ……】
【尊い】
【これが百合か】
【ガチで仲良さそうだ……つまりは百合……!】
【これと同じかな? ハルちゃんに合わせてかお手軽なお値段ね<URL>】
【\15000】
【\20000】
【後で買いに行ってくる \5000】
【もうカートに入れた】
【XLLなら大丈夫そうだな】
【男が買ってどうするんだ?】
【聞きたいか?】
【聞きたくないな……】
【せっかくるるちゃんとハルちゃんのおみ足を見て浄化された目が汚れた! どうしてくれる貴様!】
【草】
【 】
【あ……姉御が……!】
【ただの しかばねのようだ】
【ま、まぁ、ショタの女装って思えば……】
【!!! なるほど!! 最高ね!!!】
【姉御、一瞬で復活してて草】
【しまった、姉御の同志が「女装ショタだって!?」って顔してる……】
【もうおしまいだ……】
【草】
とんっと目の前に立つるるさん。
今日はちゃんと武器……普通の剣を背負う感じ。
「ふぅ。 この前はほんっとごめんね! 私がまた変なの送っちゃって!」
「僕は別に平気でしたから良いですよ」
「だからコラボ、がんばるね!」
「ほどほどにお願いしますね」
【カメラ、ハルちゃんの頭の上に乗っかってるからるるちゃんのバストアップ!!】
【バスト……あるのか?】
【いや、無いな……】
【そこにあるのは虚無だ】
【立体感がない……】
【胸もない……】
【草】
【るるちゃん、絶壁だから……】
【るるちゃんとハルちゃん、どっちがおっきいの?】
「もう! またみんなそうやって! 私はまだ成長期だから!」
【無理だと思うよ】
【無理でしょ……】
【高2だっけ? でそれって……もう……】
【ここからるるちゃんが育つには?】
【呪い様に願うしかないな】
【呪い様のせいでえぐれそう】
【さすがにマイナスは勘弁してあげて】
【草】
あー、またお胸のことをいじられてるっぽいね、この感じ。
む、お胸のこといじるってなんかやらしい表現。
けど年頃の女の子ってどの辺までこういう話題大丈夫なんだろ。
持ちネタっぽいからバストサイズのことはるるさん的にはOKなのかな?
【でもほら、ちょいしたからだとかすかに膨らみと影が】
【ウソだろ!?】
【お胸からどアップで喜ばれないるるちゃんで草】
……でもちょっとかわいそう。
あれでしょ?
男だったら「背が低いなぁお前」とか「お前のソレちっちゃいなぁ」とか言われるレベルでしょ?
……そう思ったらちょっと援護してあげたくなるな。
ほら、今は同性だし?
「大丈夫ですよるるさん」
「ハルちゃん! 私のことはるるちゃんって」
「お風呂で見ましたけど、言うほど絶壁じゃないですよ?」
【!?】
【!!??】
【えっ】
【え】
【おふろ】
【おふろ】
【ハルちゃんとるるちゃんがお風呂!?】
「……あっ」
◆◆◆
30話をお読みくださりありがとうございました。
この作品はだいたい毎日、3000字くらいで投稿します。
ダンジョン配信ものでTSっ子を読みたいと思って書き始めました(勢い)。
「TSダンジョン配信ものはもっと流行るべき」
「なんでもいいからTSロリが見たい」
と思ってくださいましたら↓の♥や応援コメント、目次から★~★★★評価とフォローをお願いします。
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