26話 ホテルに戻ってひと息。 あ、次の配信はコラボだって。 るるさんとの

あのあと、「で、僕たちはどうしたら?」って聞いたら「僕が女の子になったこと――TSしたことと、るるさんの呪い(ガチ)についてしゃべらなければ別に良いよ?」って言われた。


あと、「でも大変だろうから協会からと国からいろいろ助けるよ」って言ってくれたから、今後は見えないとこで警護とかつけてくれるんだって。


特に制限とかも無いらしいね。

良かった……まぁ僕はそんなに出歩かないけども。


で、僕は。


「? ハル、別に正座なんてしなくても良いんだぞ? そもそもここはじゅうたんだろう?」


「いえ、何となく自主的にしているだけですのでお気になさらず」


戻ったホテルの部屋で――綺麗に正座している。


幼女の正座。

それはそれは立派なものだ。


誠意は態度で示すものだってどっかの誰かが言ってた。

だから僕は、逃げ出しちゃって配信しちゃってたのを態度で謝る。


けどもここで僕から「逃げ出しちゃってごめんなさい」とは絶対に言っちゃいけない。


なぜか?


それは……女の人は怒るための地雷をいくつも持っていて、どれかが爆発するといっぺんに怒るもの。


ここで僕から謝っても、謝ってほしい気持ちのときじゃないと謝っても意味がなくって謝り損。


逆にこれで尻尾を踏んづけちゃった形になって、ついででいろいろまとめて怒られることもあるもん。


まぁえみさんたちとは知り合って間もないからそうはならないだろうけど……念には念を、ね?


「……ハルちゃん? えみちゃん、怒ってないよ?」

「あ、るるさんなら分かりますか」

「うんうん。 怒られそうなときって怖いよねー」


えみさんの家に住んでるってことだし、年上で面倒見が良いらしいえみさんの……手の掛かる妹的な感じなんだろうか。


「あ、ハルちゃんもちほちゃんのことちほちゃんって呼んであげて? ちほちゃんって恥ずかしがり屋さんだから」


「……良いですから。 ハル……征矢さんは男性ですし……」

「でも今はちっちゃい女の子だよ?」

「……それはそう、ですけど……」


ちほちゃん?

誰それ?


……ああ、救護班さんな九島さんだっけ。


僕は人の名前覚えるの苦手なんだけどなぁ……。


「……それで、です。 征矢さん」

「今までどおりハルで良いですよ、ちほさん」


「っ!!」


ばっとそっぽ向いちゃったちほ……九島さん。


え?


もしかして「見知らぬ大人の男に下の名前で呼ばれて吐き気催したわ……気持ち悪い……」とかじゃないよね?


そんなこと言われたらさすがの僕でも傷つくよ?


それこそ、ダンジョンの中で1週間くらいサバイバルしたいくらいに。


「……こほん、失礼しました……それで、ハ……ルさん」

「はい」


……真相は不明だけども、普段通りの落ち着いた顔と声な九島さん。

社会人的なスキルでとりあえず置いとくってことね。


今までどおり九島さん呼びが無難だね。


「ハルさんと深……るるさんの新しい住居が決まりました。 おふたりの利便性も考え、三日月さんたちの所属する事務所や三日月さんのお宅のすぐ近くのタワーマンションです」


「へー」

「ほへー」


「……ハルたんかわいあふんっ!」


タワーマンションっていろいろ大変だっていうけども……この感じだとご近所付き合いとか無さそうだし、るるさんも僕もある程度のレベルあるから階段で上り下りしてもそこまで苦労しないからいっか。


1回住んでみたかったしさ、高層マンションって。


何階なんだろうね?


「おふたりの立場は……配信者として注目されすぎているのと、先ほどの話の通りと言うことで、可能な限りに人目につかないよう配慮します。 買い物なども、警備の人間に伝えてもらえたら」


「それって僕自身が外に出ちゃダメってことですか?」

「あ、いえ……でもそうですね。 ハルさんはおふたりと一緒に外出はされない方がよろしいかと」


「なんで!?」

「私は耐えるぞ!? 外では絶対隠し通す!!」


「いや、さっきやっちゃってたじゃん……お偉いさんの前で……」

「ぐう」


あのとき、みんな何も聞かなかったことしてくれたけども……絶対バレたよね、三日月えみさんって人もやっぱりなんかヘンだって。


「……るるさんとえみさん。 おふたりは以前から顔出し配信をされており、しかも今は国内どころか全世界でも1番に有名な立場です」


「有名……えへへぇ……」


「ですがハルさんは、特徴こそ知られてはいますけれども顔はまだ。 ですから……ハルさんがその姿のあいだ、外に出る際の警護体制やハルさんご自身が気楽に外へ出られるようにと考えますと」


「あー、るるさんとえみさんが一緒だと僕がハルだってバレますね」

「ええ。 ハルさんが別に構わないというのでしたら顔が知られても」


「いえ、僕、2日に1回は適当にぶらぶらするのが好きなので」


「……ハルちゃーん……」


「ハルたん……あふんっ」

「我慢してくださいヘンタイさん」


「ハルたん」とか言いながら近づいてくるから優しく蹴ってあげて恍惚としてるえみさん……君、それで良いの……?


ああ、ヘンタイさんなら幼女に蹴られて喜んじゃうんだっけ……ごめんね、僕、男なのにヘンタイさんの気持ち理解できなくってさ……。


「……今日ハルさんが無断で外出」


「その度は誠に申し訳」

「あ、謝らなくて結構です! ……されたのも、元はと言えば私たちがハルさんの希望を聞かなかったせいですから……」


よく分かんないけども怒られないらしい?


「今後は伝えてくだされば可能な限り対応しますから……お願いですから」

「はい、勝手に外に出ません」


これ以上怒らせて外出禁止にされたら困るし。

まぁ逃げようって思えば罠抜けの応用で壁抜けできちゃうんだけども。





「……ああ、あとうちの社長が聞きたいと言っていたんだが」

「なんですか? えみさん」


気まずいのは苦手。


だからとりあえずコーヒータイムにして……こっそりアルコールを垂らしたコーヒーリキュール的なカクテルを呑んでご機嫌な僕。


今のところバレてないみたいだし……今後はジュースとかに混ぜる感じでごまかそう。


だってお酒呑もうとするとすごい目で見てくるんだもん、みんな……。

そりゃまあ幼女が呑もうとしたらそういう目もするだろうけどさ……。


「保護する役目も公的な機関に引き継がれた。 ……今後はどうしたいのか、と」

「今後ですか?」


「そうだ! ハルちゃんハルちゃんコラボしよコラボ!」

「近いです」

「いーじゃん、カメラハルちゃんには向けないようにするからさー」

「近いです」


るるさんはすきあらば僕にひっついてくる。


……嫌じゃないんだけども気恥ずかしいし、そもそも年頃の女の子相手だから僕の方が恥ずかしい。


だから近づいてくるほっぺをぐにーっと押し出す。


あ、でもこの子ならえみさんみたいには胸無いから


「ハルちゃん?」

「なんでしょう」

「………………」

「それで、コラボ……うーん」


最近のるるさん、僕がこの子の平坦なことを


「ハルちゃん、やっぱり」

「良いですよ」

「私の……え、ほんと!? やったぁ!!」


僕が深遠な思考をしようとすると女の子の勘ってやつで分かるらしいんだよね……この子ほんとになんなの……?


……って言うか、今思わず「良いよ」って言っちゃった。


「ハルのカメラは今日と同じように被る、本人視点のもの。 るるのカメラは、普段の3方向ではなくハルの方向からに限定すれば……うん、るるがハルに話しかけるようにすれば行けそうだな」


「えみちゃんありがとー!」


あー、僕の顔映さないってなるとそうなるのかー。


そうだよね、最近知ったけどもプロの配信者さんたちってドローン飛ばして撮影するんだよね、何方向からも。


科学の進歩ってすごいね。

ぱっと見るとSF的なポットが浮いてるようにしか見えないんだもん。


「配信の終わり際……仕方がないんだが、ダンジョン一帯を封鎖したりした影響で、ハルの身を案じるつぶやきが耐えないからな」


「あ、そう言えば」


ちほ……九島さんがスマホを取り出して……僕を見てくる。


「?」


「……ハルさん、マナーモード」

「あ、はい」


「! そうだよハルちゃん! ダンジョンの中でも休憩のときくらいマナーモードオフにするかスマホ見て!」

「いえ、でも僕、普段からスマホ見るのは朝晩くらいで……」


おかげで電池は2日とか3日とか持つんだよ?

あ、でもゲームとかする時期は持たないかな。


「……男性とはそういうものなのでしょうか?」

「いや、今の時代なら男性でももっと見ると聞いていたが……」


めんどくさいなぁ……あ、そうだ。


「九島さん」

「ちほちゃんって呼んであげて!」

「九島さん」

「はい」

「ちほちゃんっむむむ」


えみさんの華麗なインターセプトで「ちほちゃん」呼びを回避。

こういうときはえみさんって良い子だね。


「ダンジョンに潜ってるとき以外は僕のスマホ、管理してくれません?」

「えっ」


「だって僕、そういうのめんどくさくって……あ、ヘンタイさんスイッチが入ってないときのえみさんでも良いですよ」


「……ハル、良いのか?」

「はい、別に」


「……男性は女性に見られたくないコンテンツをスマホに入れていると」

「僕は特に入れてないのでどうでもいいです」


お、なんかえみさんのレアな顔。

あ、九島さんも結構レア。


……るるさんは顔真っ赤。


なんで?


「……ハルちゃん?」

「はい」


「ハルちゃんって……もしかして男の人、好き……?」

「なんでそうなるんですか」


「だって、男の子がそういうのしないって……」

「男だってそれぞれですよ? ほら、るるさんとえみさんみたいに」



◆◆◆



26話をお読みくださりありがとうございました。


この作品はだいたい毎日、3000字くらいで投稿します。

ダンジョン配信ものでTSっ子を読みたいと思って書き始めました(勢い)。


「TSダンジョン配信ものはもっと流行るべき」

「なんでもいいからTSロリが見たい」


と思ってくださいましたら↓の♥や応援コメント、目次から★~★★★評価とフォローをお願いします。


※しばらくコメントや感想に返信が追いつきませんけれども、ありがたく読ませていただいています。

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