第19話 乃蒼のいない平和な学校生活

 乃蒼は写真集撮影のために、学校をお休みしていた。しばしの安定を得られるため、とってもありがたかった。あんな女に付きまとわれるのは、もう勘弁してほしい。


 男のクラスメイトたちは、写真集の話でもちきりだった。


「乃蒼様の写真集は楽しみだ」


「水着ではなく、生乳首を見てみたい」


「上半身だけでなく、下半身もさらけ出してほしい」


「○○の毛は生えているのかな」


「ヌード写真、万歳」


 男たちの話がヒートアップしたところで、学級委員長がこちらにやってきた。


「公共にふさわしくない話は、学校以外でしてくれるかな。話をストップしなければ、セクハラ案件で相談することになるよ。さっきの会話はボイスレコーダーに収録

してあるからね」


 学級委員長は録音した声を、教室内に流す。男たちは動揺からか、魚のように口をパクパクとさせていた。


「あんたたちは今回の件で、ほとんどの女を敵に回したね。学校内においては、彼女ができないと思ったほうがいいよ」


 男たちはカチンときたのか、委員長に対して強がっていた。


「この学校は不細工ばかりだから、こちらから願い下げだよ。俺にはもっとふさわし

い女が現れるはずだ」


「そうだ。まともな女はほとんどいないだろ。交際できるレベルになってから、文句をいってみろ」


「価値のない女と交際しても、得られるものは何もないよ。時間を無駄にするくらいなら、独り身で十分だ」


「おまえも悔しかったら、彼氏を作ってみろ。魅力のかけらもない、堅物委員長さん」


 委員長は大袈裟な溜息をついたあと、男たちのところからいなくなった。


 侮辱発言を行った男たちに、女たちは冷たい視線を向ける。彼女たちの視線からは、絶対に許さないという強固な意志を感じた。


 美穂も憎しみの視線を向けている。普段は怒らない女性も、今回の発言だけは我慢ならなかったようだ。男たちの発言は、女の存在意義を完全否定していた。

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