天才薬師の出来上がり!(7)
二人で串焼きとタコスもどき――もうタコスでいいや――をいただく。
串焼きもタコスのソースも全種類買ってきた。ガラリと食生活が変わるなら、早めに好みの料理を見つけておくのって大事だと思う。という建前で大人買いしてしまった。
大きめのテーブルであるのに、結構料理で埋まってしまっている。まあ、前祝いだと思って、ね。
「あ、そうそう。これを渡しておくね」
甘辛な味付けの串焼きを食べ終わったところで、私はあっと思い出してワンピースのポケットを探った。
そこから初級HP回復ポーションの瓶を取り出し、ロシェスに手渡す。
「今日、私が作った方のポーションね。これはロシェスが持っていて、もし怪我をしたら使って。店にはロシェスのポーションだけを並べることにするから」
効能が落ちるなら、その分お値段も落とさないといけない。材料がまったく同じでそれをするのは馬鹿馬鹿しい話。
よって私が作ったものは、いっそ無かったことにした。処分方法がビジネスパートナーに現物支給なら、環境にも優しい。
「ロシェスが思った以上に優秀なのがわかったし、私は完全に裏方に回ろうかなって。そっちの方が、目立たないように聖女の力を使うのに都合もいいし」
それこそ最初に候補に上げたものの選ばなかった、魔法道具の開発に手を付けるというのもありだろう。こちらはロシェスだけに使ってもらえば、外部に
全自動乳鉢だとか、三倍速で抽出ができる蒸留器だとか。そういうのがあれば、作業が楽にならないかな?
そんな計画を立てながらロシェスを見れば、私のポーションをじっと見つめる彼の姿が目に入った。私が比較したときに思ったように、ロシェスも見た目は自分が作ったものと変わらないのになとか思っているのだろうか。
何をそんなに熱心に見ているのか、私の視線にロシェスは一向に気付かない。そんなだから、私の方もつい彼をじっと見つめてしまう。ただし、私の手は串焼きとタコスを口に運ぶのを忘れていない。
私が塩味の利いた串焼き三本とタコス二個を行ったところで、ようやくロシェスはこちらを向いた。
「ナツハ様。私は新しい主がナツハ様であったこと、心から嬉しく思っております」
ポーションをじっと見ていたのは、今日の出来事を思い返していたのかな? そう改めて言われると、くすぐったい。
「私もこの世界でロシェスに出会えてよかった。これからよろしくね」
そう返しながらも何だか納まりが悪くて、私はロシェスにタコスのお勧めソースをズイッと差し出すことで誤魔化した。
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