不登校明けの美少女には狐耳と尻尾が生えてる。

サトリ

第1話 僕の平凡な生活に刺激をくれる美少女

(いくら、学校に掛かる費用を全額無料化するって言っても…、これは怪しすぎるよね…。)


 高校受験の際にウチの母親が見つけてきた怪しい貼り紙に書かれていた高校は有名大学への進学率の高い進学校。さぞかし、入試試験が難しいと思われたが…、難易度は至って、普通だった。あまりに普通過ぎる問題だったため、僕は普通に合格。そして、無事にその学校に入学すると、制服、カバン、教科書、昼食の学食、交通費まで学校側が出してくれて、三年間は僕にお金が掛からないとウチの両親はとても喜んでくれていた。


 そして、僕は通い始めたが、生徒は特に勉強ばかりしていそうな人間ばかりではなく、スポーツマンっぽい男子から、オタクっぽい男子、ギャルっぽい女子、真面目そうな女子など…共通点が少ない感じの生徒ばかりだったが、通学を始めて、半月ほどたったある日に僕は、この学校に通い始めて一番の衝撃を受けた。


「あの~、大丈夫ですか?」


 急いでいて、ぶつかりそうになって謝った、同じ学校の女子生徒の子に声を掛けられて、「大丈夫」と言いそうな僕は思わず、


「耳!それに尻尾!」


 ものスゴく可愛い女の子に獣の耳と尻尾が生えていたので思わず、声を出してしまった。


(あっ、ヤバいよ、口に出ちゃった…)


「ああ、これね…、気にしないでって言っても、気になっちゃうよね。君…私の狐耳が気になるって事は…あっちもイケる口の子なのかな?」


 狐耳のある彼女は僕の事をあっちもイケるのかと呟いたあと、


「君、一年生?私は一年生なんだけど…色々と悩む事があっちゃって…不登校だったんだ~。それで今日からは学校に通う事にしたの。」


 彼女は満面の笑みで、不登校だった事を明かすと「じゃあね~」と笑顔で学校の方向へ歩いて行った。


(色々と悩むって…、不登校の理由って、その狐耳と尻尾が原因じゃないのかな?それに…不登校だったのに、メチャクチャ明るいし。)


 変な女子に会ってしまったと感じながらも、学校の校門に到着すると、案の定だが、狐耳の美少女は校則違反チェックをしている若いイケメン先生と今年の4月から就任した還暦を越えてる女性なのに、メチャクチャ綺麗な新理事長に捕まっていた。


「この耳と尻尾は校則違反かしら?」


 美人なのに冷徹な目で美少女の狐耳を引っ張る理事長の彼女に、


「耳は痛いだけだから構いませんが、尻尾は抜けちゃうかもしれないから、強く引っ張らないでくださいね。」


 彼女は理事長に尻尾はダメと主張していたら、


「母さん、可哀想だから、止めてあげなよ。」


 イケメン先生は理事長の母親を止めていた。


(あの二人…名字が同じなのは気付いていたけど、親子なんだね…。)


 そして、三人で色々なやり取りがあったあと、狐耳の美少女は僕のクラスにいるクールビューティーの遠藤 麻友さんに連れて行かれてしまった。


「なんだったんだろう…。」


 そう呟いた僕が教室に向かうと、空いていた遠藤さんの隣の席で女子たちが騒がしくしていた。その中心にいたのはやはり…、


「紫音ちゃん、可愛い!」


 登校中に出会った狐耳の美少女はクラスの女子に囲まれて、耳や尻尾を触られていた。彼女は橘 紫音と言う名前らしく、早くもクラスの女子たちの注目の的となっていた。でも、彼女の隣の席にいるクールな遠藤さんは橘さんと言う、風変わりな狐耳と尻尾を持つ美少女に何も反応せず、黙々と自習をしているようだった。


(遠藤さんって、橘さんと知り合いっぽいけど、興味は無いんだね…。)


 騒ぎがあっても興味なさそうに自習をする遠藤さんを見ていると、見ている事に気付かれてしまい、睨み付けられたあと、


「佐藤くん、何か用ですか?」


 彼女は僕の名前を覚えてくれていて、何か用かと聞かれたので、


「見てしまって、ごめんなさい!遠藤さんは隣の橘さんと知り合いなんだよね?」


 慌てて、彼女を見ていた理由を話すと、


「スミマセンが…これからは遠藤では無くて、神里理事長の養女になり、神里 に姓が変わりました。しかし、ウチには神里姓が多いため、麻友と名前でお呼びくださると助かります。」


 遠藤さんは理事長の養女になった事を話してくれて、麻友と名前で呼んで欲しいと言われてしまった。


(えっ?名前で呼ぶの?クールな人だけど…、本当は親しみ易い人なのかな?)


 僕は女子を名前で呼んだ経験がほとんど無かったため、少し躊躇ったが、


「麻友さん」と呼ぶと、「はい、なんでしょうか?」と返してくれた。


(いきなり、メチャクチャ距離が縮まったよ!なんでだろ…僕、この子の事を好きになっちゃいそうだ。)


 名前で呼ぶと返事をしてくれた彼女に恋をしそうな僕は、


「あの…、さっきの質問ですけど、麻友さんは橘さんとはどういう…。」


 慌ててしまった僕は彼女には興味の無いフリをして、橘 紫音の事を聞いてしまった。


(なっ、何をしてんだろ…、そこは麻友さんの事を聞くべきだろ。)


 コミュ障過ぎて、変な質問をした僕に彼女は、


「紫音様ですか?」と彼女は聞いてきたので…


(紫音様?なんで、様付け?)


「紫音様は本日より、私の主になった方です。私が神里理事長の養女になったのも、紫音様のお世話係を仰せつかったからで…、佐藤くんは紫音様に好意を持たれているのですか?」


 クールビューティーの謎過ぎるご主人様宣言に驚く僕に、橘 紫音の事が好きなのかを聞かれてしまって、思わず…


「ちっ、違うよ!僕は麻友さんに興味があって、それで…」


 パニックを起こした僕は麻友の方に興味があると話してしまって、告白した感覚で恥ずかしい気持ちになり、赤面してしまうと、


「佐藤くんは私に興味があるのですね、それは良かったです…。では、また今度、興味を持った点について、お話しくださると嬉しく思います。スミマセンが今は紫音様が学業を休まれていた分の授業内容をまとめて書き記し、資料作りをしておりますので、お話しは後日で構わないでしょうか?」


 彼女が笑顔でそう言って、微笑んで来たので、「ゴメンね、邪魔をして」と言い、自分の席に戻った。


(うーん、何となくだけど…上手く交わされた気がする…。)


 恋愛には発展しなさそうな話術で、好意の気持ちを上手く交わされた僕はクールな麻友よりも、彼女が主と話す橘 紫音という、狐っ子の美少女の方が気になり始めた。


(尻尾をフリフリさせながら授業を聞いてる…。)


 昨日まで不登校とは思えない明るい彼女は様々な表情を見せていて、昨日までの退屈な学校生活に変化をもたらしてくれる存在になると感じた僕は美少女狐っ子の橘 紫音という人間の登場にワクワクが止まらなかった。

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