カメレオンくんの、のうりょくは

夏風小春

カメレオンくんの、のうりょくは

 あるところに、イタズラをするのが大すきなカメレオンくんがいました。カメレオンくんはとくしゅなのう力をもっています。体の色をかえて風けいにとけこむことができたのです。カメレオンくんは、いつもそののう力を使って、イタズラをしてみんなを困らせていました。

 カメレオンくんにはすきな子がいました。ウサギちゃんです。ウサギちゃんはやさしくて、みんなのアイドルでした。カメレオンくんは、ウサギちゃんに自分のことを見てほしくて、どうしても、たくさんイタズラをしてしまうのでした。


 ある日のことです。いつものようにカメレオンくんはウサギちゃんをおどろかせようと、イタズラをしかけます。しゅういにとけこみ、うしろから大きな声を出しました。


「……わっ!!!!」


 いつものウサギちゃんなら、びくりと体をふるわせたあと、えがおでふりかえってくれるはずなのです。ですが、その日はちがいました。ウサギちゃんは、おどろきすぎてたおれてしまったのです。

 カメレオンくんは大へんびっくりして、とてもあせりました。ウサギちゃんがしんでしまうかと思いました。


「だ、だれか!たすけて!」


 ウサギちゃんが!

 みんなにたすけをもとめましたが、だれも耳をかしてはくれません。また、いつものようにカメレオンくんがさわいでいるよ、と。

 だれか、きいてよ。おねがいだよ。ウサギちゃんがあぶないんだよ。

 そんな中、ひとりだけ、カメレオンくんのはなしをきいてくれるどうぶつがいました。クマくんです。クマくんはおおらかでおだやかな、やさしい子です。


「カメレオンくんのお話をきいてあげようよ!」


 クマくんのひと声でウサギちゃんはたすかりました。カメレオンくんは、あんしんしました。ウサギちゃんがぶじでほんとうによかったな……でも、すこし、かなしかったのです。


 ぼくの声は、とうめいだ。カメレオンくんは見た目だけではなく、声もとうめいになってしまったのです。ひとりぼっちの夜、キラキラ光るお星さまをながめながら、しくしくとなみだをながしました。ぼくには、こんなにもきれいな夜空をいっしょに見る友だちが、いないんだ。



 そういえばさいきん、ウサギちゃんのよう子がおかしいのです。元気がなくて、何かにおびえているようでした。カメレオンくんは、げんいんをかいめいするために、とうめいになってウサギちゃんを見まもりました。そうしたら、なんと。


 クマくんがウサギちゃんにいじわるをしていたのです!

 クマくん、やめてよ!いつものやさしいきみはどこに行ってしまったの!?

 心の中でさけびます。こわい。ウサギちゃんにイジワルをするクマくんは、とてもきょうぼうでした。力ではかてません。

 ……そうだ!

 カメレオンくんはクマくんのうしろにしのびより、大きな声を出しました。


「…………わっ!!!!!!!!」


 クマくんは、おどろいてこしをぬかしました。


「今のうちに、にげよう!」


 カメレオンくんはウサギちゃんの手をひいて走ります。ふるえる足で、一生けんめい走ります。

 クマくんが見えなくなってしばらくたったころ、ふたりは走るのをやめて、いきをととのえました。あたりはすっかりまっくらです。


「カメレオンくんが、本とうはやさしいこと、わたしは知っていたよ」


「すなおじゃないけれど、とても、ゆうかんだね」


 たすけてくれて、ありがとう。きれいなお星さまだね。


 それからというもの、カメレオンくんはイタズラをやめて、みんなをよろこばせるためにのう力をつかうようになりました。とうめいなヒーローのたんじょうです。


 今日もカメレオンくんはひとしれず、森のへいわをまもっているのです。

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