第2話

コトちゃん、今夜も空振りだったね

もう一週間たっちゃった

会いたい時には会えないもんだね


別にタカハシに会いたいっていうわけじゃ

モチロンないけどさ

あたしの計画にはタカハシが必要なんだよ


目標1 タカハシとデートの約束を取り付けること

目標2 タカハシとデートをすること


難しいかなぁ

でも、ここまでは何とかなりそうな気がする

タカハシとはオタという共通があるからさ


そうなんだよね

なんでタカハシとしゃべったことがあるかっていうと

タカハシはゲーム好きだし

あたしは漫画好きだし

趣味がお互いオタクだったんだよね


ちょっと好き、とかじゃなくて生活のすべて

どっぷり浸かってるっていうかんじで


で、最終目標は、初体験だよ、エッチだよ、大人の恋愛だよ

編集さんに、あたしだってやる時はやるって言わせたい


コトちゃん、さぁ、リハーサルするよ

付き合ってね

いくよ


「あ、タカハシじゃない、久しぶり~」


これでいいよね

出会いのシーンだよ


奇をてらうとダメだよ

言ってる時に嚙んじゃう


最初に声をかける時とデートに誘う時が一番緊張するから

この2つはシンプルに行くよ


「久しぶり~」ってこっちが言っても

あいつは絶対

「おう」くらいだから、その先ね


その先は

「ねぇ、最近なんか面白いゲームある?」


これだよ、コトちゃん

完璧!

ふふふ


三つ子の魂百まで、だよ

絶対今もヤツはゲームオタに違いないよ

あたしの予測では、ニートか、良くてもフリーターのゲーム廃人だよ

じゃなきゃ、夜中の2時にコンビニでよく会うわけないもんね


ただのニートならいいけどさ

引きこもり系だと、ごはん行こう、とか言っても

誘いに乗ってこないかもしんないよね

その場合が困るなぁ


っていうか、

あたしと出かけたくなくて誘いに乗ってこないってほうが

もっと困るんだけどさ

相手が誰でも、タカハシが誘われたら

行きたくなるようなものに誘えばいいんだよね


これが一番の難関だよ

ここがねぇ、コトちゃん、わかんないよね


「久しぶりに会ったから、ごはんでも行かない?」

ってさ

今まで何回も夜中のコンビニで会ってて

急にごはんに誘うって変だよね


あいさつ出来たらごはんも誘えるって、そんなこともないのかな

あいさつは出来ても、一緒にごはん食べに行く仲、ではないな


「オシャレなカフェできたみたいだから、お茶しに行かない?」

オタが二人で行ったって、居心地悪いだけだよ

それこそ、ごはん誘うより難易度高いよ


学生の頃ならさ

中古のゲームソフト買いに行かない?

とか言えたかもしれないけどさ

今はネットで買うよね


ゲーマーがリアルで出かけるのって・・・

ゲーミングチェアの座り心地確かめる、とか?


「ねぇ、タカハシ、ゲーミングチェア一緒に買いに行かない?」

ってさ、どんな会話の流れだとそう誘えるわけよ


ここがねぇ、いくら考えても出てこないわ


会った時にぶっつけ本番しか仕方ないけど

臨機応変なんてできるわけないから

どうしたらいいのかなぁ


世の中の女の人って、男の人を誘う時ってなんて言うんだろ


こんなのもわかんないから、現実味のない恋愛の話しを描くって

言われるんだよね


あたしの描く漫画の中だと

運命の人ってけっこうすぐわかるのよ

言葉を交わすと、この人は特別ってわかるんだ


最初はわからなくてもね

同じ時間を過ごしたり、同じものを見つめてると通じ合えるの


おじいちゃんとおばあちゃんがそうだったんだって

幼馴染で、お互いに子供の頃からこの人だってわかってたって


あこがれるなぁ

あたしにはもう遅いけどさ


あーあ

でも、頑張るよ

仕事クビにならないためにもね


さ、コトちゃん、今日も一緒に行く?

レッツ、ナンパ★

タカハシ、ゲットだぜ★


パーカーのおなかから出たらだめだよ


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