なぜか【死後の世界】で嫁入りすることになったが2人で『飲食店を立ち上げ死者』に暖かい料理を提供する私今自分らしくいられて楽しい!ゆるふわスローライフ
カイト
第1話死後の世界に連れてこられたらしい?
なんだろうこれは?
夢?
誰かに手を引かれてる感覚。
この人は一体誰なんだろう?
そもそもこれは人なのかな?
「うーん…」
私はゆっくりと目を覚ましす。
目に飛び込んできた光景が衝撃的すぎて声が出せなかった。
正確に言うなら現実感がないと言った方が正しい。
目を覚ました場所は雲の上。
まだ頭が追いついてきていない。
目を覚ましたのにまだ夢を見ているというのはよくある話なのでこのままちゃんと目が覚めるのを待っているしかないか。
と思いながらも体の感覚に妙なリアルさがある。
唯一この状況でわかっていることがあるとすれば私の目の前にさっき夢に出てきたお地蔵様の見た目をした人?が立っているということだけだ
「どうも初めまして私は
どうしたらいいのか状況を飲み込めなさすぎて思わず自分から自己紹介をしてしまった。
「こちらこそ初めまして」
「掴むことをお聞きしますがあなたはこの世界の住人ですか?」
普通ならこういう状況の場合ここはどこですかと聞くのが一般的かもしれないけど、周りを見てこの場所が普通の世界じゃないことは明らか。
「今からあなたに伝えなければいけないことがあります」
お地蔵様の見た目をしたその人?がやけに真剣な口調で言う。
「あなたは18歳という若さで命を落としてしまったんです」
「そうだったんですか」
自分が死んだと聞かされても実感がない。
「ここはそんな命を落としてしまった生物が過ごす死後の世界です」
「つまり天国ってことですか?」
「人間の世界の言葉で言うとそうなりますね」
自分が死ぬ前のことを少し思い出そうとしてみるが記憶にモヤがかかったような感じでなかなか思い出せない。
「さて早速この世界のことについて色々と説明したいんですがその前に」
「あなたに会いたいと言ってる人がいましてね」
「私にですか?」
すると誰かがこっちに向かって歩いてくる。
「初めまして僕の名前は
丁寧な口調でそう言った次の瞬間!
私の目の前で膝をつきポケットから何か小さな箱を取り出す。
「僕の家に来てください!」
その小さな箱の中には綺麗なダイヤの指輪が入っていた。
普通ならどこの誰とも知らない人からの嫁入りの申し出なんて断るがなぜかその人のことを元からよく知っているような感覚があった。
それに何なんだろうこの妙な安心感は。
「はいわかりました」
気がついた時にはもう笑顔で返事を返していた。
「ありがとう」
その人の見た目は黒髪のショートボブで高身長顔立ちはだいぶ整っていて第一印象は爽やかな男。
「はいはいひと段落ついたところで説明してもいいかな」
手をパンパンと3回叩き自分の方に目線を向けるように促す。
「この世界は2人にさっき伝えた通り死後の世界」
「この世界には人間だけじゃなく様々な動物あやかしがいる」
「本当だったら2人にこの世界を見て回りながら説明をした方がいいんだけど」
「余裕がないからとりあえず2人で住んでもらう家に向かおうか」
当たり前なのかもしれないけど死後の世界にも住む場所とかってあるんだ。
後ろについて行きながら辺りを見回してみると、確かに人間や動物だけじゃなく1つ目小僧のような見た目をした子供や青い炎のようなものを身にまとっているあやかしが普通に歩いている。
「人間とか動物はわかるんですけどあやかしってどうやって生まれてくるんですか」
自分の単なる好奇心から質問してみる。
「あやかしっていうのわ様々な状況出来事によって生まれてくる」
「つまりはどういうことですか?」
「つまりは人の噂話や怖いという感情から生まれてくる可能性があるってこと」
「噂話とか関係なくいきなり生まれてくるパターンもあるから一概には言えないんだけど」
「簡単に言うとそうだね」
「そっちの世界で有名なので言うとトイレの花子さんとかそこらへんかな」
「あれもあやかしの部類に入るんですね」
でも確かに今さっき聞いた説明を踏まえて考えるとあれも噂話が広まってった結果なのであやかしではあるのか
「あのお店に売ってるのを買うためにはどうしたらいいんですか?」
島崎が尋ねる。
「それはもちろん人間の世界と一緒でお金を払って買うんだよ」
死後の世界にもちゃんとお金あるんだ。
「さて着いたよここが今日からあなたたち2人に住んでもらうところ」
見た目は少し古びたアパートのような感じ。
雲の上の死後の世界に当たり前のようにアパートの建物が建っているのは違和感を感じる。
「この後すぐ色々と買い出しに行かなきゃいけないからとりあえず家の中を見てて!」
「もしあれだったら2人で勝手に外に出て色々と見て回ってていいから!」
慌ただしくそう言いながら足早にその場を去っていく。
「これからどうします?」
私が尋ねる。
「そうですねこのままここに立っていても仕方がないですしとりあえず家の中を見ましょうか」
「そうですね」
一瞬鍵がかかっているんじゃないかと焦ったが忘れていたのか鍵がかけられていない。
家の中に入る。
部屋の中は2人で住むにはちょうどいいぐらいの広さで中に置かれている家具は小さめのテーブル1つとベッドが2つ。
後少し小さめのキッチンがあるだけ。
言われるがままにここに来ちゃったけど 、これからこの人と一緒に2人でここに住むんだ!
やばいそう考えるといきなり緊張してきた!
思いながら慌てて言葉を口にする。
「そうなんですか…ところでさっき僕の家に来てくださいって言ってた割には随分と初めてみたいな反応してましたけど?」
「実はついさっきこの家を借りることになったばっかなんですよ」
「だからこの家は僕の持ち家とかじゃなくてただの貸してもらっている家です」
「ここまで連れてきてくれた人は買い出しに行ってくるって言ってましたけどどこまで行ったんでしょうね」
「さあそれは僕にも分かりません」
…どうしよう何を喋っていいかわからない!
「あなたのことについて教えてくれませんか?」
「私のことについてですか」
「ええ、この世界に来る前のあなたのことについて」
「それが自分の名前のこと以外はさっぱりわからないんです」
「覚えている記憶もあるんですけどはっきりとは思い出せなくて」
「そうですか実は僕もはっきりと前の自分がどうだったのかわからないんです」
「まあ自分がこの世界に来る前に何をしてたかなんて考えてもしかたがないですしこれからどうして行くか考えませんか?」
「そういえば何であの時初対面の私に嫁入りの話なんてしてきたんですか?」
「まあその話を承諾した私も私なんですけど」
自分で言っておきながら思い出したような口調で全く違う話をする。
「なぜだかわかんないんですけどあなたの名前を聞いた時にその指輪を渡さなきゃいけないと思ったんです」
「私もなんでだかわかんないんですけど指輪を渡された時すごい嬉しかったんです」
「すいませんこれからこの世界でどう暮らしていくかっていう話でしたよね」
話を戻すように言う。
「私1つやってみたいことがあって!」
「やってみたいことですか?」
「飲食店を立ち上げてみたいと思ってたことだけははっきりと覚えてるんです!」
どうしてそう思ったのかきっかけまでははっきりと覚えていないが飲食店を立ち上げたいという気持ちがあったのははっきりと本当に覚えている。
体を前に乗り出し熱を帯びた口調で言う。
「飲食店ですかいいですね」
優しい笑顔で頷いてくれる。
「是非僕にも手伝わせてください」
「お店の中をきれいに飾り付けしてお客さんが優雅にくつろげる場所にしたい!」
「ははは」
「どうしました?」
「いえすいません何でもないんですただ生き生きとしてて楽しそうだなと思って」
「あ!すいません私ばかり喋っちゃって」
自分の頬が恥ずかしさで赤くなっていくのを感じる。
「いいえ構いませんよ、鼎さんが嬉しいと僕も嬉しいですし」
言って爽やかな笑顔を浮かべる。
「そうと決まればいろんな食材を買い出しに行かなきゃですね」
「こうして改めて見てみると色々なお店があるんですね!」
こうして色々なお店に目を配っていると自然とテンションが上がってくる。
「これだけ確かにお店が立ち並んでいると色々なお店に目移りしちゃいますよね」
その目はまるではしゃいでいる小さな子供を微笑ましく見ているようでもある。
どうしようそう考ると途端に恥ずかしくなってきた!
「そういえば具体的にどういうお店にしたいとかイメージはもうあるんですか?」
思い出したような口調で訪ねてくる。
「それがゆっくりできる場所にしようっていうお店のコンセプト以外は何も決まってないんですよね」
「それじゃあ今回は色々なお店の食材を見ていきながらどういうお店にするのか具体的にしていくっていう感じですかね」
それからしばらくゆっくり歩きながら色々なお店を見て回った。
こうしてお店を1つ1つ観察してみるとあやかしがお店を開いている場所もところどころある。
「そういえばあやかしたちが売ってる食べ物の商品って私がいた世界の食べ物と少し違うんですよね」
「もしかしたらあやかしの中だけで流行ってる食べ物とかもあるのかもしれません」
「一緒に食べてみますか?」
「調査も兼ねて」
島崎が尋ねてくる。
「そうですねそうしましょうか」
「すいません」
「こちらのお店のメニュー表を見せてもらっていいですか?」
「こちらがうちの店のメニュー表になります」
渡されたメニュー表を2人で見てみると今まで食べたことがない、というか今まで見たことがない食べ物がたくさん載せられていた。
「何なんですかこれ」
メニュー表に乗ってる食べ物の写真を見てみると、どれも毒々しい色をしていて一見食べ物には見えない。
一瞬人間が食べて大丈夫なものなのかと疑ったがその中から比較的食べれそうなものを探し頼むことにした。
「これなら大丈夫なんじゃないですか形は団子の形と全く一緒ですし少し毒々しい色をしてますけど食べれますよきっと」
他の人から見たら島崎にただ言い聞かせているだけに見えるかもしれないが実際は自分に言い聞かせているだけだ。
なるべくお店の人には聞こえないように声を潜めているがもし聞こえていたらどうしようと少し今更ながらヒヤヒヤする。
あやかしであって人ではないが。
「すいませんこれをください」
メニュー表に載っている写真を指差し注文する。
「分かりましたお2つでよろしいですか」
「はいお願いします」
「それでは銅貨1枚になります」
あ!
今更ながらこの世界のお金を持っていなかったことに気づく。
どうしようあまりにも自然な感じで買おうとしちゃったけど私そもそもこの世界のお金をまだ持ってなかったんだった!
心の中でどうしようどうしようと慌てふためいていると、さっき色々と説明してくれたお地蔵さんのような見た目をした人が声をかけてくる。
「2人ともこんなところにいたのか」
両手に何やら色々な食材が入った袋をぶら下げている。
「すごい荷物が多いですね何かあるんですか!」
驚きを含んだ口調で私が尋ねる。
「今日は色々とやらなきゃいけないことがあって」
「って言っても今日は明日に備えての準備だけど」
「ところで2人はこんな店の前で立って何やってるの?」
「それがこのお店のものを買おうとしたんですけどまだこの世界のお金を手に入れられてないことに気づいて」
「あ!そっかごめんごめん2人にお金を渡しておくの忘れてたね」
そう言って1枚ずつお金をくれる。
そのお金は小判のような形をしていて真ん中にはお釈迦様のようなデザインが施されている。
「ありがとうございます」
そのお金で2つ何とも言えない毒々しい色をしたお団子を買うことができた。
「ここに座る場所ありますし座って食べましょうか」
2人でお店の横に置かれているゆっくりするスペースの部分に腰を下ろす。
「いただきます!」
毒々しい色のせいか自然と声に力が入ってしまう。
少し身構えながらも覚悟を決め串に刺さっているお団子に勢いよくかぶりつく。
「大丈夫…ですか?」
私がその状態から無言で動かないでいると不安そうに言葉を投げかけてくる。
「あ、美味しい!」
「本当ですか!」
2人でお店の横に置かれているゆっくりするスペースの部分に腰を下ろす。
「いただきます!」
毒々しい色のせいか自然と声に力が入ってしまう。
少し身構えながらも覚悟を決め串に刺さっているお団子に勢いよくかぶりつく。
「大丈夫…ですか?」
私がその状態から無言で動かないでいると不安そうに言葉を投げかけてくる。
「あ、美味しい!」
「本当ですか!」
さっきまでの警戒していた表情からは一変し明るい表情へと変わる。
「これってどうやって作ってるんですかね?」
「それは企業秘密だから教えられねえな」
話を聞いていたお店の人が冗談ぽい口調で言ってくる。
「他にもおすすめの商品いろいろあるけど食べていくか?」
「それはまた別の機会にしておきますこれから行かなきゃいけないところがあるんで」
「そうかまた今度食べに来てくれよ待ってるから」
「はいそれじゃあ、ありがとうございました」
2人でお礼の言葉を言ってその場を去る。
「それで行かなきゃいけないとこってどこなんですか?」
「ただ食材を見に行きたいなと思って」
「この世界にどんな食材が売ってるのか単純に見てみたいですから!」
特に行き先をはっきりとは決めずぶらぶらと歩いていると、スーパーがあり中に入る。
中を見渡してみるとやはりこの世界にしかないような商品もいくつか置かれていた。
全く知らないこの世界にしかない食材を初めから使う勇気は私にはなかったので自分が知ってる中で一番近い食材を選ぶ。
並べられている食材を見てみるとどうやら私がもともといた世界の食材もちゃんと置かれているらしい。
なるべく鮮度の良さそうなものを選んで買う。
飲食店をやりたいと言っておきながら私には鮮度のいい野菜なのかどうか見分る力がない。
おそらく料理の方は一通りできると思うのでそこら辺は問題はない。
家に帰ってさっき念のため買っておいた水色のエプロンを身につけ夜ご飯を作る。
しばらくしてできた料理をテーブルに運ぶ。
「できましたよお口に合うかどうか分かりませんけど」
「ありがとうございます」
「肉じゃがを作ってみたんですけどもし美味しいって思ってくれたらお店のメニューに加えようと思ってるんです」
「結局お店のメイン料理は和にするんですか?」
「そのことなんですけどオープンして最初の方は特に何を作るかとかは決めずに私が作れそうなやつを作って行ってお客様が気に入ってくれた料理をどんどんメニューに加えていこうと思ってるんです」
「とは言ってもメニューを全く考えてない状態でお店を開くわけにもいかないのである程度は考えておくつもりです」
「そうですかそれじゃぁとりあえずはこの肉じゃがを僕が食べて感想を言えばいいんですね」
「はいお願いします!」
「いただきます」
肉じゃがをスプーンですくって食べる。
「どうでしたどうでした!」
食い気味に尋ねる。
「ええ、とても美味しかったです」
「あんまり他のご飯が食べれなくなるとダメかなと思って、少しにしておいたんですけど味わかりました?」
「はいとても美味しかったです」
「何か味のところで改善した方がいいところってありましたか?」
「改善した方がいいところですか!」
「後もう少し味を強めてもいいかもしれませんね」
「後他に何か改善した方がいい部分ってありますか!」
「野菜の切り方とかその他にこういう料理がいいんじゃないかとか何でもいいんですけど!」
「僕はそこまで飲食店に詳しくはないので気の効いたことは言えないんですけど」
そう言われて自分がまくしたてるようにしゃべってしまっていたことにようやく気づく。
「すいません」
「いいんですよ僕も話を聞いてると色々と妄想が膨らんできて楽しいですし」
「今からお店オープンするの楽しみだな♪︎」
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