土壇場でベテランが輝きますわ!

バックスクリーンに写り出されるリプレイ。キャッチャーからの送球をもらったピッチャーがグラブを下ろし、頭から滑り込んだ赤ちゃんの手首付近にタッチ。



その瞬間に、赤ちゃんの指先がホームベースに触れているか否かというところだったのだが。




「これはどうでしょうか、大原さん。タイミングは非常に微妙ですが………」



「そうですねえ。タイミングはどっちにも転がりそうなところでしたが、赤月の手の先で土埃が舞ってしまっているんでねえ。どの段階でホームベースにタッチしているか分からないんですよねえ」





ビクトリーズファンの方々からは、歓声3割、ため息3割、どっちでもないどよめき3割。



俺のイケメンに唸る声が1割。



つまり、証拠不十分。



戻ってきた責任おじさんは改めて拳を握り直し、ビクトリーズのベンチに向かって、あと1回ですよと、人差し指を立てた。




つまりは、3アウトチェンジである。



落ち込む赤ちゃんを宥めつつ、代打で出てきた滝野君はもっとかわいそう。



キャッチャーのところでの代打でしたから、打撃の結果が出ることなく、そのまま下がり緑川君と交代となってしまったのだ。



そんな彼を引き連れながらベンチ裏に引き上げて、ケータリングで手早くブレイクタイムだ。




6回表、5回1失点ピッチングの野中さんに次いで、2番手同じ技巧派右腕12年目の高久がマウンドに上がった。



先頭バッターにヒットを打たれるも、直後の送りバントをナイスフィールディングで2塁封殺。



そしてわたくしのナイスランニングキャッチもあり、無失点リリーフとなった。





そして向こうも先発ピッチャーが交代し、先頭は左の緑川君ですから、2番手のサウスポーが登場。



最後は真ん中低めのストレートを打ち返した。



「ピッチャー返し!抜けた!セカンドが回り込んでスライディングキャッチで1塁へ送球!!緑川はヘッドスライディング!!


アウトになりました!!セカンド豊田、これが40歳のプレーか!?超ベテランのビッグプレーになりました!1アウトです」




おいおい、マジかよ。2塁ベースのアンツーカーにかかった打球を逆シングルズザサーで捌き、そのまま1塁へ鋭い送球で俊足のグリーンリバーをアウトにした。



40歳のプレーちゃうやん。40歳がいつまでセカンド守ってんねん。



久しぶりの先頭打者出塁かと思われたところだったから、ちょっと流れ的にはまずいものの、並木君が変化球を拾ってレフト前に運び、俺もフォアボールで繋いだ。



さらに祭ちゃんも続いて満塁となったのだが、そこでレオンズは信頼出来るセットアッパーを投入。



芳川君はバットを折られてファーストへのファウルフライ。マテルは最後、高めの釣り球に手を出していまい、空振り三振に倒れた。



7回表の守り。マウンドには玉地。



最速150キロの真っ直ぐにスライダーが冴えて三振を2つ奪うピッチング。



ラッキーセブン、ビクトリーズマーチが鳴り響き、赤ちゃんがバッターボックスに入った。





「レオンズ、マウンドには水石が上がりました。今シーズンは防御率1点台というところをしっかりキープしております。リーグ4位の31ホールドをマーク。50試合目の登板となります。バッターは赤月です」



初球、2球目と変化球でストライクを取られてしまったのが幸いした。



膝元のチェンジアップを当てるだけの格好。打球は深めに守っていたライトの前に落ちた。




「ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします。ファーストランナー、赤月に代わりまして、朝日奈。………バッターは7番、センター、柴崎!!」



代走にはチーム1の俊足外野手。その男が2球目にスタートを切った。



グンバツ。



キャッチャーも悪くない送球だったが、鮮やかに2塁ベースを陥れた。





コンッ!!



「上手いバントだ!!ファーストの前、決まりました!!1アウトランナー3塁です」




「8番、ライト、桃白!」





カキッ!!




1ー1からの3球目。低めのボールを掬い上げた。



打球は左中間に上がったが、それほど飛距離は出ていない。それでも、1メートルでも、1センチでも遠くに飛べと、ベンチにいるみんなでワーワー叫ぶ。



レフトの選手が助走を捕りながらキャッチ。朝日奈君がタッチアップ。グングン加速しながらホームに向かう。ボールがワンバウンドで返ってきた。




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