まあ、予想は出来ましたわよ。
すごい。
1人2人が頑張れば出来ることじゃないからね。10人連続ヒット。柴ちゃんやノッチが打ったのもビックリでしたし、多分もう2度とない記録。
バックスクリーンにも、間に合わせのレイアウトと書体で東日本リーグタイ記録!!と出て、大きな拍手も起きましたから、ならば狙うは新記録の11人連続。
それをわたくしのおピンクバットで達成したらこれ以上きれいなことはない。
カキッ!
「これも、いいあたっ………あっ!!ピッチャーが捕って、バックホーム!!そしてサードに送られてこちらもアウト!!さらに1塁へ送られたー!!新井はヘッドスライディングー!!アウトだ!!トリプルプレー!!新記録ならず!なんと、ピッチャーゴロ、三重殺となりましたー!!」
な、なにぃ………。
あー!と、うー!と、ええー!?という、様々な感情が入り乱れるある意味絶妙な空気になってしまった。
俺は胸や太ももを土で汚し、ずれたヘルメットで目元を隠すようにしながら立ち上がり、ベンチに戻ると………。
「新井さーん……」
「も~、新井さんてば~」
「はぁー……新井さん」
「新井さん、空気読んで下さいよ……」
などと、チームメイト達にそんな風な対応をされてしまった。空気を読んだ、読まないで言えば、最高に空気を読んだ結果にはなった気がするが……。
今のピーゴロが微妙な当たりだったらイジれない感じになるだけど、しっかりカキィ!と、捉えたナイスな打球がピッチャーのグラブにたまたま入っちゃったやつだからさ。
もう思う存分、ベンチでため息つかれたり、ブーイングされましたよ。
こんな連続記録なんて、絶対にどっかで終わるんだから、あんまり気にしてないけど。俺は自分に出来るバッティングしたし。
それでもトリプルプレーになってしまったのはどうかと思うけど。
とはいえ、初回にどころか、1イニングに7点を取ったという経験が基本貧弱打線が持ち味のビクトリーズとしては恐らく初めて。
しかも、防御率2点代の最多勝ピッチャーから1アウトも奪われずに一気のノックアウトなんて、ちょっとまだ信じられない。
それは他の選手達も同じような気持ちだったようで、守備に向かおうとするメンバーはどこかギクシャク。
すると1イニングで2安打したキャプテンが……。
「一旦リードしていることは忘れていきましょう!2点差、2点差くらいのつもりで!」
そんな言葉が聞こえると、祭ちゃんや芳川君がウイッス!と返事しながら守備位置へと散っていった。
まさかの大量リードを貰い、ちょっとどうしようとという雰囲気のあった、今日先発の思田君。
しかし、ピッチャーとしてやることは変わりませんのでね。目の前のバッターを1人ずつ仕留めていくと。
満塁で2点タイムリーを放って、気分よくリードするノッチに乗せられて、快調なピッチング。序盤3回は無失点で抑えたのだが……。
カッキィ!!
「ん!?大きい打球になっている!右中間!!藤並の打球!!柴崎、桃白が追っていますが、その上だ!……入りました!!フライヤーズ、3番藤並に1発が飛び出しました!!第22号!!こちらもまだ優勝への望み。反撃体制に入っていくのか、2ランホームランです!」
アウトコース高め。スパーンと振り抜いた打球は逆方向ながらぐんぐんと伸びていき、右中間スタンドに飛び込んでいってしまった。
そしてさらに……。
「ストレート!!これも叩いた!!打球がライト後方上がっている!!……入りましたー!4番、村野にもホームランが飛び出しました!こちらは20号です!!」
2者連続ホームランで4点差。
ん?ちょっと大丈夫?という雰囲気の中、また次のバッターにも芯で捉えられる。
「ピッチャー返し!セカンド祭!回り込んで抑えました!ジャンピングスローで1塁へ!きわどい!!ショートバウンドですが……アウトになりました!ファインプレー!!」
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