◆人生山あり谷間あり!?

 新米教諭として赴任した先の高校で妹分──近所に住んでた年下の幼馴染・安田若葉ちゃんと再会した時は懐かしかった。

 何度も繰り返し頼まれて、根負けして彼女が新たに作った「オカルト研究会」の顧問を引き受けたのも、一応、先生の職務のうちだし僕自身の選択の結果だ。

 でも……。


 「だからって、コレはあんまりにあんまりな仕打ちじゃないか!」


 そう、オカ研の活動の一環として「過去の英霊を召喚する」のはまぁいい(いや、あんまり良くはないけど成功するとは思えなかったし)としても、その依代として兄貴分の顧問教師を使うなよ!

 ──しかも、微妙に斜め上な方向に成功しちゃってるし。


 若葉たち的には地元の偉人・前田利家を召喚したかったらしいが、微妙にズレ(?)て、その妻の“まつ”を召喚したのは、驚いたけどまだ許せる。

 僕に憑依・顕現した“まつ”さんに若葉たちが色々質問して、知られざる歴史の裏側とか利家の極秘エピソードとか知れたのは、僕としてもおもしろかったし。


 でも、その後の送還が不完全で、僕の身体がまつさんが憑依した時のまま──つまり女性化しちゃってるのはどーいうことだよ!


 「いやぁ~、この事態は完全に予想外だわ。HAHAHA!」


 おい若葉、アメリカンな笑いで誤魔化そうとするんぢゃないッ!


 ***


 くだんの英霊召喚の儀式とやらに如何なる効果があったのか、今の僕は本来の23歳の男「道成寺清彦(どうじょうじ・きよひこ)」ではなく、同い年の女性「清姫(きよひめ)」として世間では認識されているみたいだ。

 友人知人はおろか、家族からでさえ、そう見られている。僕が清彦だったことを覚えているのは、僕自身と若葉ちゃんのみ。

 「浪漫学園高等部に採用されたばかりの国語教師」という立場が変わらなかったのは幸いだったけど、それ以外では微妙に人間関係も変わっていて……。


 「おっはよぉ、きよひー♪」

 「ひゃん! ちょ、やめてよ双葉さん、こんなところで」


 いきなり朝っぱらから電車の中で痴漢まがいの“スキンシップ(本人談)”を仕掛けてくるのは、若葉ちゃんの姉で、僕よりひとつ年上の女性・双葉さん。

 当然、彼女も幼馴染で、小さい頃から「綺麗でやさしいお姉さん」として、実はちょっぴり憧れてたんだけど……。


 「んん~、“こんなところ”じゃなかったらいいのかなぁ?」

 「そ、それは言葉の綾というか……ひんっ!」

 「ココか、ココがエエのんかぁ♪」

 「や、やめてェ……!」


 ご覧の通り、どうやら僕の前では猫をかぶってたようで、同性に対してはかなり開けっ広げなセクハラ魔人だったみたい──本性を知った時は、かなりショックだったなぁ。


 「いやぁ、きよひーは、あいかーらずイイ反応してくれるなぁ(ツヤツヤ」

 「ぅぅ……公衆の面前であんなコトするなんて……双葉さんのバカぁ!」

 「あぁ、泣かない泣かない。それにしても、高校時代から数えて8年近くも、わたしの手技テク受けてるのに、アンタ、一向に慣れないわね」


 おまけに、僕が女の子になった(というか生まれた時からそうだったことになってる)影響で、高校は双葉さんと同じ女子高に通い、さらに大学も同じ女子大に入ったことになってる。


 「そろそろ学園が近いし、生徒たちに見られるわよ。さ、涙を拭いて。メイクは……うん、大丈夫。そんな崩れてないわ」

 「(ぐすん)はぁい」


 さらに言えば、現在の勤め先である浪漫学園でも、彼女は1年先輩の養護教諭にあたるワケで──完全に先輩・後輩関係が染みついちゃってるせいか、こんな無体な行為をされても、あまりキツく反論できないんだ。


 「「安田先生、道成寺先生、おはようございまーす!」」


 双葉さんの言葉どおり、学園に近づいたせいか、顔見知りの生徒たちが挨拶してくる。


 「おはよう、雨月さん、日高さん」

 「おはよー、もしかして朝練? そろそろ寒くなってきたから、汗かいたら冷やしちゃダメよ」


 養護教諭らしい細かい気遣いを見せる双葉さん。


 (はぁ~、この気配りを僕にも向けて欲しいなぁ)


 言ってもムダなのは、わかってるけどさぁ。


 「こらこら、きよひー、朝っぱらから溜息つかない。さ、今日も一日頑張っていきましょ!」


 人の気も知らないで、明るく笑う双葉さんを、ちょっと恨めしく思っちゃう僕なのだった。


 ***


 僕が“私”──道成寺清姫として世間に認識される(ついでに身体も女性化してる)ようになってから、半月あまりが過ぎた。


 「それで、私を元に戻す方法の研究に進展はあったの?」


 放課後、オカルト研究会の部室で、若葉ちゃんに解決策を尋ねてみる。


 「いやぁ、それがサッパリ。というか、今、文化祭前だから、あたしたちもソッチの準備で忙しくてさぁ」

 「そ、そう……」


 個人的な希望を言うなら「学園祭準備そんなモン、ほっといて早く元に戻せ!」なんだけど、まがりなりにもこの学園の教師のひとりとして、ソチラを疎かにしろとは言えない。


 「ん~、それにさぁ、無理して戻る必要あるの?」

 「! ど、どういう意味よ?」

 「だって、清姉きよねぇ、今の女の立場にすっかり馴染んでるじゃん。言葉遣いや仕草も随分女っぽくなったし」


 意外な言葉を言われてドキリとする。


 「そ、それは、社会人としてもこの学園の教師としても、生徒のみんなに無様なトコロは見せられないから」


 そう、それだけなのだ。

 ──断じて、

「男の時は冴えないモブだったけど、女としては自分、結構イケてるんじゃない?」

 とか

「お化粧とかお洒落して綺麗になるのってたーのしー! 甘いモノもおいし~!」

 とか思ってるワケじゃ……ごめん、ちょっと思ってた。


 「で、でも、私──ううん、“僕”は本来は男なんだよ。それをこんな風に歪めるのは絶対不自然だし、良くないことだって」

 「(女であることが嫌だとは一言も言わないんだ)あー、そうだねぇ。とは言え、あたしも無理を押して研究するほどのモチベーションは湧かないし……あ!」


 言葉を切った若葉ちゃんは、姉である双葉さんソックリの(悪役確定の)ニヤリ笑いを浮かべる。


 「ひとつ、あたしのお願いを聞いてくれたら、帰宅してから家でも研究を進めてあげてもいいよ」


 元はと言えばキミが原因なのに、なんでそんなに上から目線なの──と思わないでもないけど、ここで相手の機嫌を損ねても仕方ない。


 「そのお願いって? 言っておくけど、私、お金はあんまりないよ」


 社会人になって1年目の新米教師、しかも女になったことで服とか化粧品代もかかるようになったから、毎月かなりキツキツなのだ。


 「だーいじょーぶ! 必要なモノはあたしの方で揃えておくから。簡単な労働奉仕してくれるだけでイイよ♪」


 すんごく嫌な予感がする。断りたい。でも……。


 「あくまで、私にできる範囲の事だけだからね!」


 ……

 …………

 ………………


 あの時、若葉ちゃんは「簡単な労働奉仕」って言った。

 そして、その言葉に嘘はなく、日曜日の今日、若葉ちゃんの(そして双葉さんのでもある)安田家に来て、朝・昼・晩のおさんどんするだけだった。

 男の頃から料理は得意だし、外面がいい反面、家では割とズボラな安田姉妹のために、たまに手料理を作ってあげてたから、それほど突飛なお願いってワケでもない。

 ──そう、それ“だけ”ならば。


 「夕飯は裸エプロンして作ってくれって……どこのエロゲーよ!?」


 油断してた。まさか、最後の最後でそんなオプションを要求されるとは。


 「いやぁ、漫画とかネタとしては見るけど、まさかこの目で生“裸エプロン”を見れるとはねー」


 まさにエロ親父そのものなイヤラしい視線で私を背後から視姦する若葉ちゃん。


 「若葉グッジョブ! あ、きよひー、お尻をもうちょっとフリフリして♪」


 双葉さんは興奮し過ぎて鼻血出してるし……。


 (あ~、もぅ、こんなコトまでさせて、元に戻れないとなったら、タダじゃおかないんだからね!!)


 ***


 「ごめん、清兄きよにぃ、やっぱ無理っぽい」


 いつも自信たっぷりで能天気とさえ言える安田若葉に、心底申し訳なさそうな表情でそう言われて、道成寺清姫は目の前が真っ暗になった。


 9月末のあの召喚事故から数ヵ月が過ぎた今日は2月1日。

 3年生の若葉はあとひと月足らずでこの浪漫学園を卒業する。

 大学は推薦で決まっているし、オカ研会長としての役目も後輩に譲っているので、心置きなく清姫を“清彦”に戻すための研究に没頭していたのだが……まさかそんな結論になるとは、清姫は夢にも思っていなかった。


 「ちょっ……い、いったい、それ、どういうコト!?」

 「話せば長くなるんだけど……」


 若葉いわく、そもそも今の清姫の状態はイレギュラー中のイレギュラーらしい。

 普通は、霊を召喚して憑依させても、顔つきや雰囲気がちょっと変わるくらいで、容姿がまるっきり憑依者そのものになるなんてことは、まずない。

 とは言え、容姿の変化自体は過去にも少数ながら報告されているので、まったく例がないわけじゃないのだが……。


 「今の清姉の姿って、ちょっとまつさんに似てるし、完全に女体化してるけど、あくまでベースは清兄でしょ。そんな中途半端な状態に落ち着くこと自体、普通は考えられないんだもん」


 憑依による変化の影響が憑依した霊を送還したまで続くなんてのは、前代未聞なのだとか。


 「一応ね、男に戻る“だけ”なら方法はないでもないんだけど……」


 「元に戻す」のではなく、「男の英霊を召喚・憑依させて、身体を男にする」、PCで言う“アンドゥ”ではなく“上書き”なら、理論的には可能ではある。

 ただし、まつより霊格が高くないと身体変化は起こらないだろうし、そんな格の高い霊を呼べるのか、呼んだとしても制御できるのかという問題があるのだそうな。


 「下手すると、清姉の身体を召喚した霊に乗っ取られたままになっちゃうし」


 それにその方法では、性別は男に戻っても、完全に清彦本来の姿に戻るのではなく、召喚した霊に似た容姿になってしまうという欠点もある。


 「まつさんの場合、幸い20代始めの姿で顕現してくれたけどさぁ」


 次に召喚した男の霊が40代や下手すると老人の姿だったら目も当てられないよ、と若葉は首を横に振る。

 清姫としても、23歳の身で、いきなり中年男性やお爺さんの身体になってしまうのは勘弁してほしかった。


 「あたしの術者としての力がレベルアップして、目当ての英霊を完全にコントロールできるようになったなら話は別だけど……」

 「けど?」

 「それ、たぶん数年、下手したら10年単位で時間がかかると思う。少なくとも、あとひと月でどうこうするのは、まず不可能」


 4月からこの街を離れ、関西の某有名私立大学に進学することが決まっている若葉から残酷な事実を突き付けられ、清姫は呆然とするしかなかった。


 ***


 「ひィやッ! だ、ダメだよ、歳くん、そんなトコ……あひぃン!」


 ピンク色の「マッサージ機」で、下半身を刺激され続けて、私は堪えきれずにあられもない声をあげてしまう。


 「ほらほら、どーしたの、清ねぇ……ううん、道成寺センセ。マッサージタイムは、まだあと3分も残ってるよー?」


 けれど、彼はそんな私の懇願にも耳を貸さず、それどころかさらなる快楽を与えようと、自らの舌で私の一番敏感な部位をペロリと舐め上げる。


 「んぁっ、ひゃうン!!」


 未体験の快感に、思わずビクンと身体を跳ねさせながら、私は「どうしてこんなことになったんだろう……」と頭の片隅でここに至る過程をボンヤリ思い出していた。


 ……

 …………

 ………………


 安田若葉から衝撃の事実──自らが男に戻ることは(少なくとも短期的には)不可能だと聞かされた道成寺清姫は、その翌日から水木金の3日間、体調不良を理由に勤め先である学園を休んだ。

 幸いにして3学期末の試験まではまだしばらく間があり、また土日も挟んで翌週からは、元通り職場に復帰し、キチンと国語教諭としての職務に励んでいる。

 ──いるのだが、時折物憂げに溜息ついたり、休み時間などにボーッとした目で外を見ていたりするのは、本人の心境を慮れば致し方ないことだろう。


 (別に、女の清姫として生きることが、物凄く苦痛ってわけじゃないんだ)


 合計5日間自宅に籠り、色々考え抜いた挙句、“彼女”はある程度、自分の気持ちに整理はつけていた。


 (最初は確かに違和感バリバリだったけど、この半年あまりで20代前半の女性としての生活に随分慣れたって自覚はある。

 何か困ったことがあっても、双葉さんや若葉ちゃんに相談すれば、だいたい何とかなったし……)


 ただ、それでも──と帰宅してアパートの階段を昇りながら呟く清姫。


 「男として──“清彦”として23年近く生きて来た人生の大半が、なかったことにされるのは、やっぱりイヤだなぁ」


 あるいは、ジェンダー(性差)というよりアイデンティティ(自己同一性)の問題なのかもしれない。


 ところが……。


 「! 「男として」って、どういうことだよ、清ねぇ!」


 タイミング悪くその呟きを、部屋の前で待っていた少年──真砂歳明(まさご・としあき)に聞かれてしまったのが、清姫の運の尽き(?)だった。


 歳明は、安田双葉・若葉と同様、清彦の幼馴染と言えるご近所さんで、若葉の1学年下にあたり、やはり浪漫学園高等部に通っている。

 彼&彼女ら4人は、かなり年が離れていた(双葉>清彦>若葉>歳明で、清彦と若葉が5歳違い)が、幼馴染の姉貴分・兄貴分と妹分・弟分として、それなりに仲が良かった。


 中学生の頃に清彦の家が隣りの県に引っ越したことで、しばらく疎遠になっていたのだが、昨年春に清彦が浪漫学園に赴任し近くのアパートに住むようになったため、再び3人とも交流が生まれていたのだ。


 しかし──昨年秋に清彦が清姫、つまり女になったことで、結果的に歳明は4人組の中でハブにされたような形になってしまう。

 一応、顔を合わせれば挨拶と軽い世間話くらいはしたものの、同性ならともかく“異性”の6歳違いの幼馴染(しかも片方が学生、もう片方が社会人)と会話するというのは、結構ハードルが高い。


 世間的な認識が塗り替えられたとは言え、清彦に懐いていた歳明としては、「急に清姫がよそよそしくなった」と感じられたのかもしれない。

 それに加えて、最近の清姫のアンニュイな姿にやきもきして、事情を訊こうと部屋の前で待っていたところで、先ほどの呟きを聞いてしまったのだ。


 「信じられないかもしれないけど……」


 誤魔化すことは不可能ではなかったかもしれないが、清姫としてもこの秘密を誰かに話してしまいたかったのかもしれない。

 部屋に招き入れ、一連の事情を説明し、さらに男同士でなければ知り得ないだろうこと(好みの女のタイプとかお宝本の隠し場所とか)を告げることで、何とか歳明にも信じてもらうことはできたのだが……。


 「──清ねぇ、水臭い。どーして、俺に相談してくれなかったんだよ!?」


 なぜか歳明から怒られるハメになる。


 「いや、そんなこと言われても……」


 元男が女になったなんて奇怪な事情は極力隠しておきたいだろうし、仮に歳明が知ったからと言って、何か役に立てるわけでもない。

 そんなことは歳明自身もわかっていた。つまりこれは、八つ当たりだ。

 それでも、自分にも教えて相談して欲しかった。


 (……だって、俺は清ねぇ──清姫さんのことが好きだから)


 “姉”ではなく(もちろん兄でもなく)、ひとりの女性として。

 今まで極力考えないようにしていた、その感情を自覚した瞬間、歳明は覚悟を決めた──何がなんでも、清姫を自分の恋人(おんな)にすることを。


 そこからの一連の流れは芸術的とも言えた。

 巧みに清姫の罪悪感を煽り(彼女も歳明を放置気味だったことに後ろめたさを感じていたのだ)「お詫びにひとつだけ言うことを聞く」と約束させる。

 その上で、何食わぬ顔で、清姫がお茶を淹れ替えに台所に行った隙をついてベッドの下から見つけておいたピンク色の“マッサージ機”を取り出し、「お疲れの清姉に、これでマッサージしてあげるよ♪」と告げたのだ。


 本来なら、清姫側としては即拒否すべき行動だろうが、そんなモノ(オトナの玩●)を見つけられたということに対する羞恥心で巧く頭が回らず、先刻の口約束を楯にとられたこともあり、つい条件付きで承諾してしまう。


 その条件とは、「スるのは5分間のみ」、「絶対に歳明から“本番”を強行しない」というもので、裏を返せば、ある程度Hなことをされるのは、すでに清姫も諦めていたのだ。


 (歳くんも、そういうのに興味津々なお年頃だもんね。仕方ないか)


 本人的には、罪滅ぼしに保健体育の教材代わりになって、ウブな弟分の性的好奇心を満たしてあげよう──くらいの意識だったのかもしれないが、生憎、歳明の側は、それで済ませるつもりはない。


 さらに、清姫の誤算は、自分の過去に照らし合わせて、てっきり歳明がまだ童貞だと思い込んでいたことだろう(清彦が童貞を捨てたのは大学に入ってからだった)。


 伊達男ジゴロと言うほどではないが、中学時代にひとり、高校に入ってからもふたり彼女がいた(そしてヤることもヤっていた)歳明は、女扱いに関して相応のテクニックを持っている。

 その彼の手にかかれば、女性としてはまるでネンネな清姫なんて、赤子の手を捻るようなものだったのだ。


 ………………

 …………

 ……


 結局、私の忍耐力は、歳くんの手慣れた“攻め”の前では、わずか5分もモたなかった。


 「あ、あっ、あ、ああぁぁぁぁーーーーーーーーーッッッッ!!!」


 女として初めてとも言える(拙い自慰なんてメじゃない)ほどの悦楽による絶叫をあげながら、私は意識を手放したのだった。


 ***


 さて、半ば詐欺めいた手法で年下の少年・真砂歳明と“関係”を結ばされた道成寺清姫だったが……。

 彼との初体験がよほど強烈だったのか、その後はすっかり女でいること(そしてより女らしくなること)に違和感も躊躇も感じなくなり、それまで以上に女子力(プラス色気)に磨きをかけている。


 歳明との関係も「歳くんが高校卒業するまでは、正式に恋人になるのはナシね」と押しとどめ、一応「幼馴染以上恋人未満」という形に落ち着いている。

 ──もっとも、「あくまで幼馴染の姉貴分と弟分だから」という名目で、いろんな場所に一緒に出かけたり(デート?)、人目がないトコロでは“親愛のハグ”や“頬っぺにチュウ”などもしている。


 さらに週末の清姫の部屋限定で「溜まっていると欲求不満で勉強に集中できないだろうから」という理由こうじつで、“お口”や“胸”で歳明の煩悩を発散させているのだ。


 「うーん(これって、実質セフレというか恋人そのものなんじゃ……)」

 「ん? どうしたの、歳くん」


 立て続けに3回シた後、ベッドに並んで横たわった清姫にニコッと笑いかけられて、歳明もデレッと表情が崩れる。


 「い、いや、なんでもないよ、清ねぇ(よそう、俺の勝手な推測で、こんな美味しい状況をフイにしたくない)」


 別の町にいる若葉は当然このことを知らず、双葉は何となくふたりの様子に気付いているようだったが、幼馴染のよしみか黙ってくれているようだ。


 「俺、がんばって、清ねぇを養えるような立派な男になるから」

 「ふふっ、焦らなくてもいいよ。私は、ちゃんと待ってるから。でも……ありがと♪」


<おしまい?>

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