第21話 母親とエンカウント

【4月X日】


「親父、母さんが帰ってくるって本当か?」


私はモンハンのコラボ配信があった夜、私は親父と二人で大格闘バーストブラザースを遊び半分でプレイしながら親父にそう聞いた。


「あぁ、帰ってくる。まぁ、フランスからじゃなくて東京からだけどな。」

「え、東京から?」


確か母さんはフランスまで出張していたはずだが。


「まぁそうだけど、あとこれからはこの近くで働くらしいぞ、もう働く無くてもいいのにな俺がたくさん稼いでるからな。」


確かに親父の年収は物凄い額だった気がする。


「けど、だいぶブラックだけどな。」

「まぁ、確かにな。」

「はぁ、俺もなろうかなvtuberに。」


そう、親父が言ったことに耳を疑った。

どうも、vtuberになろうかなと聞こえたような気がした。


「親父、今なんて言った?」

「vtuberになろうかなと言った、けどやめたぜ今の仕事の方が炎上とかがないから安全でいい。」

「働き方は?」

「働き方改革のことを生徒に伝えてる俺たちが悲しくなる。」

「相変わらずのようで。」

「ああ、そうだよ。」


そんなやり取りをしながら気が付いたら親父が勝っていたどうやらゲームの腕もまだ落ちていないようだ。

そして、私は時間が気になり時計を見る、時刻は午後二時…え、午後二時。


「親父、急がないと嫁さんにしばかれるぞ。」

「ヤバい、瑠奈さんにしばかれたら俺生きていけねーぞ。」


親父は見た目は20代後半なのだ年齢は45歳なはずなのに、そういえば、母さんって何の仕事やっているって言っていたけな。

そんなことを考えながら私は大急ぎで車のカギを取り親父を乗せてモンハンやら少し昔のアニソンを流しながら車を走らせる、いつか配信で歌う日が来るのだろうか。とか思いながら。


いや、私が音痴なのは友達からのお墨付きだからね。歌いたくないよ。


玖瑠美ね、何処かで、いや流石にね。


「そういえば、母さんの仕事ってなんだたっけ?」

「何だったかな、前やってた仕事をかたずけて出張から帰ってきて会社辞めたらしいぞ、なにか嫌な予感がするとか言って。」


確か、母さんの予感はたまにシャレにならないことがあるからな、例えば何があったかな。


「待って、母さんの予感ってシャレにならないんじゃ。」

「あぁ、そういえばそうだったな。」


そう言って親父は遠くを見る、おそらく母さんの予感で当たったことを思い出しているのだろう。

そういえば、とんでもないこと思い出した。


「親父、確か親父の通帳は今は私が握っているよね?」

「そ、そうだな。」

「じゃあ、母さんに握らせても問題ないよね?」

「そうだなってお前、もしかして。」

「じゃあ、そうしておきますね。」


ふう、これで良しっと。ほんとこの人自分で通帳握ると直ぐに寿司を買いまくるんだから。

一人で食べるわけじゃないけど。

まぁ、それで母さんも親父と同じようなことをし始めたら本格的に私が通帳を管理するとしよう。


そうこうしている間に最寄りの地下鉄の駅に着いた。


「親父は折角だし改札まで行きなよ、私はここで待ってるからさ。」

「分かった、行ってくる。」


そう言い親父は車から出ていき入口の方に走っていった。


すると、その親父が入っていた入口とは別の出口から金髪の美人さんが出てきた、遠目で見るとどこか麗華と同じようなパーツだ、尤も麗華は黒髪だけど、ん待って母さんじゃねえかよ。

行かないと。


私は車からおりて鍵をかけて大急ぎで母さんのところに走った。


「母さん!!」

「あら、久遠じゃない。久しぶりね。」

「ええ、母さんこそ、お変わりないようで。」


そしてそれから母さんの様子が一気に変わった。


「そういえば、あの人は?」

「あぁ、親父なら母さんを迎えに改札にってそうじゃん。どうしよう。」

「おいて行けばいいんじゃない、別にあの人帰ってこれるだろうし。」

「いや、無理ですよ。親父急いで出てきたせいで財布を持ってないんですから。私は財布の中に免許書入っているんで持ってますけどね。」

「ッチ、じゃあ、無理なのか。」

「残念ながら。」


母さんはツンデレだからツン?の方が強いようだ、

いや違うか、単に親父のことが嫌いだった、か、そういえば、東京に引っ越してからすぐに喧嘩して会社の出張でフランスまで行ってたんだよね、それで私たちが名古屋に戻ってきたと知ったと同時に出張の期間が終わって日本に帰ってきて会社を辞めてきたのだろう。


「あ、いたいたー。はぁはぁ。」


どうやら、親父が一周して戻ってきたようだ。


「あら、あなた遅かったじゃない。じゃあ、私たちは行くから。一応交通費で千円貸すからあとで返してね。」

「は、はい。」

「ほら行くよ。」


そう言って母さんは俺を引っ張ていった。


大丈夫かな、親父。

まぁ、いいか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る