弟子との日々
@kunimitu0801
第1話「日常」
複数のカメラのシャッターの音
「はい」低い声
複数のカメラのシャッターの音
「いえ、記録とかは意識してはいませんでした」低い声
複数のカメラのシャッターの音
「ええ、まだタイトルの事は考えていません。まずは一つ一つ目の前の対局に集中するだけです」低い声
複数のカメラのシャッターの音
「はい。頑張ります。ありがとうございました」低い声
*
「師匠。またまた記録更新です。三十二連勝ですよ」
「えっ。いつもながら記者達の前と態度が違うって。当然じゃないですか」
「本当は対局終わった後の取材なんかやりたくないんですよ」
「でも師匠が取材にはちゃんと答えなさいって言うからちゃんと答えるようにしたんじゃないですか」
「ちゃんと言いつけは守りました。なので褒めてください」
「いつもいつも同じことの繰り返しになりますけど私は頭撫でられるのが好きなタイプですからね。しっかり撫でてください」
「毎回毎回確認するなって。だって毎回私の頭撫でようとする時に躊躇するじゃないですか。私は思春期なんてとっくに終わっています。今まで通り撫でてください。子供扱いだって全然いいんですよ」
「でも師匠。最近昔みたいに私の事を抱きしめてくれなくなりましたね」
「それはいつも私が褒めてくださいって抱きついているだけです」
「私が言いたいのは昔みたいに師匠から抱きしめて欲しいんです」
「こうやってソファに横に座ってもすぐ立ち上がろうとしちゃうじゃないですか」
「そうですよ。だから師匠の手を掴んでいるんです。私から逃げられないように」
「昔は私が何かした時に今と違って躊躇わずに抱きしめて褒めてくれたじゃないですか」
「私だってこれでも我慢を重ねてきていたんですよ」
「じゃあ見せてあげます」ギュッと抱きつく音
「疲れたよー」
「ししょー。もっともっと褒めてください」
「師匠のために頑張ったんですよ」
「そうです。そうやって私の事しっかりとよしよししてください」
「えっ。もう高校生だからこんな事やめなさいって。どうしてですか」
「私はまだまだ子供だからいいんです」
「わかりました。そこまで言うならあきらめます。」
「師匠としてじゃなくて従兄妹に甘えますね。お兄ちゃん」
「えっ。どっちですか。私はどっちでもいいんですよ」
「弟子として師匠に甘えるのも。従妹として従兄に甘えるのでもどっちでもいいです」
「逆に師匠兼お兄ちゃんは」
「どっちの私がいいですか。どっちの私が、より可愛がってくれる存在なんですか?」
「より貴方に可愛がってもらえるようになりたいんです。答えてください」
「答えてくれるまではずっと離しませんからね」
師匠 25歳。
弟子 16歳。
二人のとある日常の一コマ
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