第20話

「あ、これはいけますね」


ここから、僕を呼んでいるはずだ。ここに、カズがいるんだろ?  

 

「はい。ここで間違いありません」


じゃあ、早くここを開けてくれ。


「その前に。貴方は、心の準備はいいのですか?」


どういう意味だ?


「カズ君とは、これで今生の別れとなる。

 その覚悟があり、ここに来ることを望んだ。間違いありませんか?」


さっき話した通りだ。


「わかりました。ただし、ここでカズ君とコンタクトを取れるのは、ほんの僅かな間だけです。注意して下さいね」


わかってる。


「では、いきますよ」












「わあああ!!なんだよこれ!?海!?なんで海が浮いてんだよ!?」


「うむ、来たか」


「カズ!!」


「え、ユッキー!?なんで、っていうか大丈夫なのかよ!?海の中にいて、溺れちまうぞ!?」


「カズ、いいから聞いて。僕、カズと出会えて、本当に楽しかった。

 小学校の時、まだお互い喋ったこともなかったのに、教室で倒れた僕に声をかけてくれた。

 誰も友達がいなかった僕にとって、凄く支えになってくれた。

 何にも興味が無かった僕に、色んなことを教えてくれた。

 カズ、今までありがとう。もう二度と会えなくても、僕はずっと忘れない。

 カズ、たとえ僕のことを忘れたとしても、そこできっと、ずっと幸せに暮らしてね。

 僕は君に出会えて、本当によかった。

 さようなら、カズ」


「え?いや、ちょっと待てって!!なんだよそれ!?俺、ここで暮らすつもりなんてねーって!!」


「え。でも、この波のようなやつは、カズはここで暮らすことを望んでるって」


「あっ、いや、確かにそう考えてたときもあったけど、今はちげーって!!

 俺、もう帰るからさー!!お前は家で待っとけー!!」


「・・・これ、どういうこと?」


「あ、これですか?私からのサプライズです。なかなか良かったでしょう?」


「お前、騙したのか。僕の心を弄んでいたのか」


「いえ、言葉の綾、というやつです。それに、カズ君の気が変わったのは、つい先程です。ここを開ける前には、私は分かっていましたけどね」


「何でそれを教えなかった」


「だって、聞かれませんでしたから」

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