第105話 商会の有力者達
海神リブレー復活からはや六日。
俺達は次の計画のためにと会議室に集められた。
「みんな、よく集まってくれた。そこでだが次の計画について話そうと思う」
ただ、この場にいるのは俺達ダンジョンブレイク工業の面々だけではない。
「海神リブレーの復活は成った。しかし事情もあり、即座に協力を願えない状況にある。そこでだが、我々はその間に別の神を復活させようと考えている」
集まったのはリミュネール商会を支えてきた有力者達だ。
反抗計画の基盤ができた事で、彼らもやっと重い腰を上げてくれたらしい。
当然ながらエリクスやクリンもいる。
「まぁもうみんな察してはいると思うのだが……次に復活させる神は砂漠の精霊のモチーフとなった者、〝鍛冶神ダンタネルヴ〟!」
『えー奴を復活させんのー? いいじゃん封じとこうよー』
「この地に近いというのもあるが、かの神の力は海神リブレーの〝誘いの加護〟と同等な価値があり、もはや必須と言えよう」
『んもぉ~そこまで言うなら仕方ないなぁ~~~』
ただ、集まったみんなは揃って顔をしかめている訳だが。
声が聞こえないディマーユさんに対するリブレーの一人コントに。
つかなんでお前は勝手に独り相撲してんだ。
『キィィィーーーーーーッ!』
ええいやかましいッ!
ちっとは黙ってやがれってんだ!
『うるさいうるさーい! あちしにもおしゃべりさせるのよさーっ!』
「――という訳で目指すはエルモニアン砂漠中腹にある地下空洞。その先にあるとされるモーリアンの里での情報収集が当面の目標となるだろう」
ほらぁ、肝心なトコ聞きそびれちまったじゃねーか!
お前の声、頭を抱えちゃう人が出るくらいデカいんだから!
「頭を抱えたくなるくらいに急激な進歩なのはわかるが、どうか我の言う事を信じて従って欲しい。頼む」
「わかっておりますよディマーユ様。あなたの御心に賛同したからこそ我等はここにいるのですから」
「そう言ってくれてありがとう、オプライエン」
「ただその、思ったよりその神が節操ないなーと」
「むむ、ウーティリス達はじっと立っているだけだと思うが?」
「あ、いえ、もういいです」
「えーなにそれディマーユショックゥ~」
ほらぁオプライエンさんも諦めちゃったじゃないの!
あの長い顎ひげに引き締まった老体、あれきっと偉い人だってぇ……。
「しかしディマーユ殿、いきなり『彼女達が神だ』などと言われてもどうにも信じがたいのも事実であろう?」
「ああ。だからそれはこれから証明しよう。なのでフーラ、焦らないで聞いて欲しい」
まぁわかる、わかるよフーラさん。
その鋭い眼らしく焦る気持ちもわかるけど、人の話は最後まで聞かなきゃ。
あ、聞こえないんでしたね。すいませんウチのリブレーが邪魔しちゃって。
「しかし我らの計画が進む一方で、ギルドの動きも大きく活発化しているという話を聞く。そこでだが、皆には各地で反抗作戦を起こして頂きたいのだ」
「おおっ!?」「ついにか!?」「この時がきた……!」
ただ彼らには理屈はいらなかったようだな。
反抗作戦って言葉を聞いた途端に盛り上がりやがった。
みんなよほどギルドに煮え湯を飲まされ続けてきたんだろうか。
「して、その反抗作戦とかいかように?」
「なぁに話は簡単だ。皆には個々にダンジョンを攻略してもらう」
「「「ッ!?」」」
それにしたって唐突だなオイ。
たしかにエリクスみたいな実力があるなら攻略は簡単だろうけど。
全員がそうとも限らないだろうし、エリクスでも宝を漁るまでは無理がある。
それにその役目は俺、ダンジョンブレイカーの仕事だろう?
「フフッ、まるで自分の仕事を奪うのか、とでも言いたげだなラングよ?」
「まぁね。それしか能がないもんで」
「だが安心しろ。お前が本領は神の封印を解く事だ。そこは誰にも譲れん。しかしダンジョン攻略に限ってなら話は別だろう?」
「あっ!?」
――そうか、そういう事か!
「察した通りだ。ダンジョンブレイカーはなにも一人である必要は無いのだ」
ああ、その通りだ。
ダンジョンブレイカーという名前はあくまで「通名」でしかない。
しかもあのアーヴェストのように、その名をただ名乗るだけで誰でも役割を演じる事ができるんだ。
そしてその誰しもが各地で暴れれば、本物である俺の存在がぼやける。
さすがだな師匠。
まさかそこまで考えていたなんて。
「だからこそ皆にはそれぞれがダンジョンブレイカーを名乗った上で攻略してもらう事となるだろう。そのためのバックアップは今まで通り心配しなくていい。すでにそのための変装用装備も用意してある」
「だがしかし、我々の力だけでもギルドを出し抜けるかどうか……」
「ふふ、その点は心配するな。お前達はすぐにでもそれ相応の力を得られるのだから。なぁウーティリスにニルナナカよ?」
そんな時ふと、ディマーユさんの視線が二人に向けられる。
するとウーティリスは呆れながらも小さく頷いて見せていて。
「まったく仕方ないのぉ。スキルを授けてやるとするか」
「え~~~嫌れすぅ~~~」
「まったくお前は! 空気読まんかい!」
そうか、スキルを授ければ今よりもかなりの戦力アップを見込める。
しかも今ここにいる誰しもがA級勇者並みの実力派ばかりときた。
それならばダンジョンブレイカーの真似事なんて朝飯前だろうぜ!
ただ、それなら今までチェルトやラクシュに授けなかったのが疑問だけどな。
『すまんのう、忘れておったわ!』
忘れてただけかーい!?
『ま、厳密に言えばそれだけ神としての力が回復してきたという事なのら。さすがに封印解除直後だとそなたくらいが限度だったのでのう。しかし今ではリブレーを振り回せるくらいには回復しておるから行けるぞ!』
『ギャーーーッ! 本当に振り回すのはやめるのよさーっ!』
そうか、ならこれでチェルトもラクシュもパワーアップが見込めるな!
どんな能力が付くか楽しみだぜ!
「わぁ! やったぁ、ついに私もスキル持ちねっ!」
「た、ただすまぬ、ラクシュに関してはちと人でない部分が多過ぎて……」
「なら仕方ありませんね。諦めます」
まぁラクシュは仕方ないよな。
神依人でもなければ改造人間だし。
となるとエリクスもスキルは受け取れないか。
「卿の事は気にしなくていいよ。これでも自分の実力だけでダンジョンを押しきれる自信があるからね。どちらにせよ宝回収の方は協力者に頼む事になるし」
「基本はラングと違い、半ばギルドの勇者どもとやる事は同じだ。しかし正攻法であればあるほど奴らも手を出しにくかろう。自分達の敷いたルールのせいでな」
なるほどな、人によっちゃスキルがなくても問題はないのか。
あくまでダンジョンブレイカーという名で勇者の真似事をするだけ。
しかもギルドを介さないから奴らには金が流れない。
いい感じじゃねぇか!
「そういう訳で二人とも頼む」
「任せよ!」
――と、そんな訳で有力者達へのスキル授与がとうとう始まった。
その対象数、総勢二七人。
いきなりこの数を、とも思ったがその心配は無用だったらしい。
二人で分担するからそこまで負担はなかったみたいだ。
おかげで所要時間は三〇分弱。
たったそれだけでチェルトを含めた全員への付与が完了したのだった。
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