第99話 護衛勇者達の本領発揮!

 超級ダンジョンってのは結構ながら恐ろしい場所だった。

 もしかしたらニルナナカがいなけりゃどうしようもなかったかもしれん。


 なにせこの中腹に至るまで、俺達が通る道には常に大量の魔物の死骸が転がっていたんだからな。


 しかも所々あの地下封印ダンジョンの中腹で戦った数にも匹敵する。

 それがずっと続いているんだから相当溜め込んでいたんだろう。

 消し炭にならないくらい強くなってはいるようだが、ニルナナカを前にはちっとも関係ないらしい。


「むむむ! それっぽい違和感を感じたのら! やっぱりこのダンジョンにリブレーがいるのは間違いなさそうなのら!」

「おおっ!?」


 それに今度はウーティリスもが喜びの声を上げる。

 さすがだぜ、やる事をしっかりやり遂げやがった!


「ただ道が少し逸れておる。ニルナナカの援護は期待できぬと思え!」

「それじゃあここからが私達の出番ね! 行くわよ、二人とも!」

「わかりました!」「了解ですねーっ!」


 しかしここからはチェルト達が本気を出す番だ。

 ここまでに雑魚を何匹も倒してコツは掴んでいるみたいだから大丈夫だろう。


 ――その予想は正しかった。


 チェルト達は間違いなく成長し、適応していたのだ。

 中腹の魔物だろうと普通に戦い、確実に倒せている。

 おそらくだが、格上と戦う事で技術が段違いに向上しているのである。


 特にチェルトの成長は著しい。

 これほどの相手は地下封印ダンジョンでの戦いでも相手にしていたからな。

 たとえ薄暗くても敵の位置を把握し、跳ね、確実に急所を斬って突いて倒している。


 もしかしたら彼女のような柔軟な人間がX級になれるのかもしれないな。

 より貪欲に経験を重ね、技術を向上させる事に余念のない彼女なら。

 そこらでいばり散らすだけの勇者じゃ至れない境地だろうよ。


「そこを右に進むのら!」

「ならオラが左の道を塞ぐんですねーっ!」

「無茶はすんなよクリンッ!」

「百も承知なんですねーっ!」


 おかげで移動速度が格段に早まっていく。

 分かれ道でもこうやってクリンやラクシュが援護に回り、危険を排してくれる。


 だからチェルトも安心して正面突破できるんだな。

 前にいる敵だけを相手にしていれば問題ないから。


「ラング! ちょっと敵の数が多くなってきた! お願いっ!」

「おうよ、任せやがれっ!」


 けれどそれでもすべてをしのぐには無理はあるだろう。


 ゆえに今度は俺が走りながらマトックを腰まで回し、命波を練る。

 そして滑りながら渾身の一撃を周囲へと見舞うのだ。


 そうすれば一瞬にして、周囲から敵意が消え失せた。


「おおっ、海水魚まで獲れちまったぜ! 後でみんなに振舞ってやるよぉ!」

「それは嬉しいねーっ! ラングの料理、期待してる!」

「ま、海魚の調理は経験少ないからな、あんまり大きい期待はすんなよ!」


 周囲を薙ぎってやったから、クリンやラクシュも手が空いた事だろう。

 案の定、背後から二人だけが走って戻って来た。ナイスアシストだ!


「一瞬で敵が消えるって普通に考えてヤバいですねーっ! ラングさんの能力はほんと常軌を逸してるですねーっ!」

「本当はまるごとがつっとやりたいんだがな、思ったより精神力を喰うんだこいつは」


 惜しむらくは俺の経験がまだ薄い事か。

 土を掘るだけなら気楽だから余裕なんだが、「仲間と岩壁以外を掘る」となると意外に集中力を求められちまう。

 そう連発してもいられないのが辛い所だぜ。


 こりゃ戻ったら師匠に鍛錬願うしかないな!


「ラング、もう一発お願いできる!?」

「おう! だが少し集中させてもらうぜ!」


 しかし今はそうも言ってられねぇ。

 だからと再び集中し、一掃。


 ニルナナカからだいぶ離れたのか、敵の数が増えてきたようだ。

 背後はまだ平気そうだが、正面からの敵の流れが尋常じゃなくなってきた。


 それでも切り抜け、とうとう大部屋へと突入する。

 すると途端に見えた光景に、俺達は思わず息を飲む事となった。


「あ、あれは!?」

「転送陣ですねーっ!?」

「それにしたって大き過ぎない!?」


 なるほど、魔物が多い訳だ。

 あれが噂に聞く、魔物を呼ぶ転送陣か……!


 そんなものが大部屋の奥の岩壁面で、ドでかく妖しく光ってやがったぁ!!!


 しかも今なお魔物を生み出し続けている!

 俺達が倒した分を補填するかのようにボトボトとよぉ!


「ラング!? あれは掘れない!?」

「ならぬ! 反応はあの先であるがゆえに!」

「ちぃ! 面倒な所に埋まってやがんな、誘いの神様はよぉ!」


 そういう事かよ。

 封印された事で魔物を誘う転送陣になっちまったって訳か。

 こりゃ誰だって迂闊には手を出せねぇ。


 だったらどうする!?

 あの転送陣を破壊する事なんて俺達にできるか!?

 豪邸並みにデカいあの紫の紋章を、誰が!?


「なればわたくしめがやりましょう」


 しかしその時名乗りを上げたのは、丁寧にお辞儀をするラクシュだった。


 どうやらコイツには自信があるようだ。

 あのバカでかい転送陣を破壊する秘策が。


 なら見せてもらうとしようか、お前の底力がどれくらいのものかを……!

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