底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました! ~残念ながら本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでどうかお引き取りを!~
第52話 そんな、僕が降格だと!?(ギトス視点)
第52話 そんな、僕が降格だと!?(ギトス視点)
「ギトス=デルヴォ、あなたは本日よりB級への降格となります。異論は認められません。受理の血判を押しなさい」
「くっ……!」
なんて事だ、恐れていた事態がついに起きてしまったっ!
まさかこの僕がA級から降格させられてしまうなんて……!
この街に来てから一ヵ月、死に物狂いでずっと戦ってきたのになんてザマだ!
「よろしい。あなたからはこれより〝閃滅候〟の称号をはく奪されます。以後、この銘を名乗る事は許されません。もし取り戻したければ再度A級へ上がる事ですね」
「わ、わかった。努力する」
B級からならともかく、A級からの降格は例を見ても少ない。
このランクに上がれるのは実力も資金源も確立している者がほとんどだからだ。
それなのにあろう事か僕は降格させられてしまったっ!!!!!
ちくしょう! 屈辱だッ!
なぜこうなった!? どうして僕の実力は落ちた!? なんでえっ!!?
こんな所でウダウダしている暇などないのに!
早く力を付け、見せつけ、師匠の耳に僕の名声を届かせないといけないのに!
じゃないとあの人が僕を見つけられないだろうがあ!!!!!
「くくく、ざまぁねぇぜ。たった三年目ごときの新人風情が」
「実力がねぇ癖にA級を名乗るなんざおこがましい」
くっそおおお! 有象無象どもが好き勝手いいやがって!
貴様らはA級に上がる事さえ叶わないクズ共だろうにぃ!
「それとギトス=デルヴォ、あなたにはワイスレットのギルドより召還命令が下っています。事情説明があるため、すぐに帰還し出頭なさい」
「……わかり、ました……ッ!」
ああちくしょう、受付嬢ごときもギルド員だからと偉そうに言いやがって!
この僕達勇者がいないとどうしようもない役立たずの分際でえ!
……だが今は従うしかない!
また栄光を取り戻した時、こいつらを再び媚びさせればいいんだからなぁ!
だから僕は鋭く踵を返し、速足で出口へと向かった。
このクソ空気の悪い場からさっさと出なければ吐き散らしてしまいそうだ!
「ギトスさん、気を落とさねぇでくだせぇ。あなたならきっとまた舞い戻れまさぁ」
「当然だっ! 僕を誰だと思っている!」
くっ、またへりくだりやがってザウコの奴め!
僕が同じB級になったからって随分な余裕じゃないか!
そうやって僕の傍でまだ甘い汁を吸おうってんだからお笑い草だ!
「オラはわかっとりますぜ、あなたの強さは本物だ。以前に助けてもらった時に見たから間違いねぇ。それにあなたのおかげでオラもB級に上がれたんでさぁ。だから――」
「もう黙れよザウコ! 僕が惨めになるだけだってわからないのかっ!?」
「す、すいやせん……」
クソッ、クソッ、クソオッ!
こんな奴にまでバカにされて、どいつもこいつも笑いやがる!
こうなったらワイスレットに戻った時にまたラングを痛めつけて腹の虫を抑えなければ!
……いやダメだ、そんな事をすれば降格したのがバレてしまう!
降格の腹いせなんてバレたらむしろいいお笑い草じゃあないか!
これはしばらくなりを潜め、A級に戻るまで力を蓄えておくとしよう。
戻った時こそ奴をいたぶるにふさわしいタイミングなはずだ。
そうさ、そうやって力を示さなければならない。
それが師匠の教えてくれた僕の役目なのだ。
弱者を守るのは僕達勇者の役目。
だからこそ弱者――勇者以外の職は僕達を敬い、平伏し、すべてを捧げねばならない。
そうしてすべてを従わせる事こそ守るという事に外ならないのだ。
だったら僕はその教えに従い、弱者どもを守る代わりに讃えられなければならないんだ。
それこそが師匠と再び出会う条件なのだから!
師匠はそう教えてくださったんですよね!
「ギトスさん、ワイスレット行きの馬車をとりました。こっちです」
「うむ、ごくろう」
だから今は敢えて事実を受け入れよう。
そしてすぐに再び返り咲くのだ。
そのために泥にまみれる事など怖くはない!
ゆえに僕はザウコの用意した馬車に堂々と乗り込んだ。
相応の金を払った者にしか乗れない高速大型車両さ。
金持ちも乗る事があるから高級感に溢れて実に有意義だ。
これを選ぶなんてザウコの奴め、なかなかわかっているじゃないか。
さて出発まで時間が少しあるな。
なら首都アラルガンの景色を眺めつつ怒りを収めよう。
そして恨みをたぎらせ、どう復讐してやるか考えてやるんだ。ククク……!
「これかーっ! これに乗って良いのかーっ!?」
「あらぁ~~~大きい~~~れすぅ~~~」
なんだ騒がしい。ここは下民の乗る物ではないぞ。
まったく何様だと思っているんだクズどもめ――
「おいおい、騒がしくするなよ? お金持ちの乗り物なんだから」
「そうですよー慎まやかに乗りましょうねー」
――なあッ!? んなバカなあッ!?
あれはラング!? どうして奴がこの馬車に乗り込んでくる!?
しかもあの小うるさい姪までいやがるし!
それとあれはチェルトだと!? なんで奴がまだラングと一緒なんだ!?
そ、そしてなんだあのボンキュッボンは!? 色々で、でけぇぇぇ!!!!!
「あ」「あっ」
そしてあろう事かラングと目が合っちまった。
くそぉぉぉ! 最悪だ、僕の存在がバレたァァァ!!!
「あ、その……申し訳ありません、今黙らせますんで」
「そうだぜぇラング! ギトスさんがいるんだからな! それにここは高級高速便だ! てめぇみてぇなハーベスターが乗り合わせていいもんじゃ――」
「あの、私が手配したんですが?」
「ああ~……でもチェルトさんよぉ、先輩のギトスさんがいる前で調子に乗るのはよくねぇよなぁ?」
「A級二人を抱えた由緒正しきシーリシス家によるギルドを介しての手配ですが何か?」
「あ、う……」
や、やめろザウコ、それ以上煽るな!
下手に絡んだら面倒な事になるだろうが!
「ザウコ、よせ。ここは高級高速便なのだろう? だったら静かにしろ。僕に恥をかかせるつもりか?」
「す、すいやせん……」
クソッ、前言撤回だ、使えない奴め!
まさか奴らが乗り込んでくるのを知って選んだんじゃなかろうな!
ああチクショウッ、僕がランクを下げた事を知られないようにしなければ……!
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