第53話 宝部屋
3パーティーによるダンジョン攻略。
レナーテ達は当たり前のように宝部屋を通り過ぎようとする。
普通の冒険者達にとって宝部屋は攻略不可能、単なる通路とみなされている。
だが先程マティルデはレナーテからダンジョン産の武器を所持していると聞き、このまま宝部屋で宝物をゲットすると思っていたので驚いていた。
「ちょっと待って!ダンジョン産の武器があるのに素通りするの?」
すると全員止まり、何やら騒がしくなった。
「そうだったわ!うっかりしていたけれど、今手にしているのはダンジョン産の武器・・・・どうする?」
【百花繚乱】のメンバーは慌てだす。
改めて思うと、今手にしている武器を手に入れてまだ日が浅く、地上へ戻ってからダンジョンへ向かうのが実際これが初めてだった事もあり、全員失念していたのだ。
『どうするって言われても・・・・あの数じゃ倒せる気がしないわね。』
『せめて魔法が使えれば・・・・』
『あら?この武器って実際どういう能力なのか誰か知っている?』
何やら大丈夫ではない声が聞こえるがどういう事?と思ったマティルデだった。
【蛍雪之功】のメンバーに至っては、未だ中層が攻略中心なので宝部屋を攻略、と言う発想そのものが無かった。
『無理っしょ?』『いくら武器があってもねえ。』
あちらのメンバーはまだレベルが低いから厳しいのかしら?
そんな事を思いつつ、
「ねえ、一つ聞いていい?その武器ダンジョン産って言っていたわよね?手に入れてからダンジョンで一度も使った事ないのかしら。」
代表して百花繚乱のリーダー・トリュスが発言する。
「マティルデ殿、私達はつい先日ダンジョンから戻ったばかりで、まだ手にしている武器を使った事がないのです。武器を手に入れたのもダンジョン脱出直前の事で、実の所どのような性能なのかもわかっていないのです。単に切れ味の優れた武器なのか、魔法を扱えるのか・・・・それすらまだ把握していません。本来であれば鑑定をしておく必要があったのですが、私達の中に鑑定持ちがいないのです。丁度冒険者ギルドへ鑑定をしてもらおうとしていた矢先だったのです。」
「まあ!そうだったのね。それは申し訳ない事をしたわね・・・・どうする?このメンバーだったらダンジョン産の武器が無くても1部屋ぐらい何とかなりそうだけれど?」
「まてマティルデ、いくらなんでも彼女達が危険すぎる。慣れない武器をいきなり宝部屋で?君達、悪い事は言わん、一度出直した方がいい、せめて鑑定してもらってから挑むべきだ。」
シーウェルトが全員を諫める。
だがレナーテは、
「問題ありません。既に私達にはこの武器以外ないのですから、鑑定せずとも大体の性能は分かります。後は実際に使ってみて慣れる以外に選択肢はないのです。出直す?たまたまここはダンジョン上層ですが、下層でこのような状況になった場合、出直す事すら困難ですから・・・・皆、用意はいいわね?」
はー、とため息をつきつつ、シーウェルトはその意見を尊重し、
「わかった、宝部屋は駄目だと思えば外へ出られるうえに、魔物は部屋の外までは追ってこない。」
結局この後話し合いがもたれ、一度宝部屋をチャレンジする、と言う方向で話はまとまった。
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