第32話 ペースアップ

 あれから1週間、俺はペースを大幅に上げダンジョンを進んでいた。


 安全地帯に温泉を設置し、コンテナを出して休むのは最早習慣となってしまったが、温泉は桜が絶対作れと凄い剣幕だったので、頑張った。

「こうして従っているんだからそれぐらい当然ヴァッ!」

 そんな事を言いつつ温泉を利用中の桜はとてもではないが人様には見せられない。


 まあ俺もリラックスできるから温泉は好きだが、実際大して疲れていない。

 

 懸念していた魔力だが、今の所何ともなさそうだ。

 腹に溜まった魔力はもう尽きているはずなんだが、一体何処から調達しているのか 不思議だ・・・・俺の身体はどうなっているのだろう。


 そして遂にと言うべきか、ダンジョンの終着点がすぐ近くとなったようだ。

《マスター、次の層でダンジョンは終わりとなるようです。》

 俺の頼れる相棒、ガイナンスの椿だ。

「ちょっと!相棒は私でしょ?」

「勿論桜も相棒さ。椿は精神的に、桜は何て言ったらいいのかわからんが実質的?

 ?物理的と言うべきかな。」

「それ褒めてんの?」

 俺は桜を褒めたのだろうか。


 その後も魔物が出現する前から椿の言う通りに魔法をぶっ放し、桜の指摘で見つけにくい魔物も発見し、安定した攻略をしていた。

 これを安定と言っていいのかわからんが。


 で、早さっそく最後の層へ降り立ったが、成程椿の言う通り最後のようだ。

【最下層】


 とだけ書いてある文字盤があり、文字盤の下は扉となっていた。


 これ、開けると中の魔物を仕留めるかこちらが全滅するまでって奴じゃね?

 まあ開けて入るんだけどさ。


《多数の魔物を確認できます。如何なさいますか?》

「そりゃあ椿、いつものように入って直ぐに魔法をぶっ放すさ。」

 今までこれでやってきた。

 今更剣を用いての戦いはできそうにない。

 剣術なんて全く知らないからな。


 で、俺は桜を後方に下がらせ、扉を開けてみた。

 扉の向こうはだだっ広い部屋のようだ。

 だが部屋の広さは魔物に阻まれ分からない。

 まあいいさ、いつものように魔法をぶっ放せばいい。

 そうすれば魔物を仕留められ、奥まで見渡せられるようになるだろう。

 因みにどんな魔物がいるのかはここからでは分かりにくい。

 何せぱっと見でも数種類の魔物が視認できたからだ。

「よし、多数の部屋みたく、先ずはこの場所から魔法を数発放つぞ!」


 それはずるい、と思うかもしれないが、何せ部屋の中には既に魔物がひしめいているのだ。

 万が一ドラゴンがいたりして、部屋に入って直ぐにブレスを放たれたらたまったもんじゃない。

 なので先手を。


 俺はファイヤー、ウィンド、ウォーターをそれぞれ放ってみた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る